「揺れる大国 プーチンのロシア 失われし人々の祈り 〜膨張するロシア正教〜」 の感想

宗教によって国民統合を強化し強いロシアを生み出そうとするプーチンのおはなし。
共産主義下では徹底的に弾圧されたロシア正教が、現在は共産主義イデオロギーの代替となっている。
ロシア正教が統一強化の装置となり、愛国心を醸成している。

共産主義体制崩壊後、市場経済が導入されロシアはオイルマネーで高騰したが、それは深刻な格差社会をもたらした。分裂しかけたロシア、貧困層は麻薬とアルコール中毒となりホームレス化したが、そんな貧困層セーフティネットワークとなったのがロシア正教だった。共産主義下では宗教や伝統が徹底的に破壊されたがソビエト崩壊後は次第に復活。プーチンの2000年大統領就任時にもロシア正教の宗教的イデオロギーを利用し、ロシア統一の強化の手段として教会を重要視した。聖ハリストス教会はじめ信徒集団「オプシーナ」は慈善活動を行ない貧困層を救い、貧困層が縋る対象となった。ロシア正教プーチンの政策は結びつき、宗教を重要視するプーチンは偉大という展開になる。ロシア愛国心は盛り上がり、軍事愛国団とロシア正教が一枚岩となり強いロシアを生み出していく。共産主義下の教育を受けた知識人階層はなかなか宗教を受け入れらないが、深刻化する経済状況が精神を圧迫し、救済として宗教に助けを見出していく。つまりは貧困層と知識人階層を取り込むことに成功しているのだ。強いロシアを生み出すため、ロシア正教を利用し新保守主義ナショナリズムを昂揚させながらプーチンのロシアは進んでいく。