【感想】『映画 ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス』(東映、2013年10月26日)

プリキュア版オトナ帝国の逆襲。幸福な思い出のセカイに囚われ未来に進むことをやめたマナを奮起させる話。
相田マナは大好きだった祖母及びペットの犬を過去に亡くしており、その死を乗り越えて生きていた。
だが成仏できなかった犬の地縛霊が人間に捨てられた付喪神を引き連れて襲い掛かってくる。
こうしてマナたちは過去の世界に閉じ込められ幸せだった幼少期の記憶の中に浸ることになった。
プリキュアの危機に対しマナの亡き祖母は妖精形態をとって出現しパートナー妖精たちに助言を施す。
パートナー妖精たちはプリキュアたちの心象世界に飛び込み、夢からの覚醒を促す。
しかしマナは祖母の入院とペットの犬の死のトラウマを抉られ、未来に進むことを拒んでしまう。
それでも復活したマナは敢えて犬の攻撃を自ら受けることで浄化させることに成功。
ラストは犬を唆したラスボスとの戦いになるが、マナを庇って2度目の死を迎えた犬の力で敵を倒す。

幸せな過去の想い出に浸り未来へと進むことを拒んでしまいバッドエンド

幸せだった幼年期の心象世界に取り込まれてしまうプリキュアたち

おばあちゃんが死ねばみんな泣くだろぉー。犬が死ねばみんな泣くだろぉー。死生観をテーマにした泣きゲーが映画版ドキプリである。シナリオの導入部分は代々受け継がれて来たウェディングドレスから始まる。祖母が着て、母も着たウェディングドレスをマナも着たいというのである。こうして親子3代に渡り想いが継承されていくのだが、それは稀であり、継承されないケースがほとんであった。人間に愛用されたにもかかわらず、いつしか忘れ去られて朽ち果てた物品の付喪神たちが襲い掛かってくる。その付喪神たちを率いる親玉は、人々を幸せな思い出のセカイの中に閉じ込めることで、世界を滅ぼそうとする。プリキュアたちも幸せな自己の心象世界に囚われてしまうのであった。
 

犬の死のトラウマを抉られる相田マナ

相田マナは小学生時代、まだ祖母もペットの犬も健在だった時の想い出に浸ることになる。両親祖父母ペットの犬、幸せな幼年期の毎日。当初こそマナは脱出を試みたが、その甘美さに嵌って脳を溶かされていく。一方シナリオの冒頭でマナがウェディングドレスを大切にしていたことから、その付喪神が亡き祖母を具現化させ(たのであろう)。祖母が妖精の姿をとって現われるのである。祖母(妖精)はプリキュアたちのパートナー妖精に助言をし、マナたちの心象世界に飛び込んで救出するよう促す。他のプリキュアたちはパートナー妖精のおかげで意志を取り戻すのだが、マナは違った。マナは思い出のセカイでも祖母の入院とペットの死のトラウマを抉られ、辛いことがある未来になど行きたくないと現世に戻ることを拒否してしまうのである。こうして一生甘美なる思い出のセカイでマナは過ごすことになった(完)となりバッドエンドで終わった。
 

祖母の教えでトラウマ克服

だがしかしどんな逆境からでも立ち上がるのがプリキュアである。マナは奮起しもう一度戦う決意をする。犬の地縛霊とのバトルにおいては敢えて自ら攻撃を受け、肉体を噛みつかせることで改心させた。この時、ガッツリ流血描写がありキュアハートが肩から鮮血を迸らせる姿は衝撃的だ。プリキュアバトルでこんなにも流血したことがかつてあっただろうか(中にはあったかもしれない)。犬の地縛霊が元の霊魂に戻ると、今度は黒幕が登場しラスボスバトルとなる。黒幕は壊れたクラリネットであり、プリキュアたちは大苦戦。その戦闘中、一緒に戦っていた飼い犬の霊魂がマナを庇って二度目の死を迎える。その時、犬からパワーアップアイテムが浮かび上がり、それを使ってラスボスを撃破した。終局部では犬と共に祖母(妖精)は成仏していくのだが、去り際の一言でマナが妖精は祖母だったと気付く仕組みになっている。マナの名付け親は祖母であり、その漢字は「愛」と書いて「マナ」と読ませるものであったことが判明。こうしてマナが「みなぎる愛」をキメ台詞にしているのは祖母の影響であると解題された。

相田マナはわざと攻撃を受けることで相手を受け容れる
二度目の犬の死とパワーアップ
相田マナの「マナ」の漢字は「愛」で祖母が名付け親
最後に妖精が祖母だと気付いたよエンド