サクラノ刻「幾望/既望(鳥谷一族)」の感想・レビュー

雪景鵲図花瓶を巡る麗華と鳥谷一族の確執を解消し鳥谷静流を陶芸家として羽ばたかせる話。
鳥谷静流は贋作として雪景鵲図花瓶を作り、それは現代陶芸として一流の作品に仕上がった。
だが静流は麗華が贋作を公表し美術界で面子を潰してしまうことを怖れ、引き渡しを拒んだ。
美の慧眼を持つ麗華は贋作と承知で受け取ろうとしていたため静流の行為を裏切りと感じる。
麗華は批評によって静流の陶芸家としての社会的地位を確立させることが夢だったのである。
故に二人の仲には断絶が生じたのだが紗希・真琴母子の力で二人を和解させるよう仕向ける。
こうして静流は次々と陶芸作品を発表、麗華はSNSで炎上商法を展開し、社会的評価に繋げた。

そもそも芸術とは世界から美を発見することに他ならない。そして批評もまたその芸術作品の美を発見することに他ならない。

麗華は雪景鵲図花瓶が贋作だと気付いていた
  • 鳥谷静流と中村麗華の和解
    • サクラノ刻第1章で仲違いしてしまった静流と麗華。この二人の関係を和解させることが、ここでのテーマとなる。鳥谷真琴はサクラノ詩での攻略ヒロインの一人であり陶芸の役割を担ったが、弓張学園の釉薬の秘密に至ることができなかった。他のメンバーに比べて才能に劣る真琴は美術雑誌の編集者としての道を選ぶが青春の悔恨と劣等感は深かった。そしてまた草薙父子も静流も弓張釉薬に辿り着けたのに、自分だけそこへ至れなかったというのは深い影を差すことになる。だが美術雑誌の編集者として生きてきた真琴はジャーナリストとしての勘を培っていた。雪景鵲図花瓶以後、静流は作品を発表せず、コーヒー豆を仕入れるために世界を放浪していたのだが、真琴は妙だなと感づくのである。静流は弓張釉薬を発展させるために、世界各地の土を集めているのではないかと推測するのだ。また静流が帰国する度に学園の窯を使用していたことから、新たな作品を作り続けていたのではないかと考える。そんなわけで静流が所有する倉庫を調べるために、酔わせてカギを奪取しようと、飲み比べ大会が実施されることになる。ここで主人公は奮闘するも負けてしまうのだが、なんと真琴の母:紗希が名乗り出る。これまで仲違いしていた紗希と真琴が和解した瞬間であった。こうして酒豪である紗希の母の活躍により、静流の作品群を抑えることに成功した。
    • 静流の件がひと段落すると、今度は麗華の下へ乗り込んでいくことになる。静流は贋作として雪景鵲図花瓶を作ったが、麗華はそんなこと百も承知であり現代陶芸の作品として評価していた。だが静流は麗華が贋作にすっかり騙されたと思い込んでしまう。麗華のあまりの喜びように、彼女が贋作を公表して恥をかいてしまうことを不憫に思った静流は引き渡しを拒んでいたのだ。麗華は自分の批評により静流の作品を世に知らしめたいと願い、美術系の学芸員になることを夢見ていたのだが、家庭環境の問題からそうはいかなくなる。麗華は国文科に進学させられてしまい無邪気な夢は絶たれてしまう。だが国文科に進学したことで古書の読解スキルを身につけた麗華は、弓張釉薬についての文献を漁り、学術的な意義を与えようとしていたのであった。こうして麗華の意図が明らかになり、静流と和解することに成功した。
    • その後、麗華の目論見通り、雪景鵲図花瓶は公表されることになる。公表当初は贋作として蔑まれていたが、麗華はSNSで煽動を開始し、炎上商法でバズらせを生んでいく。大学教授や美術系学芸員までもが介入してくると、これに乗じて麗華は今までの研究成果を発表し、専門性を以て雪景鵲図花瓶の美術史的意義を広めていく。こうして麗華は批評により陶芸家鳥谷静流の美を発見させたのであった。
酒飲み対決で紗希が助けに入る
麗華は批評により弓張釉薬を陶芸界に知らしめたかった
麗華と静流の和解
麗華がSNSにおける炎上商法で勝てたワケ

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