フローラル・フローラブ「朱鷺坂七緒シナリオ」の感想・レビュー

母子家庭において母親から束縛されるヒロインが親から自立するはなし。
キリスト教ネタを用いて「ヤコブと天使のおすもう」を引用し挑戦と承認を説く描写はステキ。
主人公くんと夏乃お嬢様の支援により母親と和解できた展開はまとまっていて良かったと思う。
あと七緒のキャラクター表現が昔懐かしきツンデレ像であり何か和んでしまいますね。
しかし癒し属性を主人公くんが継承してるはずなのにその主人公くんを七緒√だと癒そうとするのですね。

朱鷺坂七緒のキャラクター表現とフラグ生成過程


  • 如何にして七緒は主人公くんに好意を持ったか
    • 七緒はツンデレかつ方向音痴であり、入学式当日に道に迷って不良に絡まれていたところを主人公くんに助けられて胸キュン。その後自分の親友の想い人と知りつつも、主人公くんがあまりにも流し続けるので、気になってしまうお年頃。そのため主人公くんに注目するようになりいつしかその人格に触れ好感度を蓄積していったのでした。しかし七緒は良かれと思って暴走するところもあり、主人公くんを見返そうと思って作ったミルフィーユがトラウマを刺激してしまいます。主人公くんは上手にフォークを使えない失態をメンバーズに晒してしまうことになるのでした。七緒は主人公くんの凄惨な過去を知り、主人公くんを救いたいと思うようになっていきます。特に主人公くんがネズミトラウマを解消するところは屈指のシーンといってもいいでしょう。幼少期に母親から二グレクトされ食事も与えられずネズミに齧られながれ死を覚悟したトラウマを七緒に吐露するところはグッときました。また七緒が主人公くんのお母さんにもなりたいとか言い出し食事の世話をしだします。いや本当に近年稀にみるツンデレっぷりです。



  • 母親からの自立と和解
    • 七緒の夢はお菓子屋さん。一流のパティシエではなく地域に根差した気軽に買える店を目指します。主人公くんに恥辱を与えることになったミルフィーユを反省を踏まえて「誰でも食べやすいように」と改良するところとか結構ググッときます。敷居が高くなく誰でもぶらっと立ち寄れて満足できる大衆製菓を目指すのです。ここで私は何の脈絡もなく『俺たちに翼はない』に出てきた移動式のクレープ屋を想起してしまいました。それなりの製菓技術を持っているにも関わらず小洒落たとこでの商売がしっくりこず大衆相手への供給に生き甲斐を見出していた姉さんですよ。七緒√にはまるで関係がありませんが、埋没しながらも自分の性分を確立しようとしている姿が何となく似ているなと思ったわけですね。まぁ『おれつば』の方が雰囲気がもっと退廃的ですが。
    • で、七緒はお菓子屋さんの夢をママンから反対されます。その理由は母親からのエゴからくるものでした。母子家庭であった朱鷺坂家は母子助け合って生きてきたため七緒はママンに反発できなかったのです。それを利用してママンは交際相手と別れることになった寂しさを七緒を束縛することで埋めようとしたのです。家を出て専門学校を目指そうとする七緒を無理やり地元の大学へ進学させようとします。いったんはママンに反発する七緒でしたが、親に反抗する自分に戸惑ってしまいます。そんな七緒を支援するのが親友の夏乃であり、ここでキリスト教思想引用タイムで、ヤコブが天使と相撲をとり、負け続けながらも決して諦めなかった姿が天使と神から承認をうけることとなったエピソードを紹介します。これに勇気づけられた七緒は主人公くんと共にママンに立ち向かいます。七緒に励まされ主人公くんに支えられた七緒は母親から自立し、また母親と交際相手の問題をも解決に導くのでした。