地誌【5】西アジア地誌

  • 中東とは?
    • 19世紀帝国主義時代、西欧列強を基準にしてアジアを近東・中東・極東に分けて呼称する。

【目次】

1.西アジアの自然環境

1-1.地形

  • 新期造山帯
    • トルコからイランにかけての地域。アルプス=ヒマラヤ造山帯に属す
  • 外来河川
    • ティグリス川とユーフラテス川(※湿潤地域を水源とし、乾燥地域を貫流して海洋に注ぎ込む。)

1-2.気候

  • BS(ステップ気候)とBW(砂漠気候)
    • 大部分が年間を通して中緯度高圧帯(亜熱帯高圧帯)の影響を受けるため
  • Cs(地中海性気候)
    • トルコなどの地中海沿岸
    • ※【よく出る】地中海性気候の発生要因
      • 乾燥帯の高緯度側にある緯度30度~40度。夏に中緯度高圧帯の影響を受け乾燥するが、冬は高緯度低圧帯の影響を受けて湿潤となる。

2.西アジアの農業~西アジアの農業は遊牧とオアシス農業~

  • ①遊牧
    • 自然の草や水を求めて広い範囲を移動。
    • 羊、ヤギ、ラクダなどの感想に強い家畜
    • ラクダ…長時間にわたって水分補給を必要としないので重要な家畜。
    • 近年は遊牧民の定住化も
  • ②オアシス農業
    • 湧水が得られるところやティグリス・ユーフラテス川のような外来河川沿い。
    • 灌漑によってナツメヤシ、小麦、綿花、野菜などが集約的に栽培される。
  • ③灌漑用地下水路(カナート)
    • 山麓の地下水を人工的に堀った地下水路に通して、集落や耕地まで導水する。(地下水路にするのは水の蒸発を防ぐため)
    • この地下水路は地域によって名称が異なる。イランではカナート、北アフリカではフォガラ、アフガニスタンではカレーズと呼ばれる。

3.人々の生活の様子

  • ①砂漠に人が住むのは難しい→水を得られる場所に都市が形成される
  • ②交易都市:商業・金融・貿易・交通等の機能が中心な都市。
    • ダマスカス…シリア南西部にある同国の首都。オアシスに立地し、古くから交易の中心地として発達。大規模なスーク(市場)がある。
  • ④都市内部の様子
    • バザール(スーク)…イスラーム圏の市場。迷路のように入り組んだ狭い屋根付きの両側に業種ごとにまとまった商店や職人の工房が軒を連ねる。
    • モスク…イスラム教の礼拝堂。丸い屋根と針のようにとがったミナレットに特色がある。モスクとは神の前にかしづくところという意味。

4.民族と文化の特色 三つの民族と文化

  • ⑤五行
    • 信仰告白:礼拝のたびに唱える
    • 礼拝:1日5回、メッカのカーバ神殿に向かって祈る
    • 喜捨:困窮者救済のための施し、一種の財産税
    • 断食:ラマダーン月の日の出から日没まで飲食しない
    • 巡礼:一生に一度、巡礼月の7~13日にメッカに巡礼する。

5.西アジア中央アジアの産業と課題

6.地域の抱える課題

  • ①製造業未発達
    • 自動車や機械工業などは石油収入による富で外国から輸入する方が合理的。⇒製造業の発達は進まず。(※近年はアラブ首長国連邦のドバイなどで観光開発を進める)
  • 原理主義の台頭
    • 西アジアでは戦争や紛争が頻発。王族の支配や民主主義の未発達。
    • 資源依存により貧富の格差が拡大。特権階級が既得権益を貪る
      • ⇒宗教原理主義に回帰して社会や国家を公正なものにしようとする(イスラーム復興運動など)
      • ⇒一部過激派の台頭。アメリカナイズされた資本主義に対して同時多発テロ(2001.9.11)
      • ⇒2003年、米英は、イラクがテロの温床になっていると口実をつけ、イラク戦争を仕掛ける。(※米英は、世界最大の産油地域である西アジア諸国を安定させたい)
      • ムスリムが反発し、治安が回復せず。

7.西アジア主要国

(1)アフガニスタン=イスラーム共和国 旧英領

(2)イラン=イスラーム共和国

  • 農牧業…封建的大地主制度が残存し、地下灌漑用水路[カナート]と羊・ヤギの遊牧。北部はCsでカスピ海沿岸では米作が実施。
  • 石油…ザグロス山脈は新期造山帯で石油の山脈。ホルムズ海峡は交通の要衝でタンカーが多い。イランはアラブ民族と対立しているので、OAPECには加盟しない。
  • 社会…WWⅡ後はアメリカの工作により親米の王政が敷かれたが、1979年のイラン革命イスラームシーア派のホメイニが指導権を握り反ソ・反米・反アラブ(イランはアラブ民族ではなく印欧語族アーリア人)を展開。これに対し、イラクフセイン大統領はアラブ民族主義を掲げて革命イランに侵攻しイラン=イラク戦争が勃発(シャトル=アラブ川をめぐる国境紛争も原因のひとつ)。

(3)イラク共和国 旧英国委任統治

  • クルド人問題☆
    • クルド人は、イラン、イラク、トルコにまたがるクルディスタン地方に居住する民族。居住地域がイラン、イラク、トルコなどの国境で分断されているため自分たちの国家を持てていない。それぞれの国で少数派として差別や迫害を受けているため、各国からの自治や独立を要求している。

(4)トルコ 旧オスマン帝国を革命で倒して建国

(5)サウジアラビア イスラーム教[ワッハーブ派]の絶対君主制国家!

  • 人口の約60%は遊牧。羊・ヤギ・ラクダの遊牧民ベドウィン族が有名。石油埋蔵量世界1で、石油利権料が国家財政の9割。
  • オイルマネーを利用して大規模灌漑農業!砂漠なのに小麦も輸出できる!(セ試99年第4問-問5)
  • 高層ビル近代都市リヤドの南西のカルジには巨大なセンターピボットが建設。深さ1850mの地下水を電気ポンプで揚水する。農園と大牧場が操業され、アルファルファも栽培。2.5万頭の牛は大きな屋根の下で過ごし、27℃をこえると自動的に冷気が出る。

(6)イスラエル ユダヤ人がアラブ人の居住地に入植し、国家を建国!