個人用 内容のメモ
第1章 谷本雅之「複層的経済発展の論理-生産組織の選択の視点から-」(1-32頁)
1 はじめに
- 製造業部門に視点 近代日本の経済発展=複層的経済発展
- 17世紀~18世紀初め
- 明治日本 欧米の工場制工業の移植
- 小規模な作業場
- 「中小経営」の存在感
- 日本の工業化 「在来産業」と「近代産業」の均衡的な成長
- いかなる生産技術と製品市場および生産要素市場の結びつきが、多様な経営体の持続的な展開を根拠づけていたのか
2 綿工業の二態:紡績業と織物業
(1)機械制紡績業の定着
- VSイギリス 手紡糸の生産の衰退
- 綿糸は打撃を受けたが、綿織物はそうではない
- 輸入代替としての日本産綿布
- 2000錘紡の失敗
- 大阪紡績会社
- 資本コスト 安価な労働力をどのように生かしきるか 昼夜二交代制
(3)労働供給と生産組織の選択
- 近代日本の労働供給構造
- 家族労働の動員可能性
- 労働力動員
- 女性による世帯内での多就業
- 賃織>工女
- 外部市場への女性家族排出
- 大規模工場 就労する若い女性は農家の妻・嫁へと回帰する
- 紡績業と綿織物業の生産組織の相違点
- 農家の労働力配分戦略
3 都市小経営の展開-男性労働と製造業-
(1)東京市の場合
- 小工業の労働力構成
- 雇用労働は男性かつ徒弟
- 加齢と従業上の地位向上
- 練習期間
- 技能習得と徒弟
- 小工業の経営成果は大工場の雇用労働の賃金よりも高い
- 小工業の期待収益
(2)戦間期都市型中小企業の発展-玩具工業の事例-
- 玩具生産の強い国際競争力
- 玩具工業は小経営を基盤とする産業の典型事例
- 苦汗労働編成ではない
- 潜在的競争者
- 集積の利益と都市環境
- 集積の不利益 模造品の流通
(3)輸出向け都市工業の歴史的位置
- 貿易依存 原材料輸入
- 綿工業の発展は経常収支の赤字幅を拡大する主たる要因
- 日本の輸出工業品としての雑貨
- 雑貨工業品の内容について 時期による三パターン
- 雑貨工業品 第三の類型の特徴
- 製品の輸出元
- 雑貨製品は欧米市場向け
- 欧米市場への最終財、工業品輸出の最も直接的な先駆け
- 戦後日本の輸出貿易を支える製品群の戦前における先駆け
- 中小工場の意義
- 1980年代が製造業の構造変化の切れ目
4 おわりに
- 多用な生産組織の展開
- 中小経営組織が入超を緩和
- 在来的経済発展+近代的経済成長=風葬的経済発展
第2章 高槻泰郎「日本経済の歴史と金融」(33-63頁)
1 はじめに
2 近世期金融市場の量的拡大
- 金を借りたのは大名
- 年貢米と財政構造
- 大名の支出
- 外部からの資金供給に依存
- 金を借りる二つの方法
- 商人の進展
- 為替
- 豪商
- 長者番付
- 会計帳簿と財産比較
- 鴻善・加久の純資産蓄積
- 大名金融への経営シフト
- 大名金融への特化により成長
- 鴻善の研究
- 成長鈍化後も高額の収益
- 大名金融が儲からなかったわけではない
- 必ず儲かったわけでもない
- なぜ儲かった商屋は儲かったのか
3 近世期金融市場を支えた取引制度
- お金を回収する制度的仕組み
- 債権債務関係
- 借金踏み倒しの事例
- 借金を回収した手法
- 長期的な関係
- 秋藩の事例
- 長期信頼
- 商人と組めた大名の条件
- 大名金融市場の実態
- 大名が利払いと元金制度を続けられた理由
4 大名経済の成長と金融市場
5 おわりに
- 従来の金融史観
- 何のための金融か
- 経済成長のための金融は明治からではない
- 「むた言草」
- 草間伊助の藩財政に対する助言
- 借金の三分類
- 投資のための借金
- 拡大再生産の奨励
- 経済と共に成長していくというビジョン
- 借金をしては投資をし続ける
第3章 坂根嘉弘「日本伝統社会からみた近代日本の経済発展」
1 本報告の視点
- 家制度・村社会と経済発展
- 従来の研究では、「家」や「村」は批判対象
- 分析手法の問題点
- 農民層分解論
- 分割相続地帯
- 栗原の中農標準化論の批判
- 家と村が経済発展にどのような意味を持つか
- 途上期の日本経済
- 経済発展を促す仕組み
- 農業生産力の発展
2 「家」制度による農業発展
(1)「家」制度による増産誘因と取引の安定性
- 小農経営強靭
- 長子単独相続
- 「家」永続の希求
- 土地愛撫と勤労道徳
- 単独相続による経営体としての連続性
- 長期投資
- 取引の安定性
(2)「家」制度に基づく経営の柔軟性
- 血のつながりにこだわらない他人養子
3 信頼関係と地主制
(1)日本の「村」社会(信頼と協調)
- 長期にわたる固定的構成員の間には、生産・生活をめぐる様々な関係が累積され(「村」社会の慣行や規範の形成)、高い信頼関係が醸成されていった。
- 地主と小作の関係
- 地主制における家・村による信頼と協調
(2)日本地主制の成立
- 地主が小作地を安心して貸し出せるかどうか
- 家制度・村社会→行動制約・規律づけ
- 民国期中国の地主・小作関係は信頼関係が薄い
- 信頼関係の弱さ→取引コストの高騰
- 日本は小作料ビジネスはなし
- 寄生地主制は明治から
(3)小作慣行と民法
(4)小作立法と小作慣行
- 小作立法の再評価
- 小作農はその生活に充分満足していたか!?
- 3度に渡る小作立法
- 小作法草案と小作慣行の関連
- 小作法荘さんの重要事項
- 第三者対抗力
- 小作地の譲渡と転嫁
- 先買権
- 小作料の滞納
- 小作料の減免
- 小作法草案の小作慣行を追認する面と後退する面
- 現実の小作料分配には踏み込まず
(5)農地調整法と小作慣行
- 農地調整法
- 第三者対抗力はことさら称揚すべきことではない
- 農地委員会制度も小作慣行の追認に過ぎない
- 小作立法・農地立法事業の本当の意味
第4章 堀和生「東アジアからみた日本の経済発展」
1 はじめに
- 従来の比較史研究は欧米との比較
- 朝鮮・台湾・南米との比較
2 経済史研究の進展とマクロ的な知見
3 東アジアにおける近代農業
4 戦前期日本・台湾・朝鮮における工業発展
- 戦間期東アジアの工業化
- 中小零細経営
- 日本だけでなく朝鮮・台湾も
- 産業別業種
- 朝鮮において生産規模を拡大する自営業
- 植民地でも特定の地域には工場や職工が集積
- 台湾・朝鮮の工場は極端な両極構造
- 大規模工場の集積度
- 非農林自営業の拡大・中小零細工業の蓄積
5 戦後経済発展類型への拡大
- 戦後の工業発展
- 小経営
- 食料供給と労働力の再生産を担ってきた小農が、戦後行動経済成長期のある時点から絶対的な減少に転じる
- 自営業の比率の高さ
- 小経営の強靭な存在→東アジア小農社会が工業化する過程の特徴
- 零細中小経営が勃興する条件
- 東アジアの就業構造
- 巨大な自営業数を抱えながら工業発展と経済成長が進むトレンド
- 人口稠密な小経営社会において近代的経済発展が進むときに辿るもう一つの類型
- 近代東アジアにおける各時代の社会経済条件に規定されて生まれた類型
- 国内自給と外貨
- 国内市場拡張
- 労働力供給
- 巨大な農村社会の安定的な維持
- 産業連関
- 膨大な自営業
- 東アジアの特徴は近代的大経営と小経営・零細経営とが同時に並存し相互に結びついて発展したこと
6 おわりに
- 人口稠密で発達した小農・小経営が工業によって発展する過程で生まれた特徴であり、膨大な農民と非自営農業、零細中小工業と近代経営が並存する形での経済発展
- 1990年代における第2次産業従業者拡大
- 拡大東アジアの経済発展
- 欧米とは異なるいまひとつの普遍的な発展類型
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