文学

カレル・チャペック(来栖継訳)『山椒魚戦争』(岩波文庫、1978)

ディストピアもの。資本主義を含め現代文明が行き過ぎた結果、山椒魚が人間にとって代わる。 しかし最終的に山椒魚も種族間戦争となって滅び、生き残ったわずかの人間がまた文明を築き始め、歴史は繰り返す。 現代世界のシステムそのものが、人間の根本的な…

ショーペンハウアー『読書について』鈴木芳子訳、光文社古典新訳文庫、2013年

岩波文庫の同タイトルを読んだことはあったが、光文社古典新訳文庫で再読。 同時代作家のベストセラーよりも大家の古典を読むべき。 練られた思想によるテーマ性のある文章を読むこと。さらに読むだけではなく思索することが必要。 何も考えず粗製乱造された…

寺田寅彦『柿の種』(岩波文庫 1996年)の感想

大正9年〜昭和10年に寺田寅彦が俳句雑誌「渋柿」の巻頭第一ページに書いた即興的漫筆の寄せ集め。 以下「自序」におけるこの本の趣旨の説明。 …言わば書信集か、あるいは日記の断片のようなものに過ぎないのである。しかし、これだけ集めてみて、そうしてそ…

ヘッセ(山本洋一訳)「クラインとワーグナー」『ヘルマン・ヘッセ全集』第11巻 臨川書店 2006

現実逃避のために読む。 話の筋書きとしては、良識的な市民であることに苦悩するクラインが身を委ねることに人生を見いだす話だと思われる、というか思った。 主人公のクラインは金を横領して家族を捨てて逃亡する。良識的な市民であるという人生に耐えられ…

ヘッセ(山本洋一訳)「クラインとワーグナー」『ヘルマン・ヘッセ全集』第11巻 臨川書店 2006

現実逃避のために読む。 話の筋書きとしては、良識的な市民であることに苦悩するクラインが身を委ねることに人生を見いだす話だと思われる、というか思った。 主人公のクラインは金を横領して家族を捨てて逃亡する。良識的な市民であるという人生に耐えられ…

ヘッセ(山本洋一訳)「クリングゾル最後の夏」『ヘルマン・ヘッセ全集』第11巻 臨川書店 2006年 137-197頁

暇つぶしに読む。文学のことはよく分からん。 筋書きとしては、既に名声を得た芸術家が絶えず挑み続けることに煩悶しながら、ついに遺作となる自画像を描きあげるというおはなし。というような感じ。 メモ 「実際のところ、こんな絵に価値があるのだろうか?…

トーマス・マン/関泰祐、望月市恵訳『魔の山』(岩波文庫)第6章8節「兵士として、それもりっぱな」のメモ

コツコツと読んできた『魔の山』もついに第6章を読了。次が最終章。この作品の時代背景は20C前半、ドイツの青年ハンス・カストルプが従兄ヨーアヒムの高山療法を見舞いに来たことにより物語が始まる。数週の滞在のつもりであったのだが、結果的に長期間の逗…

ヘッセ/三宅博子訳『東方への旅』』(臨川書店『ヘルマン・ヘッセ全集13』内収録)の感想

東へ旅をするんだよ。時代も空間も超えた。そんな神秘宗教団がありました。H・H はその神秘宗教団に入って東を目指すのだが、旅の途中で所属していたグループが空中分解。志半ばで、旅を諦めてしまうのさ。それからの人生はどうだ?無味乾燥な生活を送る毎日…

ヘッセ/里村和秋訳『荒野の狼』(臨川書店『ヘルマン・ヘッセ全集13』内収録)の感想

現代社会に適合できない知識人が悩むはなし。人生の敗北者と描かれ生活に幻滅する男が次第に狂っていく。かつての栄光は露知らず、不器用に生きる毎日。大衆化する中で、価値のあるものが薄れてゆく。そして自殺を連想させるカミソリに怯えるようになるまで…

ジョージ・オーウェル/新庄哲夫訳『一九八四年』(早川書房『世界SF全集10』内収録) の感想

一党独裁が行われている近未来の架空国物語。世界史の文化史あたりではソ連批判として解説されているので馴染み深い方も居られるのはないでしょうか。メディアと言語支配による完全な階級制度の固定化が行われている社会に対して疑念を抱いた一人の男が反逆…

ホーソン/鈴木重吉訳『緋文字』(新潮文庫)

イギリス植民地アメリカのボストンが舞台。プロテスタントの戒律の厳しい中における「姦淫」が題材となっている。主な登場人物は3人で、姦淫により女児を孕んだヘスタ・プリン、女を犯した牧師アーサ・ディムズデイル、ヘスタの元夫で老医師のロゥジャ・チリ…

ソルジェニーツィン/木村浩編訳『胴巻きのザハール』(岩波文庫『ソルジェニーツィン短篇集』内収録)

一人称回想小説。自転車旅行でのクリコヴォの戦いの古戦場について語る。 ・クリコヴォの戦い 1380年ドミトリー・ドンスコイがドン河流域で、キプチャク・ハン国のママイ大遠征軍を打ち破り、タタールのくびきに初の大打撃を与えた。 古戦場では記念碑を守る…

ソルジェニーツィン/木村浩編訳『公共のためには』(岩波文庫『ソルジェニーツィン短篇集』内収録)

初出は1963年『新世界』誌7号。舞台はソビエトロシアの技術学校。 おおまかな話の筋はこんな感じ。 手狭になった技術学校で新校舎の建設がなかなか進まない。そこで生徒たちも工事に参加し、努力した結果、ようやく竣工となった。だがしかし校舎引渡しは遅延…

ソルジェニーツィン/木村浩編訳『クレチェトフカ駅の出来事』(岩波文庫『ソルジェニーツィン』短篇集内収録)

そして、きのうの女たちがそうだったように、きょうも、夫を戦場へ送り出したばかりの若い人妻たちは、いや、娘たちも、みながみな操を守り通すことができずに、明りの届かない片隅で、若者たちと抱き合って寝ることになるのだろう。 舞台は第二次大戦中のソ…

ソルジェニーツィン/木村浩編訳『マトリョーナの家』(岩波文庫『ソルジェニーツィン短篇集』内収録)

だがマトリョーナは自分のものにしなかった…… 家財を揃えようともしなかった……品物を買い、そのあとで、自分の生命よりもそれを大事にするために、あくせくするようなことはなかったのだ。 舞台は1953年のソビエトロシア。一人称回想小説。 偏狭の地で数学教…

ソルジェニーツィン著/木村浩・松永緑弥訳『煉獄のなかで』(タイムライフブックス)

スターリン支配下のソビエトロシアにおける特殊収容所を描いた作品。 ソルジェニーツィンの創作態度の特徴として「一定の主人公を生み出すものではない」とされているが、話は収容所の中であるネルジンと収容所の外であるヴォロジンを軸として進んでいく。特…

遠藤周作『土埃』(新潮社『遠藤周作文学全集第五巻』)

東京の郊外(おそらく多摩?)に家を買ったはなし。都心に比べて空気も良くそれなりに気に入っているのだが、開発の為巻き起こる塵芥が家の中に入ってきてほこりが溜まってしまう点が不快だった。だが、その土地の歴史や地理を調べていくにしたがって、縄文時…

遠藤周作『雑種の犬』(新潮社『遠藤周作文学全集第五巻』)

遠藤周作の犬に対する価値観が見られる。『深い河』における犬の位置づけとよく似ていることから、この作品が受け継がれたのか?幼少期に大連に居た時にココロの支えだったのが犬という存在だったというわけだ。両親の仲が悪く、一緒に夕飯を迎えてもその雰…

遠藤周作『道草』(新潮社『遠藤周作文学全集第五巻』)

海外旅行でエルサレムに寄った夫婦のはなし。遠藤周作の夫婦観というものは結構現実的に辛いものがあって、他人が一緒に時間を過ごせば衝突ぐらいするわな。で、エルサレムに寄ったのは娘がミッション系の私立中学に通っているので尼僧の覚えを良くする為と…

遠藤周作『ユリアとよぶ少女』(新潮社『遠藤周作文学全集第五巻』収録)

時代設定は、秀吉の朝鮮出兵から家康の大阪の陣にかけて。 支配者に服従することに対して諦めを抱いた男たちに対し、決して屈しない少女ユリアの対比。 朝鮮出兵の戦乱で親兄弟を亡くし孤児となった鮮人の少女。少女は全てを諦め運命に従うしかないというか…

青島雅夫訳『ナルツィスとゴルトムント』(臨川書店『ヘルマン・ヘッセ全集』第13巻内収録)

○初出 執筆:1927年4月〜1929年3月 雑誌『新展望』に1929年10月〜1930年4月、『友情の歴史』という副題付で連載。 芸術家と神学者のそれぞれの対比される生き様と友情。 ずっとゴルトムントのターンだが、絶えず導くのはナルツィスであり、ナルツィスが修道…

遠藤周作文学全集第三巻(新潮社)を読んでる

『火山』(「文学界」昭和34年1月号-10月号) 『最後の殉教者』(「別冊文芸春秋」昭和34年2月号) 『従軍司祭』(「世界」昭和34年9月号) 『異境の友』(「中央公論」昭和34年10月臨時増刊号) 『あまりに碧い空』(「新潮」昭和34年11月号) 『再発』(「…

遠藤周作『イヤな奴』(新潮社『遠藤周作文学全集第三巻』)

初出:「新潮」昭和34年4月号 舞台は戦中。戦時動員のためカトリックでなくともキリスト教の寮に入寮させられるようになった時代。主人公の江木は、肉体的な恐怖や権威を感じるとすぐに自分の信条を曲げてしまい相手に媚び諂う癖がついていた。彼はそんな自…

遠藤周作『黄色い人』(新潮文庫) の感想

キリスト教を裏切った二人の人物が主人公。 カトリックの感覚に対する日本人の無感動な光が漂う目を代表する千葉。 憐憫に駆られて情欲し司祭の立場でありながら女を犯した背教者デュラン。千葉がブロウ神父に送った手紙という方式で描かれ、その中途中途に…

遠藤周作『深い河』(講談社文庫)の感想メモ

5人の登場人物のオムニバス方式で、インドのガンジス川に向けてそれぞれ集まっていく。 客観的に見れば単なる老若男女だけれども個人個人うちなる悩みや事情を内包している。 妻を亡くし輪廻転生に苛まされる磯辺。 キリスト教及び既成の倫理観に反発を抱く…

ヘンリー・ジェイムズ『ねじの回転』(新潮文庫)

暇つぶしがてら読む。 家庭教師に派遣された女性が、お邸で兄妹の勉強をみることになる。 だが、その邸には前任の家庭教師と下男の亡霊がでて子供たちを引き摺れようとしていた。 女家庭教師は亡霊と奮闘する。話は最後まで語られず、亡霊に打ち勝ったのかど…

ツルゲーネフ/神西清訳『はつ恋』(新潮文庫)

ツンツン系お嬢さまに惚れるが、何人ものオトコが存在し手玉に取られながらも、初恋の葛藤に苦しむ。 しかも、自分の父親がその女性を奪い取るという展開。 ほんの束の間たち現れた私のはつ恋のまぼろしを、 溜息の一吐き、うら悲しい感触の一吐きをもって、…

ヘッセ/高橋健二訳『クヌルプ』(新潮文庫)の感想

ヘッセの小説は主人公がアウトサイダーなものが多いので、大好きです。 『クヌルプ』もご他聞に漏れず、主人公はアウトサイダー。定職に着かず放浪しながらも、旅人としての天分により旅先ごとに定住者に暖かく受け入れられる男:クヌルプ。職を持ち家族を持…

中島敦『狼疾記』(ちくま文庫『中島敦全集2』内収録)の再々読をしてみる

再再再読くらい。初めて読んだのは浪人の時。確か世界史の講師が中国史で『李陵』を紹介し、そのまま三省堂に逝って購入した岩波文庫版のに入っていた。浪人時代のことを思い出すと、あれほど勉強したのに地元駅弁大学だと思うと涙が出てくる。当初は、この…

武田泰淳『富士』(筑摩書房『武田泰淳全集第十巻』内収録)の感想

精神科医でありながら精神を病んだ大島が、その元凶を手記で回想する。 第二次大戦下、富士山麓における精神科病院が舞台。 実習生である大島が、様々な精神病患者や治療スタッフとの関わりを通して人間集団に横たわる狂気に狂って逝く様が読みどころ。 個々…