LAMUNATION!(体験版)の感想・レビュー

ぶっ飛んだバカゲー。人を選びそうだがテキスト構築における新たな文章表現の技法が試みられており評価できる(あくまでも個人的には)。
紙芝居ゲーとしては新感覚。思いついたことの垂れ流しの様な文章でシナリオが構築できるか?という挑戦である。
面白くもないネタや勢いだけのテキストが怒涛のように押し寄せてくる中に物語の核心が混ぜ込まれているのだ。
キャラを可愛くみせようとか、テーマ性を扱おうとか、そういう次元の上にあるものを見せられている。
「インターネットによるミーム拡散」を題材にしながら、さらにそれをメタ的にしてシナリオをぶちまけてくる!!
インターネットミームはみあよぞの幼馴染A√・声有りナレーションは野良猫ハートで扱われましたな。

雑感


  • ツイッターの様な垂れ流し的テキストを寄せ集めてシナリオを構築できるだろうか」という試みなんだよな?
    • 紙芝居ゲーとして新感覚のように感じるのはなぜでしょうか?それはライター(もしくはメーカー)が、読者に対し、わざとツイッターのような「ユビキタス社会における垂れ流しの情報発信」を意識させるように表現しているからです。そのためテキストは垂れ流された文章の羅列の寄せ集めで構成されており、分断されたエピソードが束になっているだけ。しかしそれを統合しているのが野良猫ハートでも用いられた表現方法「声有りナレーション」なわけです。キャラたちが勝手気ままに動いている一見無意味な様子を、読者が理解できるように解説することで、垂れ流し情報に意味を持たせているのです。これによりなんだかよく分からないノリだけのテキストがなんだか意味を持っているように感じられるため、投げずに読めてしまうのですね、すごい。基本的にはお馬鹿な展開が多いのですが、さりげなくシリアス描写というか物語を動かす核心的な内容が込められており、そこに読者は惹かれるのでしょう。



  • キャラクター表現について
    • 主人公くんは昼行燈のように描かれており、有事の際には俺TUEEEするいわゆるギャップモノ。バトルアクションもあるので大活躍。しかしながら性的不能者でありメインヒロインが肉欲を抑えきれず主人公くんとセクロスしたがっても平然とスルーします。周囲のサブヒロインたちは主人公くんに好感度マックスながらメインヒロインとの情交を大切にしており、二人がくっついた後に側室としてハーレム入りすることを望んでいるのです。そんなおり伏線として張られているのが主人公くん女性説話。過去回想シーンで妹からお姉ちゃんと呼ばれていたり、真ヒロインであろう魔法使い?的な存在がちょくちょく出てくるところにフラグが立てられています。ヒロインたちは総じて感性がぶっ飛んでいるのですが、なかでもメインヒロインは顕著。おそらく当初はイケメン女子設定だったのでしょう。その匂いが残存しているところもあるのですが、基本的にはボケ側というかイジラれ系というか。汚物をまき散らしたり、主人公くんを想いながら泣きながら自慰行為に耽っていることが筒抜けになっていたりとか。しかもそれがライターさんの狙い通りに魅力的になっているのでスゴイなぁと思わされてしまいます。あと「ラムネの瓶を空に透かして見る」という行為が象徴的であり、それがシナリオにおいて有効に機能していて、見どころとなっているかと思います。



  • 物語の内容について
    • 普段だったらこれを真っ先に書くのが私の感想スタイルだったのにそれを覆すくらいテキスト構築が斬新だったのです。そんなわけで物語の内容について。主人公くんたちが過ごす学園はグローバル資本主義絶頂の大企業による超実践主義教育が行われていました。卒業を控える主人公くんたちは、進路を考えなければなりません。メインヒロインは家業のラムネ工場兼販売店を継ぎたいのですが、斜陽産業であることから両親に反対されているのです。そのため家業を勃興させることがメインヒロイン√の主題となっています。当初ヒロインはB級グルメコンテストに応募することで知名度を上げようとするのですが、これは第二次抽選で外れてしまいます。落胆しながら強がろうとするメインヒロインを周囲が本音を晒せよと受け入れてあげるところは結構すてき。そんなわけでメインヒロインはサブヒロインが経営する小洒落たアメリカン的?飲食店の歌姫となり、コラボしてラムネを売ることになったのです。地場産業勃興物語のはじまりはじまり。ここで印象深いのがインターネットミームを利用していること。いわゆるツィッターなどのSNSによる情報の拡散。主人公くんたちが炭酸飲料で乾杯する画像をラムネーションすると名付けてwebにアップするとそれが瞬く間に拡散。ラムネの瓶もとってもキュートということで海外から高評価を受けて体験版はお開きとなります。インターネットミームを題材としたシナリオは最近のものでは『見上げてごらん、夜空の星を』の幼馴染A√が挙げられますね。SNSによる社会的連帯を説く内容でしたが、『みあよぞ』ではせっかくの天体観測というテーマがどっかいってしまったのが残念なところでした。『LAMUNATION!』ではラムネの良さや価値観を再発掘し、SNSで拡散させて、新たな需要を掘り起こすことが目的となりそうなので、期待できるかもしれない。