秋永雄一「階級と文化」柴野昌山他『教育社会学』有斐閣ブックス 1992年 143-163頁

1.研究の目的と意義

  • 目的と意義
    • 日本において「階級」という言葉にリアリティが生じたのかを明らかにするために、欧米と日本における「階級」イメージの共通点や差異について考える。

2.研究方法

  • 1節:「階級のイメージ」
    • 階層意識の研究:原純輔、安田三郎、ディヴィス
  • 2節:「階級と文化」という問題
    • 英:教育機会の階級間格差;バーンスティンのコード概念、ウィリスの社会秩序の再生産論
    • 米:エスニシティ区分;コールマンの教育機会、ラボフの言語使用、コリンズの身分集団
    • 日:藤田英典の階層間における生得的知能差、中野由美子の子どもの言語差における地域性
  • 3節:差異化原理と階級・文化

3.研究結果

  • 1節
    • 日本では「階級」ということばを経済的要因に結び付けてとらえる傾向が欧米よりも強い
    • 1980年代以降の日本では、人々が生活様式の面での微妙な差異のなかに社会的区分の原理の現れを敏感に感じ取る
  • 2節
    • 生活様式の面での差異がイギリスでは「階級文化」、アメリカでは「エスニシティ」ということばによって表現されるが、日本においてはそれと同等の言葉はない。
  • 3節
    • 日本における人々の社会的区分の原理を解明するには全体的な構造を示すような見取り図を描かなければならない

4.考察

  • 階級は実在するものではない
    • 人々の間の社会的位置関係の遠近を一定の基準に基づいて示した「階級」は、理論上のもの。紙の上のもの。
    • 「紙の上の基準」に訴えかけて人々を糾合・動員し、集団としての力を社会的に行使しえたとき、はじめて階級は実在するようになる。
    • 人々が占める社会的位置を全体の布置連関の中で関係的にとらえ、特有の性格は本質的ではなく他との差異関係から規定されるとみなす。
  • ハビトゥスとプラティー
    • ハビトゥス:人々の個々の好みに一貫した選好の傾向性を与えるもの。選好の体系。一見してバラバラな「好み」に全体的な統一性を与える
    • プラティーク:慣習行動
      • 個々の「好み」にどのような意味付与がなされるかは、他のものとの差異関係によって定まる
      • 慣習行動の選好の体系に対して、他の選好との社会的関係からイメージが付与され、本来的に備わっている特性としてみなされる。
      • ex.サッカー⇔ゴルフ・テニス・乗馬・クルージング  ∴サッカー=単能工
  • 「全体的な構造」を示すような見取り図を描かなければ、フランスと日本でどの点がどのように異なっているかは見えてこない

5.質問

  • コードとは何か?(p.152)

6.議題

  • 仏人にとって「上流階級」「中流階級」「下層階級」という表現がなぜリアルであり、日本人とってはリアルでないのはなぜか
    • 階級対立を覆い隠す装置「日本型雇用形式」→近年の格差社会は所謂「柔軟な雇用政策」による。
    • 性的役割分業における男性エリートの大衆化