演習(近代植民地史) 質疑応答及び指摘された論点

副査の教授(近代植民地史)の演習での質疑応答まとめ。

報告したのはこれ↓
h30shimotsuki14.hatenablog.com

【質問事項】

  • Q.先行研究の問題点を指摘し、自分の研究の新規性と独自性を示せ
    • →A.満洲国建国後の満洲旅行について、旅行記・紀行文の内容そのものの分析を行う研究は高媛(2005)があるが、扱っている史料は未公開の早大生の旅行記のみである。旅行記・紀行文の内容から、旅行者・観光客の目線を通し、都市・移民村の在満日本人社会及び都市内における日・満・露人の関係を描き出す。

  • Q.満洲国観光の収益は最終的にどうなったのか?日本の戦争に利用されたのではないか?
    • →A.収益は満鉄やJTB、各都市の観光協会、旅行関連業種に入ったものだと思われる。

  • Q.満洲国の観光政策として観光委員会及び観光連盟が出来た前と後で維持された点と変わった点を説明せよ。
    • →A.維持された点は観光ルートと斡旋機関。観光委員会・観光連盟が出来たからといって、満鉄やJTBが無くなったわけではない。相変わらず満鉄を使った鉄道網により観光ルートが成り立っていた。満洲国建国後に京図線と北鮮三港により日本海航路が整備されたが、それも観光委員会が整備したわけではない。既存の観光システムに乗っかっていた。一方で変わった点は、満洲国全体で一貫した観光政策を展開できるようになったこと。それまでは各都市の観光協会がそれぞれ旅客誘致や対応を行って個別バラバラであった。だが観光委員会と観光連盟により、例えば観光週間の実施など、満洲全体でトップダウン式な観光政策を行えるようになった。

【指摘事項】

  • 正当化という言葉について 
    • 満洲観光に関し、戦時下という状況と物見遊山という批判に対して観光の意義を示すため、『満洲観光連盟報』では様々な理論や効果を提唱する。これを指して私は「満洲観光の正当化」と表現したのだが、「正当化」はホントウはやっていないものをやったように見せかけるというニュアンスに捉えられるというご指摘を頂いた。

  • 娯楽と国策について論ずる必要あり
    • この当時、枢軸国において行われていたクラフト・ドルヒ・フロイデやドーボラーロを説明する必要あり。またナチスやイタリアの余暇改善運動は日本でも行われていたはず。日本の厚生運動と旅行の関係を考慮する必要がある。

  • 観光による国土認識の効果等を論ずる必要あり
    • 観光の効果として観光資源を創出し国土宣揚することで、一つの国の中で行ったことも無い所が、自分たちのもの我々のものとして認識できるようになる。

    • 国を統治主体とするのはヘン。
    • 満洲国を扱うと最終的に報告者が満洲国をどのように捉えているかという価値判断のところまで論じる必要あり
    • 満洲国という言葉をどう表現するかがカギ。複雑さを整理しすぎない。スッキリ整理してしまうと違和感のあるものとなる。複雑に絡み合っている。
    • 日本の場合との比較 満洲国の独自性 日本の観光政策と比べて満洲国の観光政策は同じ様なものだったのか違ったのか