雑録

地誌【7】ヨーロッパ地誌

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1.ヨーロッパの自然環境

(1)ヨーロッパの地形  ※標高200m未満の低地の割合が5割以上。

a.北部
b.中部
  • 古期造山帯(イギリスのベニン山脈など)と構造平野(東ヨーロッパ平原)
  • モレーン(北ドイツ平原) ※大陸氷河が運搬してきた砂礫が堆積して形成された丘状地形
  • ケスタ(パリ盆地とロンドン盆地) 
    • ※硬層と軟層が交互に積み重なった地域においては、硬層では侵食が進まず丘陵となり、軟層では侵食が早く進んで低地となるため、急斜面と緩斜面が連続した地形ができる。
  • エスチュアリー(テムズ川エルベ川セーヌ川等の河口部) 
    • ※河口部が沈水してできたラッパ状の入り江
c.南部

(2)ヨーロッパの気候

ユーラシア大陸西岸に位置するヨーロッパは海洋から吹く偏西風と沖合を流れる暖流の北大西洋海流の影響で、高緯度に位置しているにも関わらず、緯度のわりに冬でも温暖な気候で、気温の年較差も小さい。

  • a.中部…Cfb(西岸海洋性気候)
    • ヨーロッパ中部には標高200m未満の低地が広がるため、偏西風を遮る山脈がないので、比較的内陸部まで海洋の影響が及ぶ。
  • b.北部…Cfb(Cfc)→[スカンディナヴィア山脈]→Df(冷帯湿潤気候)
    • 風上側のノルウェー沿岸は高緯度までCfb(Cfc)が分布するが、風下側のスウェーデンフィンランドの大部分は、偏西風や暖流の影響が及びにくいので、冬の気温は低くなり、Dfとなる。Cfcとは月平均気温10℃以上の月が年3か月以下(4か月以上ならばCfb)。
  • c.東部…内陸部に位置するため、偏西風と暖流の効果はなく、Df。年較差は大きい。
  • d.地中海沿岸…Cs(地中海性気候)。
    • 夏に中緯度高圧帯(亜熱帯高圧帯)の影響を受けて少雨となる。植生はオリーブやコルクガシ。地中海沿岸では建築材料として利用できる樹木が少ないため、石造りの住居が多くなっており、日光を防ぐため白塗りにしている。

2.ヨーロッパの統合の歴史

(1)国境を越えて結びつくヨーロッパ

  • 統合が進むヨーロッパ
    • EUヨーロッパ連合
      • 単一通貨ユーロ
      • 国境管理の廃止⇒加盟国市民の自由な移動
      • 関税の撤廃  ⇒商品移動を容易に
      • 経済的な共通の利益を追求することで、政治的な統合と経済的な統合という二つの柱をもつ強大な政治・経済圏を作り出す!

(2)EUの誕生と統合への歩み

  • 1948 ヨーロッパ経済協力機構(OEEC)…西欧18か国によるマーシャル=プラン受け入れ機関
  • 1950 シューマン=プラン…独仏両国の対立を防ぐため、両国の石炭・鉄鋼を共同利用することを提唱
  • 1952 ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)
  • 1957 ローマ条約…ECSCを経済の全分野に拡大しようとする条約
  • 1958 ヨーロッパ経済共同体(EEC)、ヨーロッパ原子力共同体(EURATOM)
  • 1960 ヨーロッパ自由貿易連合(EFTA)…欧州統合に反対する英が経済連合を提起。英は仏の反対によりEECに加盟させてもらえなかったので、EFTAを創設した。だがイギリスは途中で脱退してECに加盟。現在は、ノルウェー、スイス、アイスランドリヒテンシュタインの4か国で構成されている。
  • 1967 ヨーロッパ共同体(EC)…関税同盟。商品、資本、労働力の自由移動。共通農業政策
  • 1973 拡大EC…英のEC加盟に反対していたド=ゴールが退陣し、イギリスが加盟。
  • 1993 ヨーロッパ連合(EU) ←マーストリヒト条約(1991)
  • 1994 EEA(ヨーロッパ経済領域)…EUの域内市場とNAFTA諸国へ拡大。これによって世界最大の市場が形成された。
  • 1995 墺、フィンランドスウェーデン
  • 1999 EMU(経済通貨同盟)⇒2002 ユーロ流通開始

(3)活発に行き来する人やもの

  • 国境を越える人やものの移動
    • シェンゲン協定(1995)…1995年に発効。EU加盟国のうち22か国(2010年3月)は国境管理を廃止し、人の移動の自由化に踏み切る。
    • エラスムス計画…EUの発展には将来を担う若者をヨーロッパ市民として育成する必要があるとの考えから1980年に発足。「大学生移動のためのEU行動計画」のことで、EU域内の大学生は、域内の他の国の大学に留学して単位をとることが認められる。
    • バカンスの移動…長期休暇には、冷涼な北部から温暖なスペイン・イタリア・ギリシャなどの地中海沿岸に多くの人が移動する。
    • ハブ空港…地域の拠点空港のこと。国際航空路線は、各空港を直結便で結ぶ方式から、主要路線によって結ばれるハブ空港ハブ空港からの路線(スポーク路線)が通じる地方空港に分けて運行するハブ&スポーク方式に再編されつつある。EUでは、オランダのアムステルダムやドイツのフランクフルトなどが有名。

(4)低くなる壁 高くなる壁

  • 国境の廃止と移動の自由の実現

  • ☆新たな問題☆
      • バルカン半島、アフリカ、中東の紛争地域から逃れてくる難民の保護と、彼らの流入に対する管理。
      • 入国許可を得ずに働きにくる労働者や不法入国を斡旋する業者への対策
      • 異なる民族や異質な文化との共存

  • 新保守主義の台頭☆
    • 南北問題が解決されず、地域紛争が頻発するようになった20世紀末から、ヨーロッパに流入する外国人や難民が増える→各国で、右派勢力が台頭し、移民排斥運動などが激化。

3.EU諸国の農業と共通農業政策

(1)ヨーロッパの自然と多様な農業

  • a.ヨーロッパ農業の発達
    • 二圃式農業…耕地を二つに分け、耕作と休閑を毎年交互に繰り返す。
    • 三圃式農業…耕地を夏作物・冬作物・休閑地の三つに分け、これらを3年周期で一巡させる
    • 四輪作法…作物栽培と家畜飼育を組み合わせ、耕地では飼料作物も栽培する。
  • b.農業革命
    • 四輪作法の普及で休閑地が消滅→穀物増産(第二次囲い込み)→大地主が土地を集約し、小規模自作農が土地を失う→土地を喪失した農民が職を求めて都市に移住し労働者に。
  • c.産業革命の3つの要因
    • 資本蓄積+労働力創出+世界市場
  • d.自給的農業から商業的農業へ
    • 産業革命以降は、工業化の進展により、農村部から工業が発達している都市部へのさらなる[⑩  人口移動  ]が起こり、都市化が進展する。
    • 増加した都市人口に食料を供給するために、農業も自給的農業から商業的農業へと変化。混合農業、酪農、園芸農業に分化。

(2)各農業の特徴

  • 混合農業…作物栽培と家畜飼育を組み合わせた農業で、小麦やライ麦などの穀物とトウモロコシやジャガイモなどの飼料作物を輪作し、肉牛や家畜飼育と組み合わせたもの。
  • 酪農…牧草や飼料作物を栽培して乳牛を飼育して、牛乳や乳製品を市場に出荷する農業。
  • 園芸農業…大都市向けの野菜や花卉(かき)などを集約的に栽培する農業。市場への輸送に便利な大都市近郊で発達。近年は交通機関の発達により大都市から離れた遠隔地でも行われるようになる。
  • 地中海式農業…夏の高温乾燥に耐えられるオリーブ、ブドウなどの樹木作物を栽培し、湿潤な冬には小麦栽培を行う。

(3)ヨーロッパにおける農業生産

  • a.北海・バルト海沿岸
    • 大陸氷河の影響を受けたやせ地が広がり、酪農が発達。
  • b.ヨーロッパ中部
    • ドイツ北部、ポーランドライ麦やジャガイモの栽培と豚の飼育の混合農業
    • フランス、イタリア北部…小麦やトウモロコシの栽培と肉牛の飼育の混合農業
  • c.大都市近郊
    • 市場に近い大都市近郊で、都市向けの野菜や花卉を栽培する。
    • オランダ…高度な技術と資本を投下して、土地生産性の極めて高い園芸農業を行う
    • スペイン、イタリア…温暖な気候を利用して促成栽培。野菜の栽培が盛ん。
  • d.地中海沿岸
    • 夏に少雨となるので、オリーブ、ブドウ、柑橘類などの樹木作物を栽培している。

(4)EUの共通農業政策

  • EUの予算の大半が共通農業政策に当てられ財政を圧迫している
    • 域内での生産
      • 生産性の低い国に合わせた統一価格を設定して、EUが買い支えをする
    • 域外から農産物を輸入する場合
      • 関税(輸入課徴金)をかけて、EUの統一価格まで引き上げてEU内で流通させる。
    • 域外に農産物を輸出する場合
      • 統一価格と国際市場価格の差額を補填して、国際市場価格に引き下げて輸出する。

4.EU諸国の工業と課題

  • ☆重工業三角地帯☆
    • 18世紀後半英で産業革命→原料産地付近に工業地域が形成
    • 重工業三角地帯…ルール、ロレーヌ、北フランスを結ぶ地域で工業が発達。
      • ※特に、ドイツのルール工業地帯はルール炭田の抱負な石炭と、ライン川の水運を背景に、ヨーロッパ最大の工業地帯になる。
  • ☆エネルギー革命と工業の変化☆
    • WWⅡ後、資源の海外依存度の高まり
    • 1970年代 石油ショック
      • 臨海部に新たな重化学工業地域が形成→炭田や鉄山等の原料産地付近に発達した旧来の地域は衰退
  • ☆新しい工業☆
    • ブルーバナナ ⇒ イギリス南部からライン川流域を経て、北イタリアにいたる地域。
      • 1970年代以降、鉄鋼業・石油化学工業から加工組み立て型の機械工業へと転換。
      • 大都市近郊で機械工業や先端技術産業などが発達。
    • ヨーロッパのサンベルト:外資系自動車工業の西・バルセロナ/航空機工業の仏・トゥールーズ
      • スペイン北東部からフランス南部を経て北イタリアにいたる地中海沿岸地域。
    • 旧東欧地域 (2004年のEU拡大以降)
      • 低賃金で生産コストを抑えることができるので、生産拠点が東欧に移転 

5.ヨーロッパの今後

(1)EU内部の経済格差

※東欧旧社会主義国EUの加盟により、生産拠点の移動→産業の空洞化

  • ①ドイツの失業率の増加
    • 西ドイツでは戦後復興の経済成長の際、ガストアルバイターと呼ばれる外国人労働者を1961年から1973年まで公式に受け入れ、多くの移民が流入した。
    • 生産拠点が東欧に移転していくにつれ、失業率は上昇。失業給付などの社会保障費が増大。
    • ネオナチなどの右派勢力が台頭し、移民排斥運動や自民族文化中心主義が高まる。
  • ②「安い労働力」をめぐる競争
    • ポルトガルギリシャは1986年に加盟し、「安い労働力」を提供したことでEU域内から工場が進出してきたが、「産業の高度化」では進展がなかった。
    • 2004年、東欧諸国がEUに加盟すると、東欧の方が「安い労働力」を提供できるので、生産拠点が移転。競争にさらされている。

(2)将来の課題

  • ①経済的な統合(ヒト・モノ・カネ)の自由化から政治的な統合へ
  • ②トルコの問題
  • ③現代情勢の問題
    • 国際競争力のないユーロ…ドルに対して30%ほど高い。市場競争力の面で苦境。
    • 米国に対する対応…英国は対米追従。独仏は欧州中心。イラク戦争で英と独仏で賛否が分かれる。
    • 多民族共生の問題…仏は政教分離(公共での宗教的シンボルの禁止)。蘭や英は多文化主義で寛容。
    • イギリスのEU離脱…2020年1月31日午後11時に正式に離脱。