空に刻んだパラレログラム「夏季2軍トーナメント第3戦」の感想・レビュー

個人の能力を存在意義の拠り所としてきたイモウトが打ち砕かれて自我崩壊する話。
コミュニケーションを疎かにし自己中心的となっていた少女の苛立ちを見よ。
独善的で独りよがり自分一人で全てを解決しようとしたしっぺ返しを食らうが・・・
エースというのはチームメイトに自分を活かしてもらうことなんだ!と覚醒する。
イモウト;玻璃のとてつもなくうざい心情描写が大変素晴らしく描けている。

「夏季2軍トーナメント第3戦」 VS下剋上チーム

如何にして宝生玻璃は精神崩壊となりしか

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  • 有佐里亜のドクターストップと藍住ほたるの選手昇格
    • 第2戦において奮戦した里亜は、ついにドクターストップがかかり、試合に出られなくなってしまいます。そんなわけでほたる先輩が選手に昇格するのですが、それは第2戦で描いてきた主題、すなわちチームのカラーを根本的に覆してしまう事でした。故に連係プレイが上手くいくわけもなくチームはバラバラ状態に。ほたる先輩が里亜に代わりパサーになったのですが、里亜のパスが足元に的確に出すものだとしたら、ほたる先輩のパスは空いたスペースに選手を走らせるもの。柚はいつもの負けん気と積極性により必死で食らいつきパスを受けられるようになるのですが、今まで独善的なプレイをしてきた玻璃は失敗ばかり。エースとしての自負があった玻璃は、自分だけできないことに苛立ちが隠せません。さらに焦燥感にも苛まれ、今まで素人だった柚が急成長し今では自分の背後をひたひたと追ってくる事実を見て自滅していきます。本来なら玻璃はきちんとほたる先輩と話し合い連携をはかるべきだったのでしょう。ほたる先輩もチーム練習後の個人練習に玻璃を誘っています。しかし玻璃は素直に提案に乗ることができず、独りよがりとなり、パスをとれないのは自分のせいだから、自分がとれるように練習すべきであるという勝手な結論を下してしまうのです。本作では非常に玻璃のウザさが際立っており、精神崩壊する内面が非常によく描けています。ウザイモウト玻璃の様子をお楽しみください。



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  • 自己の能力の高さを示すことで周囲の批判を封殺して孤高を保ち、自己の存在意義としてきたが、逆にそれは自信が打ち砕かれれば簡単に精神崩壊してしまうということであった。
    • 夏季2軍トーナメント第3戦。相手チームのテーマは下剋上。2軍チームが1軍チームを撃破することを目標に掲げる坂空さんチームです。故に2軍最強といっても過言ではありません。ここで玻璃は徹底的にマークされ、まむしディフェンスの餌食となってしまうのです。格下だと思っていたマーク相手をどうやっても抜けないことに苛立つ玻璃。試合自体は、新たに加わったほたる先輩が、選手時代の主人公くんの特技であったステルス戦法をコピーしチーム全体の力を底上げ、互角に戦っていきます。
    • 一人でいじける玻璃を救ったのは、チームメイトからのほっぺたびろーん攻撃。これにより自己の殻を破った玻璃は、自分の要求をチームメイトに伝えられるようになります。従来は、パスをとれない自分が悪い/パスを出す相手が自分を理解してくれないといじけていました。しかし今度は、私にはこういうパスが欲しい!私を活かすためにこう動いてくれ!とチームの力を借りることを覚えたのでした。そしてまた玻璃は無意識のうちに柚のことを素人と見下し自分がチームを勝たせてやるんだと傲慢になっていましたが、それも克服していきます。柚とは一緒に競うんだ!とライバル宣言をするのです。玻璃の覚醒で一体となったチームは見事勝利を収めます。こうして夏季2軍トーナメントを制し、優勝したのでした!

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