ヘッセ/三宅博子訳『東方への旅』』(臨川書店『ヘルマン・ヘッセ全集13』内収録)の感想

東へ旅をするんだよ。時代も空間も超えた。そんな神秘宗教団がありました。H・H はその神秘宗教団に入って東を目指すのだが、旅の途中で所属していたグループが空中分解。志半ばで、旅を諦めてしまうのさ。それからの人生はどうだ?無味乾燥な生活を送る毎日。そうこれは、世界大戦を経験し日常が変革してしまった人たちに通じるもの。所謂、大きな目標を見失った時の喪失感。存在意義の不明瞭。自己の存在を取り戻すために、旅の過程を記さんと筆を取る。だがしかし、なかなか表現することが出来ずに迷う迷う。彼は信じていた。自分だけが信仰を裏切らなかったと。しかし、そんなことは大きな間違い。H・Hは教団に再び合い間見え信仰を示さんとするも、結局、教団はありのままあり、H・Hが教団を裏切ったにすぎなかったことを知る。全ての苦しみ、苦悩は彼に科せられた試練だったというわけさ。

絶望は、人生の生を把握し、正当化しようとするあらゆる真摯な試みの結果なのだ。絶望とは、生を美徳で、正義で、理性で耐え抜き、生の要請に答えようとするあらゆる真摯な試みの結果なのだ。