『さくら、もゆ。 -as the Night's, Reincarnation-』「夜月姫織ルート」の感想・レビュー

流産した娘を救うために自らの命を捧げた母親に、今度は娘が命を返そうとするはなし。
前半部分は姫織とほぼ関係なく、千和√の伏線であった十夜と遠矢の伏線回収。
中盤は姫織が母親へ命を返すために、母親が行った儀式の再現を行う。
終局部分で、ナナちゃんの内部にある母親の残滓が姫織と交流してハッピーエンド。
儀式の追体験による視点チェンジにより母親の事情を姫織のものだと錯覚する所がポイント。

十夜シナリオ

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  • 千和√で第三のパパとなった遠矢の母親のはなし
    • 冬月十夜は夜の世界の住人の猫又族。人間の幸せを祈らずにはいられない猫又族は、寂しさを抱える少年少女癒す役となっていました。しかしその存在は幼少期にしか見えず、大人になるとその記憶も忘れ去っていきます。それ故十夜は仲良くなった人間の友達にきちんとお別れをできないことを残念に思っていたのです。
    • そんな少女のうちの一人だったのが、遠矢の母親でした。幼少期に十夜が助けた女の子は努力して教員になるも、社会人になってからも色々と問題を抱えるばかりでした。教員大変だもんね。十夜は一人ぼっちの女の子の助けとなるべく孤独を癒そうとするのですが、もはや大人となっているため最終的に記憶から消えてしまう自分ではダメだと思います。そのため、女の子に孤独を癒し合う男の子との出会いを設けてあげたのでした。二人は孤独を分かち合い、結ばれ、子どもを作り、遠矢と名付けます。しかしここからが大変でした。子供を作ったものの早々と旦那は死亡。遠矢を芸能の道に進めさせれば支援してやると言う旦那の実家の提案を蹴り、女手一つで息子を育て上げます。しかし寿退職して教員を辞めていた遠矢の母親は現場に復帰できず、低賃金肉体労働に従事することとなったのでした。それを見た遠矢は母親にこれ以上苦労を掛けたくないと芸能の道に進むことを決意。旦那の実家に入り、生活も安定したのでした。この遠矢こそが、千和√で第三の父親になる存在なのですね。こうして伏線が回収されました。
    • 姫織√との関係でいえば、この遠矢の母親が死亡した後、輪廻転生のため夜の世界を通るのですが、その時十夜が再会を願ったので、これに協力するために姫織の魔法が使われるという流れになっています。

姫織シナリオ

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  • 母親と娘の命を代償とした蘇生に関するはなし
    • 十夜との一件により再び夜の世界を訪問できるようになった姫織は、かつて叶えられなかった願い事を再チャレンジします。それは母親を蘇生することでした。
    • 姫織の母の美月は幽閉され、愛を知らないまま育ちました。その一方で美月の妹は両親に愛されて育ったのです。ある時、美月の見張り役の老婆は情が移ったためか、美月と妹の入れ替えを提案します。こうして美月はまんまと幽閉状態から抜け出し、安穏とした生活を手に入れたのです。しかし、それはイモウトを犠牲にしたものであり罪悪感が付きまといます。さらには、子どもを残すために若くして嫁入りするのですが、流産してしまったのでしたもう一人子どもを作る気になれなかった美月は旦那の命と引き換えに娘を蘇生することを決意。本編で姫織と主人公くんが行う「材料集め」は美月と旦那が通った道の追体験だったのですね。けれども蘇生直前で美月は旦那の命を捧げることを後悔し自分の命を使って姫織を蘇生したのでした。美月の命はナナちゃんに吸収され、その集合体の一つになります。
    • 美月により蘇生された姫織ですが、蘇生時に時間が無かったため欠陥を抱えた状態として生まれてきます。方向音痴だったり大食い腹ペコキャラだったりするのはそのためでした。故に、姫織は自分が何もない空っぽな生きていても仕方がない存在だと思い込み、空虚に時を過ごしていたのです。そんなわけで、姫織は今度はその命を母親に返そうとしたのですね。命が完全に譲渡されてしまうタイムリミットは夜明けまで!主人公くんは姫織の命を繋ぎとめるため、大奮闘。最後はナナちゃんの内部に残った美月の残滓と姫織が交流して、姫織は自ら生きる事を決意。ナナちゃんの後押しもあり、主人公くんと姫織は手と手を取り合いハッピーエンドを迎えたのでした。

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