神様になった日 第9話「神殺しの日」の感想・レビュー

興梠博士はブレインチップを開発、佐藤ひなの脳内に埋め込むことで不治の病を治療した話。
能力に依存することでしか存在証明できない鈴木央人は佐藤ひなの秘密を暴いてしまう。
人類の手に余るオーバーテクノロジーは危険視されブレインチップは除去されることに。
世界の終わりとは普遍的な終焉ではなく佐藤ひな個人の終わりを意味していたのである。
泣きゲー展開だと身障者になったひなを仲間たちが介護していくハッピーエンドオチかな?
佐藤ひなの両親は挫折してしまったが、個人でも家族でもなく社会的連帯で愛を貫くエンド。
世界か個人かの二者択一のセカイ系に対し「終わった世界」を仲間と生きるという解を示した。

佐藤ひなの「奇跡」の夏休みは社会的連帯を生み、終わった世界を生きる糧となったのだ

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  • 設定回収編~佐藤ひなが称する「神」としての存在と「世界の終わり」~
    • 今回の放送では佐藤ひなが称する「神」とは何を指しているのか、「世界の終わり」とは何を意味しているのかが明らかになりました。不治の病により四肢の自由さえ無かった佐藤ひなでしたが、興梠博士が開発した量子コンピュータブレインチップを脳内に埋め込むことで、その病の克服に成功します。その副産物として情報操作に長け、まさに「全知」の存在となったので、「神」と自称することになったのです。またその「全知」の能力をもってしても30日後の未来が見えなかったため、佐藤ひなは「世界の終わり」と考えていました。しかし未来が見えなかったのは「佐藤ひなの世界」が終わるからというオチだったのです。
    • 佐藤ひなの秘密を暴いてしまったのが鈴木央人。ここでは児童虐待により親からの愛情が欠落してしまったため自己の存在証明の手段として能力に縋らざるを得なかった鈴木少年の苦しみが描かれていきます。能力を示すことでその逆境を乗り越えてきた人間はとても危うくて、能力が示せなくなったらアイデンティティ拡散の危機で精神崩壊待った無しさ。鈴木央人は自分のちっぽけだけれども巨大な自己意識を守るため、佐藤ひなの秘密を暴いてしまったのでした。佐藤ひなは何もそのオーバーテクノロジーを用いて世界を危機に貶めようとはしていませんでした。しかし鈴木央人の行動により佐藤ひなの幸せは粉々に砕かれてしまうことになるのです。

 

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  • 終わった世界で生きること
    • 鈴木央人は自分のしてしまったことが小さな女の子小さな幸せを打ち砕いたことを後悔し、せめての報いとして情報を知らせます。これを受け取った佐藤ひなは「世界の終わり」の意味を理解するのです。佐藤ひなのブレインチップは取り除かれることが決定し、権力者のエージェントが襲い掛かってきます。仲間たちの助けにより最後のひと時を過ごす時間を得た主人公と佐藤ひな。じぃじ以外からの愛情を知らない佐藤ひなはどうして皆がそこまでしてくれるのか理解できません。そんな佐藤ひなに主人公の愛情が降り注ぎます。佐藤ひなに助けられて映画撮影のメンバーに加わった仲間たちも、なにも恩義だけで集まったのではなく、ひなのことが好きだから集まったのだと諭されます。社会的連帯の発動です!!連れ去られる寸前でその愛情を理解することができた佐藤ひな。そんな佐藤ひなは最後に主人公の事が好きだと告げるのでした。「奇跡」の夏休みは全く意味がなかったのではは無く、佐藤ひなを中心とする仲間たちの絆を育んだのでした。
    • 泣きゲー展開の予想だとこの後、佐藤ひなからブレインチップは除去され、また元のような身障者に戻ってしまう事でしょう。CLANNADまでのKeyだったら主人公が佐藤ひなに献身的な愛を捧げるも、介護疲れに陥りバッドエンドになったことでしょう。しかしKeyはリトバスにより仲間たちとの社会的連帯という表現技法を手にしているはずです。個人でも、家族でも乗り越えられなかった問題に仲間たちで取り組んでいくことができるはずです。「個人(佐藤ひなの世界)」or「世界(普遍的な世界)」というセカイ系の二者択一にどのような答えを示すかが『神様になった日』に求められている課題でしたが、「終わった世界で生きていく」という解が示されたのでした。
    • あと鈴木央人の頭につけられてる演算補助装置?が今回伏線としてクローズアップされていたので、興梠博士のブレインチップまでとはいかなくとも、一定程度佐藤ひなにも救いがあるんじゃないかなと思っています。

 

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