冥契のルペルカリア 第七幕「灰色の客席」の感想・レビュー

リトバスよろしく思念体世界モノ(作中では虚構世界)。
現実世界では公演の最中に発生した火事で旧劇団ランビリスの団員たちは死ぬこととなる。
だが火事のなか生き残った匂宮めぐりは一人取り残されてしまうのである。
虚構世界の劇団ランビリスはめぐりを救うため来々・悠苑・ハナが構築したものだった。
めぐりを1人前にするには並び立つライバルが必要でありその役を担ったのが琥珀
来々は琥珀に孤独と傲慢の情念を教える為、真相を語っていたのであった。

演劇で落伍したが、それでも演劇をせずにはいられない者たちの場所

f:id:r20115:20210227173749j:plain

  • 零れ落ちて行った者たちの受け皿
    • 第七幕では虚構世界のネタバレが行われます。結論をあらかじめ述べれば現実世界における未練が生み出した思念体世界だったのです。現実世界において劇団ランビリスはめぐりを主演としたハムレットの公演中に火災にあっており、王海・来々・悠苑・ハナは死亡していたのです。生き残っためぐりは火の中で祖父の死体を前にして呆然としてしまいます。それには理由があり、本物の才能を持つめぐりはこのまま落伍者の集団である劇団ランビリスにいさせてはマズイと判断されたためハムレット公演を最後に劇団のクビを言い渡されており、その時にブチ切れためぐりは祖父に死ねと言っていたのです。死ねと言った直後に死んだわけでめぐりは言霊に囚われてしまうのですね。そんなめぐりを強化するために、来々・悠苑・ハナは思念体世界で活動していたというワケ。劇団ランビリスはすべてめぐりのためにあったのでした。
    • めぐりを強化するためにはライバルが必要であり、その役には琥珀が抜擢されました。しかし琥珀は孤独と傲慢を理解していなかったので、来々は自分の経歴を語っていくことになります。来々は高校の部活で演劇に目覚め、王海やめぐりとも知り合い、楽しい青春時代を過ごします。しかしその後は悲惨なもので、来々はその性格から劇団に馴染めず転々とします。悠苑もまた社会的成功のためには身体を売ることも仕方がないという方向に傾きかけていました。演劇は集団でやるものであり芸術系の人間が集まればハミダシ者がでるのも必定。それでも演劇をせずにはいられないどうしようもない人たち。そんな落伍者たちを集めて結成されたゴミの掃きだめ的スクラップ工場が劇団ランビリスだったのでした。しかし来々はここに安寧を見出します。気心の知れた仲間たちと楽しく演劇をやる。それこそが来々の原点だったのです。ハムレット公演の直前にこのことに気付いた来々が人生への生き甲斐を見出したその瞬間。火事で死んだのでした。
    • 主人公は琥珀からこの経緯を教わることになり、めぐりに現実を突きつける役割を担います。めぐりに送るのはサンテグジュペリのキツネの話と薔薇の話。みんなもう死んでいるんだと現実を突きつけるか否かで√分岐します。

f:id:r20115:20210227173722j:plain

f:id:r20115:20210227173728j:plain

f:id:r20115:20210227173733j:plain

f:id:r20115:20210227173738j:plain

f:id:r20115:20210227173743j:plain

冥契のルペルカリア感想まとめ