雑録

倫理 日本思想【5】近世思想の展開(町人の思想・農民の思想・国学・日本の伝統文化)

1.町人の思想

(1)町人文化の隆盛

  • 西川如見…「ただこの町人こそ楽しけれ」→経済力ある町人らが独自の思想・文化を展開

(2)庶民の教え

  • 石田梅岩石門心学…平易な講和で利益追求を肯定
    • 商業活動の肯定…「承認の買利は士の禄に同じ」(『都鄙問答』) →商いによる利益追求は天理にかなう正当な行為。
    • 町人の社会的責任…正直(利己心からの離脱)・倹約(世間の富を大切にする)・勤勉(家業にはげむ)。
    • 町人の覚醒…商業活動は人々が互いに活かしあい「先も立ち、我も立つ」社会の実現に寄与
  • ②手島堵庵…明倫舎を起こし、心学を本心究明の学として発展。
  • ③鈴木正三『万民徳用』…「世法即仏法」(世法は仏法と同じ)。全ての職業が仏法の下に平等であるとして、町人の営利活動をも肯定。

2.農民の思想

  • 江戸時代の農民…生活がきわめて苦しい+貨幣経済の発達→窮乏する農民の増加→農民思想

(1)忘れられた思想家【安藤昌益】『自然真営堂』

  • 自然世…すべての人間が耕して衣食住を自給する「万人直耕」の平等社会
    • 武士を「不耕貪食の徒」であると非難
    • 儒教・仏教・神道などが法世(「差別と搾取に満ちた社会」)に堕落させたとして自然世への復帰を主張。

(2)農民の自立のために【二宮尊徳

  • 農業=天道(天地万物の営み)+人道(推譲+分度)
    • 推譲…倹約+他人へ譲ること
    • 分度…経済力に応じた生活設計
    • 報徳思想…天地や他者によって与えられた恩に報いる思想

3.国学

(1)国学の成立

  • ★外来思想をとりいれる以前の日本の古代社会を理想とし、その時代の精神を日本固有の道として体系づける。
  • ①契沖 …国学の祖。『万葉代匠記』;『万葉集』の研究←神道のみにて天下を治めた古代日本の遺風
  • 荷田春満…契沖の万葉学と伊藤仁斎古義学を学ぶ。日本の古代精神の解明の試み。
  • 賀茂真淵…契沖の弟子。『万葉集』を重視
    • ますらをぶり(男性的でおおらかな気風)。古代日本人の理想像
    • 高く直き心(古代日本人の素朴で雄渾な精神)
    • 『国意考』→儒教道徳による統治の無効性を説く。「高き心」重視。

(2)本居宣長復古神道

  • 本居宣長…『古事記伝』、『源氏物語玉の小櫛』
    • 古事記の研究
      • 惟神…日本神話の神々のふるまいに発する習俗に私心を捨ててしたがうこと。
        • 儒教や仏教は人工物。惟神の道は神が創始し天皇が継続。
        • 漢意(儒教や仏教などの道理によって道を理解しようとする考え方)を捨て、「真心」(理屈ではないありのままの真実の心)。
    • 源氏物語』の研究
      • もののあはれ…事物に触れたときの「しみじみとした」感情の動き。
  • 復古神道儒教の中国崇拝や仏教の浄土思想を排斥し、古来の神道の考えによって宇宙のあらゆる現象を説明しようとする神道思想。
    • 平田篤胤復古神道の大成者。現存の社会道徳は産霊の神によってできたものであり、神々の子孫である天皇への服従こそ、神の道であるとした。人々に民族意識を植え付け、明治維新の思想的原動力の一つとなった。
    • 尊王攘夷論…もともとは古代中国春秋時代周王朝を助けて(尊王)、異民族の侵入を討つ(攘夷)という考え。日本では天皇崇拝思想(尊王)と外国人排斥思想(攘夷)が結合した思想。攘夷が不可能なことを悟ると、尊王討幕論へと変化した。

4.日本の伝統文化

  • 太平の世+外国文化の制限+家元制度の確立+出版・教育による民衆への普及→「伝統」の創出

(1)伝統的美意識

  • ①あはれ…事物にふれたときのしみじみとした感情。
  • ②幽玄…静かな美しさの背景に神秘的な奥深さを感じさせる情緒をあらわす。
    • 世阿弥が大成した「能楽」(神の祭りや死霊の鎮魂儀礼から発展)の理念
    • 藤原俊成「夕されば 野辺の秋風 身にしみて うづら鳴くなり 深草の里」
  • ③わび…物質的な不足を心の自足によっておぎない、満たす精神
    • 千利休の茶道
    • 藤原定家「見わたせば 花も紅葉もなかりけり 浦のとまやの 秋の夕暮」
  • ④さび…寂しさのなかに無の境地を見出し、そこに安らぐ心境

(2)町人たちが新たに生み出した理念

  • ①いき(粋)…軽やかで洗練された美意識
  • ②つう(通)…世事・人情に通じたさばけたふるまい