2020-12-28 地誌【4】南アジア地誌 地誌 1.南アジアの自然環境 1-1.諸国 1-2.地形 1-3.気候 2.多様なインド世界 2-1.インドの多様な文化 2-2.イギリスからの独立 2-3.ヒンドゥー教と人々の生活 3.成長する経済 3-1.多様な自然環境と農業 3-2.工業 3-2-1.インドの主要工業都市まとめ 3-2-2.成長するインドの工業 3-3-3.急成長するIT産業 4.インドのめざす方向 5.インド以外の南アジア諸国 5-1.パキスタン=イスラーム共和国 5-2.バングラデシュ 5-3.スリランカ 5-4.ネパール 5-5.ブータン 5-6.モルディブ共和国 5-7,カシミール地方(国境紛争地域) 1.南アジアの自然環境 1-1.諸国 南アジアとは? インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ネパールなどが含まれる地域 1-2.地形 ①新期造山帯のアルプス・ヒマラヤ造山帯 ヒマラヤ山脈、チベット高原、パミール高原など ヒマラヤ山脈はインド(インド・オーストラリアプレート)がユーラシア大陸(ユーラシアプレート)に衝突したことで、地層が激しく押されて隆起して山脈になったもの。 ②安定陸塊 インドの中部から南部にかけて広がるデカン高原など。かつてのゴンドワナ大陸に属する。 ゴンドワナ大陸は、古生代から中生代にかけて南半球に広がっていた大陸。その後、分裂、移動して現在の南アメリカ大陸、アフリカ大陸、南極大陸、インド、アラビア半島などになった。 ③ガンジス川…インド東部を流れ、ベンガル湾にそそぐ。 ヒンドスタン平原…ガンジス川が運搬して堆積して形成された沖積平野 河口部…デルタが形成され世界有数の稲作地域 ④インダス川…パキスタン東部を流れ、アラビア海にそそぐ河川。流域の大部分は乾燥気候。 パンジャブ地方…インダス川中流域。灌漑によって小麦や綿花などの栽培が盛ん。 1-3.気候 ①季節風の影響 a.南西季節風…夏(5月~10月)に海洋から吹く湿った風。 インド南西岸、インド北東部のアッサム地方に大量の降雨。 ※サイクロン(インド洋で発生する熱帯低気圧)も沿岸部に大量の雨をもたらす。 b.北東季節風…冬(11月~4月)に大陸から吹く乾燥した風。広い範囲で少雨。 ②中緯度高圧帯(亜熱帯高圧帯)の影響 インド北西部やパキスタンに乾燥帯を分布させる原因。 ③インドの気候区分 Af、Am…インド南西岸やスリランカ南部。年中高温多雨。 Aw…インド東部とスリランカ北部。雨季と乾季が明瞭。 Cw…ガンジス川中上流域では季節風の影響で夏に多雨、冬に少雨。 BS、BW…デカン高原やインド北西部からパキスタンにかけての地域。 2.多様なインド世界 2-1.インドの多様な文化 ①国土面積…328.7万㎢(世界7位) ②人口…約12.2億人(2010年、中国に次いで2位) ③言語 全国的な公用語はヒンディー語だが、言語は統一されておらず数百の言語がある 補助公用語は英語、21の憲法公認語が設定されている。 北部は印欧系語、南部はドラヴィダ系語 ④宗教 ヒンドゥー教…全体の8割。バラモン教の教義に仏教や土着信仰が結びつき成立。 イスラーム教…1526~1858年にインドを支配したムガル帝国がイスラーム教国だったので信者がいる。 キリスト教…ムガル帝国後、イギリスがインドを支配したので、キリスト教の信者がいる。 仏教、ジャイナ教、シク教など 2-2.イギリスからの独立 英領インド インド…ヒンドゥー教徒を中心としてイギリスから独立。 パキスタン…イスラーム教徒を中心としてイギリスから独立。東西に飛び地で分離した。 バングラデシュ…西側優遇政策が採られたため、東パキスタンが分離独立。 スリランカ…仏教徒のシンハラ人を中心に独立。だが英領時代にタミル系ヒンドゥー教徒が入植したので民族問題が生じている。 2-3.ヒンドゥー教と人々の生活 ①カースト制度 ヴァルナ(4身分)と不可触民 4身分…バラモン(祭司)・クシャトリア(王侯貴族)・ヴァイシャ(商人職人)・シュードラ(隷属民) 不可触民…ヴァルナの枠外に置かれた最下層民。 ジャーティー…4ヴァルナが細分化。祖先が同じだと信じ、そのうちでのみ通婚する血縁集団。 集団間の儀礼的な上下関係から差別が派生 雇用の斡旋、貧困者の援助など相互補助の側面。ジャーティーの規範を守り、来世を目指す。 ジャーティーによる身分制度はカースト制度と通称される。 ②生活と伝統 肉食をしない人が多い(ただし牛の乳は摂取しても良い。)。女性はサリーを身につける ③巨大な人口と地域差 人口増加の要因 宗教的要因…子孫を増やして祖先崇拝 労働力的要因…仕事の担い手、老後の安心 医療的要因…死亡率が低下 インド政府1960年代から家族計画→都市部では70年代から低下。地域差激しい ※識字率・教育普及の程度、貧富の格差により差異が生じる。 3.成長する経済 3-1.多様な自然環境と農業 ①緑の革命 発展途上国の食糧問題を解決するため、米、小麦、トウモロコシなど穀物の高収量品種の導入をすすめる技術革新のこと。高収量品種を栽培するためには多量の水や化学肥料が必要となるため導入できる地域や農民は限られ、地域間や農民間での貧富の差が拡大するという問題も生じた。 ②土壌(間帯土壌と成帯土壌) インドはデカン高原にレグールと呼ばれる間帯土壌が広がり、綿花栽培が盛んである。 間帯土壌は母岩に影響される土壌で、地中海沿岸に分布するテラロッサ、ブラジル高原に分布するテラローシャがある。 成帯土壌は気候や植生の影響を受けて生成された土壌。熱帯の赤いラトソルや冷帯の白いポドソルなど。 ③農業就業人口 国民の5割以上が農業に携わる。 英領植民地時代から大土地所有制が続き、土地を持たない農民(小作農)が多くいる。 ④稲作地域 夏の海洋からの南西季節風の影響で多雨となるインド南西部、ガンジス川中下流域 南西部には西ガーツ山脈が走る→南西季節風を遮るので風上は降水量が多くなる ⑤ジュート ガンジス川河口部のデルタ(三角州)地帯で栽培。 ジュートとは黄麻。インドとバングラデシュの2か国で世界の生産量の大部分を占める。 ⑥茶 ヒマラヤ山脈南側のダージリン インド東部のアッサム地方 ☆茶は高温多湿で水はけのよい傾斜地を好む☆→ヒマラヤ山麓、丘陵が広がるアッサム地方 ⑦畑作 夏の南西季節風の影響が及びにくく、降水量が少ない地域→ガンジス川上流地域、北西部のパンジャブ地方、内陸部のデカン高原 小麦 ガンジス川上流部から北西部のパンジャブ地方・・・灌漑により小麦栽培 綿花 インド内陸部のデカン高原→ 玄武岩が風化して生成された黒色の肥沃な間帯土壌「レグール」 ⑧ガンジス川流域は上・中下・河口流域で農産物が異なるので要注意! 上流(小麦)→中下流(稲作)→河口部デルタ(ジュート) 3-2.工業 3-2-1.インドの主要工業都市まとめ ①ムンバイ 西部。デカン高原の綿花を利用した綿工業。 機械工業、化学工業など商工業の中心。 ②コルカタ 東部。ガンジスデルタで栽培されるジュートを利用したジュート工業の発展 ③デリー 自動車工業、ダイヤモンド加工業 ダイヤモンドはインドの重要輸出品 ④ジャムシェドプル&アサンソル 鉄鋼業 インド最大の重化学工業地域 3-2-2.成長するインドの工業 ①独立後インドの工業化政策 植民地時代の民族運動 →「国産品愛用」→ 独立達成 → あらゆる種類の製品を国内生産する体制 国営企業 → 効率性悪く質の劣化→ 国際競争力の低下 ②経済自由化へ 1980年代経済統制緩和→1991年新経済政策による経済自由化、輸入や外国資本制限撤廃 インドの国内市場と安価な労働力 → 工業生産は急速な成長 ※自動車産業の発展 →デリー、バンガロール、チェンナイ ※BRICsの一国として世界の注目を集める。 3-3-3.急成長するIT産業 ①IT産業の発展 1991年 経済自由化 → コンピュータソフトウェアの発展(数学教育・英語使用) ②かつては人材流出していたが、現在はインド国内での生産が主流になった!! ※通信衛星の使用が主であり、大型のインフラ整備(道路・鉄道など)をしなくともよい ※時差の利用により、欧米が夜の間に仕事を引き継げるので迅速さで有利 ※英語使用によるコールセンター業務やデータ処理業務 デリー、バンガロール→インドのシリコンヴァレーにハイテク工業団地。 4.インドのめざす方向 高い経済成長率、IT・ソフト産業分野の成長(100%外資導入・人材育成) 独自の伝統や文化が人々の生活の基盤 → 近代化する社会とどのように融合するか!? ※インドではカースト制度が職業を拘束するので、ITという分野はソフトウェアで這い上がるための手段であり、特別の意味を持つ。都市にはサイバーカフェがあり、若者はそこで技術を磨く。「貧しいが頭と時間を有効に」が合言葉。 5.インド以外の南アジア諸国 5-1.パキスタン=イスラーム共和国 都:イスラマバード、人口:約1.7億人(2010年)、イスラーム教 1947年独立。インダス文明。インドと同じアーリア系だが、宗教・言語の違いから分離独立。 イスラーム教国、国土の大部分が乾燥気候 東部にインダス川。流域のパンジャブ地方は英領植民地時代から灌漑→小麦や綿花の栽培地域 世界有数の綿花生産国。綿織物や衣類は重要な輸出品 公用語はウルドゥー語、宗教はイスラーム教。 5-2.バングラデシュ 都:ダッカ、人口約1.5億人(2010年)、イスラーム教 1947年に英領植民地から独立した際はパキスタンの一部だったが、1971年に分離独立。 ※インドを中央に挟んだ飛び地であり、かつ西パキスタン優遇政策がとられたため。 イスラーム教国、人口密度は世界有数。公用語はベンガル語。 国土の大部分がガンジス川とブラマプトラ川のデルタ。海抜高度が低く低平なため、雨季の洪水やサイクロンによる高潮などの被害を受けやすい。地球温暖化による国土の水没も懸念。 国土面積の6割が農地でコメやジュートの栽培が盛んだが、洪水やサイクロンなどの自然災害により慢性的な飢餓状態。 5-3.スリランカ 都:スリジャヤワルダナプラコッテ(要塞化されし勝利の町)、仏教とヒンドゥー教の対立 旧英領、1948年にセイロンとして独立、1972年にスリランカと改名 約7割が仏教を信仰するシンハラ人。約2割が英領植民地時代に労働力としてインドから連れてこられたヒンドゥー教を信仰するタミル人。かつてシンハラ人優遇政策がとられたので民族対立が激化。紛争が起こる。 世界有数の茶の生産国(リプトンの紅茶は有名)。英領植民地時代からプランテーション。 5-4.ネパール 都:カトマンズ、人口:約2500万、ネパール語、ヒンドゥー教 3000mの盆地の国。国王が大地主、農民はほとんど小作農の封建的社会体制。 首都のカトマンズはヒマラヤ登山基地。エベレストの入山料が収入源。 国教はヒンドゥー教(8割)。他チベット仏教(1割)など。 5-5.ブータン 都:ティンプゥ、仏教 旧隣国キッシムが1975年にインドに併合されたのを契機にインド保護領から完全独立。 住民はチベット人が多く、チベット仏教75%。僧侶も多い。 5-6.モルディブ共和国 首都:マレ、旧英保護領(1965年独立)、人口約27万、イスラーム教 大小1196の珊瑚礁の島。最高3.5m。海面が65㎝上昇するだけで国土の半分は水没し、湿地化して人は住めなくなる。漁業と海運が主産業。 インド系、マレー系、アラビア系の住民で構成され、宗教はイスラム教。 ツバルと共に海面上昇の危機感を持つ。 5-7,カシミール地方(国境紛争地域) カシミール問題…カシミール地方をめぐるインドとパキスタンの領有問題 経緯 WWⅡ後、英領植民地から南アジアが独立を果たす ヒンドゥー教徒とイスラーム教徒が対立。インドとパキスタンに分離独立することに。 当時のインドは分権社会であり、帰属の決定権は地方領主(藩王)にあった。 カシミール地方の藩王はヒンドゥー教徒であったが、住民の多くはイスラーム教徒だったことから問題が発生。帰属をめぐり対立。現在も領有問題が続いている。