中島敦『狼疾記』(ちくま文庫『中島敦全集2』内収録)の再々読をしてみる

再再再読くらい。初めて読んだのは浪人の時。確か世界史の講師が中国史で『李陵』を紹介し、そのまま三省堂に逝って購入した岩波文庫版のに入っていた。浪人時代のことを思い出すと、あれほど勉強したのに地元駅弁大学だと思うと涙が出てくる。当初は、この作品を読んで衝撃を受けアンニュイになったものだ。

今日一日、何をしたか?何もしはしない。何というくだらない一日。明日は?明日は金曜と。勤めのある日だ。そう思うと、却って何か助かったような気になるのが、自分でも忌々しかった。
結局、学校へ出る二日は自分の生活のなかであまり重要なものでないと、此の男は思いたがっているのだが、この頃では、それが仲々そうではなく、時として、学校が、というよりも、少女達が、自分の生活の中にかなり大きい場所を占めているらしいことに気付いて愕然とすることがある。


この文章だけでも破壊力バツグンだ。リア充との関係が皆無な生活を送っていると、時間は潰すしかないものになっていく。ものを考えるのが億劫になってくると、結局落ち着く先は、何時もの「イグノラムス・イグノラビムス」である。