静岡県立掛川西高校世界史教室における1967年度からの歴史的思考力育成の実践。
実践の帰結点は「主題学習の日常化」。
1)「主題学習の日常化」
- 「世界史」における主題学習の位置づけ
- 主題学習は、歴史的思考力の深化をなす場であり、歴史の理解への接近を可能にし、主体的な歴史建設の意欲を喚起する。
- 主題学習=歴史的思考力の育成=「世界史」の本来的な目標に達するための必要条件
- 西川浩による歴史的思考力育成の実践の帰結点
- 世界史学習において「細分化された主題」を導入した「主題学習の日常化」
- 「細分化された主題」を導入した「主題学習の日常化」とは何か
- 歴史的思考力を「レジュメ、講義、資料、大・小課題」における教材内容の層構造化を媒体として意図的に育成しようという試み
- 「レジュメ」:授業前の段階において学習内容の要約、略年表、資料、重要語句などを加えたプリントを配布する。
- 「予見」:レジュメの自主的な学習によって学習場面について認識する。
- 「講義・資料の提示など」:授業による展開。
- 「課題」:学習内容の中核部分を叙述させる。
- 思考の層構造の背後には、教材内容の層構造がある。
- 「直接的因果関係の把握から間接的な因果関係の把握、すなわち歴史の理解」へと教材内容を構造化するとき、それに対応して思考力を深化させることができる
- 因果関係の中心を「縦断的・横断的」に類別し、両者に関して「直接→間接」へと「小問題・、大問題」を含めて教材内容に意図的な配慮を加えることによって、歴史的思考力へ迫る。
- 歴史的思考力を「レジュメ、講義、資料、大・小課題」における教材内容の層構造化を媒体として意図的に育成しようという試み
2)「レジュメと大・小課題の叙述」を中心とする授業方式の実践例
- 「レジュメと大小課題の叙述」=主題学習の細分化・日常化
- 「大課題=西ヨーロッパにおける絶対主義の構造について」
- (0)レジュメ:「大課題」を生徒の個人差に即して「予見」させる
- 井上幸治編『世界各国氏?フランス史』山川出版における「絶対主義とは何か」の文章を圧縮し傍線部で設問を加えた「プリント」を授業前に生徒に与える。
- (1)小テスト:「プリント」の自主的学習成果を確認する
- i .身分制議会とそれを成立させている社会関係
- ii .富裕市民、富農層の動向とそれが果たした役割
- iii.国王と貴族・富裕市民との関係
- (2)「予見の検証と修正」
- 小テスト後「プリント」中の傍線部の設問を指名発表させ補足を「講義」という形で与える
- (3)「大課題:西ヨーロッパにおける絶対主義の構造について」の叙述
- 絶対主義時代において、それを成立させている諸因子の関連を横断的に捉えて叙述させる。
- (4)思考のいっそうの深化
- 叙述後「自他の比較」により「予見の検証と修正」を深め、思考の深化が「自己が叙述した大課題」(=きわめて身近な具体的題材)に即してなされる
- (5)縦断的な関連
- 大課題の叙述において横断的な関連についての思考を深めたので、年表に基づいて絶対主義の歴史的位置付けを再確認し、横断的・時系列的に捉えなおす。
- (0)レジュメ:「大課題」を生徒の個人差に即して「予見」させる
3)叙述をさせた結果
- 羅列的・平板的な次元=直接的把握に始終することが多く、他との関連において把握することや関連因子の不足は、立体的・構造的な把握=間接的な把握の分野において配慮すべき余地を残している
- 今後は、教材内容の層構造化に務め、思考の層的深化を誘発しなければならない。
- 縦断的・横断的に関係把握の環を拡大すること、すなわち直接的把握から間接的把握へと教材内容の層構造化に即して拡散させることによって、歴史的思考力の深化、生徒の能力向上に資することができる