Volume7|ボリュームセブン 攻略メモ03「真世界編」の感想・レビュー

世界は一握りの人物により作られている。
SFに良くある進んだ技術革新による世界の掌握は権力者を慢心させ大衆を操る。
そんな現状に対し、持続可能な発展を求め調和を目指すカームの世界があった。
その一方で、一部の特権階級による箱庭の中とその混乱を望むパームの世界があった。
望ましき世界とは何なのか。どうして混沌を望むのか。世界のあり方とは何なのか。

世界設定と物語の背景

十丸と梗香の役割


情報革新による未来予測と情報操作による作られた世界。その世界の実情を知ったものは、世界を操る真世界の領域に踏み込むことが出来る。精神壁によって内世界と外世界に隔てられる現象や時間逆行は人類の科学が生み出したものであった。そんな中、未来予測の効かない不定因子をもった人々の存在が現れる。その不定因子とやらは誰もが持っているものだが、症状の具合によりランク付けされて隔離なり監視なり国家権力の介入を受けてきた。十丸と梗香もその不定因子のひとつ「遺伝不定因子」を持ち、二人が性交をした子どもは神にでも悪にでもなる可能性があった。そのため二人は記憶を消去され続けてきた。だがその行為に対して人権侵害を唱える偽善的権力者も多く、様々な条件を代価として与え、その偽善欲求を満たした。つまりは「記憶を消した上で二人を傍に置かせ、その状態で記憶が戻らないければしょうがない」という代価をふたりに承認させることであった。だが、出会うたびに二人は好感度を積み重ね性交に成功してしまう。そんな二人のDNAを利用して世界の混沌を求めたのがヴァレンティナであった。謂わば十丸と梗香の、息子と娘が世界の荒廃の一面を担うことになる。エディプス期に特有な父子対決母子対決をしながらも、結局は和解し、協力して破滅へ向かう世界へと立ち向かう!!そう考えると、壮大な反抗期だ。


物語の黒幕ヴァレンティナを刹那的な享楽と混沌から救う


世界を操る黒幕がロシアな人のヴァレンティナ。彼女は複数不定因子を抱えつつも権力の掌握に成功し、自分の不定因子についての情報は全て抹消、世界を牛耳る。彼女の根底にあるのは「享楽」としての不定因子。秩序だった未来予測に基づく世界を混乱と混沌に陥れることだった。未来予測に反する不定因子の登場により、予測した世界が乱れることが享楽となっていた。そのためにこの物語における登場人物たちは皆、利用されてきたのである。作られた世界に対して抑圧された人々が市民として権利を要求しよう立ち上がるクーデターとは異なり、全てがどう転がってもヴァレンティナの思惑を外れたものになればいいとして、掌の上で煽動されたこと。もしかしたらヴァレンティナ自身が救いを求めていたのかもしれん。そのためにこのような大きな事件を引き起こしたのだと。そんなヴァレンティナを救ったのがかつての部下で対人不定因子を持つ由梨江。由梨江は対人不定因子もとで他人とのコミュニケーションが上手くとれないようになってしまったが、茉莉のサポートの下で人との絆を認識していく。茉莉との絆にうまれたコンビネーションが見事ヴァレンティナの享楽願望(刹那的な思いつきで行動を起こし、自らも含め、すべてを巻き込み、その先の未来など考えずに、己の欲望を満たそうとする願望)から彼女を救い出すのであった。


世界のあり方


徹底的に管理された上での社会。そこは一見すると何事もない平和な世界かもしれない。しかし情報操作の下、無意識のうちに思考が統制化され画一的になっていく。個人情報はすべて管理者に筒抜けで既成の世界に反するものは早期に排除されるという仕組み。そこにはヒューマニズムなど存在せず、既得権益の護持のための変化のない世界が転がっていた。それにいち早く飽きてしまったのがヴァレンティナでその世界を壊してしまおうとする。その世界を救ったのが個人同士の絆、個人と個人の2人の絆。2人の絆から発するみんなの絆。世界は機会演算な未来予測の管理社会では出来ては居ない。そしてエピローグで十丸の口を借りて、ライターさんが望む世界観のテーマが晒される。

世の中全てに完璧を求め、先を知りすぎてはこの現在が崩れてしまうかもしれない
大切なのは見えない明日を恐れることではなく
過去を省みつつ自分に何が出来るかを考えながら明日に続く道を探す
そんな中で失敗や成功を繰り返し、少しずつ、確実に――――。
目の前の一歩を進んでいこう。
――――それが、一番良い未来につながるはずだから。
そう信じて。