【感想】『映画 キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと!想い出のミルフィーユ!』(東映、2017年10月28日)

菓子作りを究めるため社会的評価を捨てひたすら孤独に菓子作りをする中年男性の話。
本作の主役はジャン=ピエール氏。彼はキラ星シエルに菓子の美味しさを教えた人物であった。
露頭に迷い飢餓に苦しんでいたシエルらに菓子を振る舞い、その人生に影響を与えた。
ジャンの下で修業に励んだシエルは一流の菓子作り職人となったが、そのせいで友を失った。
久しぶりに再会した二人であったがシエルは不調の真っ只中でありジャンに弱さを指摘されてしまう。
天才と持て囃されコンテストという世俗的なイベントに参加し仲間と馴れ合うことを批判されるのだ。
だがシエルは仲間と共に最高の菓子を作り上げ、ジャンの人生を尊重しつつも仲間を作ることを薦める。

一つの事に人生を捧げ、それを究めるためだけに孤独を選んだ中年男性を救済せよ

世間から理解されなくても菓子作りに邁進するジャン=ピエール氏

本作の主役はジャン=ピエール氏。見方を変えれば山月記の李徴や弱者中年男性のようにも見られよう。だが菓子作りを究めるために世俗の評価を捨て、ひたすらに菓子作りの研究に励む様子は菓子職人としてのプライドを感じさせもする。だが彼の生き方は尊重されつつも、やんわりとだが確実に、その弟子のシエルによって否定されることになる。まず序盤では菓子作りの天才であったシエルにデバフがかけられ、その能力は発揮できないようにされてしまう。気分転換のためにパリの街並み観光としゃれこんだり、シエルの師匠であるジャンに会いに行ったりする。
 

かつて菓子作りに夢中になり、友を失ったことを悔恨するシエル

だがここでシエルはジャンから碌な菓子を作れていないではないかと見抜かれてしまう。世間から天才と持て囃されて天狗になっていること、お祭り的なコンテストに出場して世俗的に溺れていること、仲間達を引き連れて馴れ合いを行っていること等々。ジャンの指摘はもっともなことでもあったため、シエルは答えに窮してしまう。シエルはかつてジャンのように菓子作りを何よりも優先したため連れ合いがコンプレックスを抱えていることに気付けず彼を失ってしまった過去があった。そのため孤独か仲間かで煩悶するも、仲間を大切にする精神を尊ぶ。
 

仲間と作り上げた菓子をジャンに評価してもらうシエル

シナリオ上、菓子作りにのめり込み過ぎて悪霊に取りつかれてしまったのはジャンの方であり、シエルはデバフ状態ながらも仲間を指揮して美味しい菓子を作り上げる。シエルは自分の菓子を食べればジャンも目覚めるであろうと確信し、仲間達と共に魔獣と化してしまったジャンを浄化するために奮闘する。シエルはジャンの菓子作り職人として気高さを尊重するも、仲間を作った方が良いと薦めて説教する。最終的にシエルの菓子を食べたジャンはその美味しさを評価し、シエルの在り方を認めることとなった。ジャンに取りついていた悪霊はシエルらに生前の人生を否定されるが、浄化後には幼女化してジャンの下へ修業に訪れ、二人で欠片を埋め合うエンドとなる。

ジャンは炉利化した浄化後の悪霊と欠片を埋め合うエンド