1/1彼氏彼女「泉多恵子」シナリオの感想・レビュー

重い!面倒くさい!湿度高い!婚期を逃した行き遅れオバサンとお見合い交際する話。
泉多恵子は個人経営のお花カフェを切り盛りする年を重ねたたおやかな御婦人。
行き遅れを心配した母親が主人公くんの実家に紹介する形でお見合いをすることになる。
しかしこれまで自分の店を持つことに人生を捧げて来た多恵子さんは躊躇してしまう。
そんな多恵子さんに、行きつけの客でもあった主人公くんが、第二の青春を送らせる!
これまで仕事漬けであった多恵子さんの人生の彩りになれればフラグは成立。
多恵子さんのぶっ飛んだ所や面倒くさい所を受け容れながら交際し結婚に至る。

泉多恵子のキャラクター表現とフラグ生成過程

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  • 年齢を重ねた行き遅れ系御婦人ヒロインの人生の味わい深さ
    • 泉多恵子は個人経営のカフェの店主。主人公は勤務先の昼休憩の際、ランチを求めて足繁く通うことになります。主人公くんは店の看板娘でもある多恵子さんに惚れていたものの、その左手には結婚指輪があったため、関係性は店員と客というもので終わっていました。だがしかし、お見合いをすることになった主人公くんがその場で出会ったの人は……なんと多恵子さん!結婚していたんじゃなかったのかー!?もしかすると未亡人!?と疑問を抱きながら読み進めると指輪は虫よけであったことが判明。これを契機にフラグ構築が始まるのですが……。多恵子さんはこれまで仕事に情熱を捧げてきて男性経験がなく将来のヴィジョンも描けていませんでした。それ故、主人公くんとの交際も上手くその先が描けず躊躇してしまうのです。そんな多恵子さんにアプローチし、徐々に関係性を深めていく過程が丁寧に、そして明るいバカギャグ路線で描かれていきます。

  • 重くて面倒くさいヒロインを魅力的に描き出すことに成功している
    • このルートの魅力は何と言っても多恵子さんの面倒くささ。30代で男性と付き合ったことが無く処女を拗らせた多恵子さんの面倒くささは半端ないものがあります。また普段は清楚で高嶺の花感ある多恵子さんですが実態はちょっと見栄っ張りなだけで庶民的なオバサンであることが明らかになります。初めてそれを実感するのが居酒屋デート。お洒落なバーなどではなく大衆酒場で駆けつけ三杯。ビールっ腹をさらけだし、砂肝とししゃもを貪り食います。またお店がテレビで紹介されることになった際にはインタビューの練習をするのですが、本性曝け出したバージョンがステキすぎる。人から命令されるのが嫌だから自分の店を持つことにした多恵子さんの本気度が窺われます。たしかに俸給生活者ってどんなに優良企業のホワイトカラーでも雇用主から賃金を貰っているという点ではルンペンプロレタリアートと同じなのよね。多恵子さんは学生時代に無理やりバイトという形で喫茶店に弟子入りしグイグイと修行を積んできた生き様が描かれます。

  • 多恵子さんが歩んできた人生そのものを攻略する
    • 多恵子さんが自分の店を持つというコダワリは一昼夜で実現したものではありません。それには生い立ちが関係しており、シングルマザーの母子家庭に、団地で育てられたことに強いコンプレックスを抱いていました。幼少の頃から団地の子と遊んじゃいけませんと経済的差別を受けてきた多恵子さんは、ハングリー精神を原動力にしていたのです。しかしそれは仕事一筋の人生とも言えました。自分の店を持ち、経営を軌道に乗せた後、仕事以外何も無かったのです。主人公くんはそんな多恵子さんの人生に色彩を与えると共に、その人生を支えていきたいと思うようになっていきます。また多恵子さんルートでは彼女の人格を形成してきた人々とのホッコリエピソードも重要で、学生時代の師匠のマスターや多恵子さんを育ててきたママとの交流が多恵子さんの人物像の掘り下げに一役買っています。そしてお見合い婚ならではのイベントとして主人公くんの家庭に多恵子さんが受けいれられる家族イベントもグッとくる展開です。重い・面倒くさい・湿度高いと三拍子そろった多恵子さんをしんみりと丁寧に描きながら、ぶっとんだギャグでノリノリに叙述していく素晴らしいバカゲーになっています。

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『1/1彼氏彼女』感想まとめ