この文章の趣旨
- 社会科教育において国民的アイデンティティに関して問題になっていることのまとめ
(2)社会科教育の目的と国民的アイデンティティ
1.アイデンティティ形成に関わるべきか
- 社会科=科学的謝意認識の形成とする立場
- いかなるものであれ諸個人に委ねられなければならない
- 社会科=公民的資質の育成とする立場
- アイデンティティ問題に介入せざるを得ない。
2.アイデンティティの対象は社会か国家か
- コミュニティを対象に市民としての自覚を育てる=初期社会科
- 「民主主義社会の建設にふさわしい社会人」の育成
- 1.個人の人格の発展/2.家庭学校地域における相互依存関係理解/3.社会的判断能力の育成
- 「民主主義社会の建設にふさわしい社会人」の育成
- 国家(ネイション・ステイツ)を対象に国民的自覚・日本人としての民族的自覚を養う=1958年以降社会科
- 1958年版小学校社会科
- 「先人の業績や優れた文化遺産を尊重する態度、正しい国民的自覚をもって国家や社会の発展に尽くそうとする態度」の育成
- 1977年版小学校社会科第6学年
- 「世界の中の日本人としての自覚」
- 1989年版高等学校地理歴史科
- 「国際社会に生きる日本人としての自覚や資質」
- 1958年版小学校社会科
- 日本単一国家論、単一民族論と関わるのでいつも問題になる。
3.アイデンティティ形成の方法は愛国心か批判精神か
(3)社会科の内容と国民的アイデンティティ
1.国旗・国歌をどう扱うべきか
- 学習指導要領においては国旗(1958年版)、国家(1989年版)、国旗と国家についての意義を理解し尊重する態度を育てる(1998年版)
- 国民的大衆レベル(オリンピック・ワールドカップなど)は本質的な議論をしなかった。
- 学習指導要領で「内容の取り扱い」において一方的に尊重する態度を植え付けようと示しているのは、社会科教育のあり方として問題。
(4)社会科教育の方法と国民的アイデンティティ
1.通史教育は客観性を担保できるか
2.人物学習の方法はいかにあるべきか
- 人物学習は、社会認識の原理としての理解として、当事者(歴史上の人物)の立場に身を置いて、その行為の目的や意味を共感的、追体験的に分かろうとする方法。
- 故に、国民的アイデンティティの観点から取り上げる人物をめぐって対立する。
- 学習指導要領においては系統的歴史学習の導入を契機に人物学習が復活
- 1958年版:「歴史上の人物を取り上げて指導する必要がある」(小学校6学年)。しかし同時に「時代的背景から遊離した取り扱いや人物中心の学習にのみはしりすぎない」ように条件付けられる。
- 1968年版:学年目標に人物の扱いが位置づけられる
- 1989年版:取り上げるべき42人の人物が例示
- 歴史学習で人物を取り扱うにしても、個々の子どもが主体的に社会や歴史の見方を獲得できるような学習論を採用すべき