国史概説004 近世史を考えるには

そもそも「日本」とは何か?

  • 日本史の中で近世史がどのような特質を持っているのか?
    • 身分の問題。日本近世史のなかで身分制度の問題を触れる。
    • 日本の近世社会がもった特質にもつながる。今日は俯瞰的な話 そのあとは身分制度としての近世のはなし。
  • 「日本」とは何か
    • 日本というと色々な日本がある 日本というと何が思い浮かぶか?
      • 日本列島、日本語、日本国、日本民族などなど
  • 日本史は何を対象とする学問なのか? 
    • 日本国の歴史?、日本語をはなすヒトたちの歴史?などなど。それぞれがぴったりあっていない
  • たとえば日本の国の範囲 → 時代によって伸びたり縮んだりする。
  • 日本列島として考えた場合
    • → サハリンから与那国島まで環日本海までをさす 地理的な範囲。
    • しかし、日本列島の範囲と国家としての日本の範囲は必ずしも合致しない。
    • 住んでいる人々、文化、言語を考えた時に、日本列島に暮らしてきた人たちはずっと一つだけの文化で推移してきたわけではない。
  • 伝統芸能では頭に思い浮かびますか? → 学生「キモノ」 
    • じゃあ日本食は? → 学生「にくじゃが」
    • 日本食とかキモノ他に言い方はありませんかね? 和食、和服、とかいいます。
    • 「和」ってなんだろう?「和」って?日本なんだけど「和」
  • 和風≠琉球・沖縄、アイヌ
    • 沖縄は日本に入るのかどうか。
  • 和文(和語)≠琉球・沖縄、アイヌ
    • 当然一つではない。日本史学の日本。その射程をどこにするか?暮らす人たちの歴史を考える場合では一つとは限らない。
  • 縄文土器をとっても一様ではない 多様性がある。弥生時代になると→北の文化、中の文化、南の文化に分れる
    • 和風とかは中の文化の伝統 沖縄琉球は南の文化 アイヌの文化は北の文化の伝統
    • 日本列島を覆ってきているわけですよ 四季があるイメージは本州四国九州→常緑広葉樹林帯の文化!!
    • 四季も政治性やイデオロギー性を帯びた 美しい四季ってのは誘導されている。
  • 縄文文化は中の文化の専売特許ではない 
    • 縄文文化が北海道や沖縄と同じだから同じ日本だというのはイデオロギッシュ! 都合の良い解釈
    • 日本史で旧石器時代が語れるなら アイヌ史でも語れる 日本史を全体的に考える
    • 日本史を考える上では、北・中・南を考える
  • 江戸時代というのはどういう時代かというと・・・
    • 中の文化の伝統が北や南の文化に本格的にチョッカイを出し始めた 政治経済的に それが江戸時代近世 
    • 琉球アイヌを従属させ 近代でそれを正式化した 

国家としての日本

  • 大和王権 継続性がある 
    • なんで継続性があるといえんの? → 天皇いるから
    • 律令制、中国の律令制度学んで 日本の律令制度作る 奈良時代8世紀 そこで作られたシステムが時代変わってもシステムとして継続し続ける
    • 江戸時代まで朝廷存続してる。近代でも太政官制度とか作られてる。
    • 形骸は現代社会迄続く 例えば「正六位」→小学校の校長先生が亡くなると与えられる 律令制の「位」今でも使ってるんです日本はね。律令制度は形骸してても現代まで継続
  • 地方有力者の位置づけ その1
    • 事実上 律令制国家とかありますけど 地方の有力者 このひとたちをどういう風に編成していくのか これが時代を通じて継続していく
    • 中国や朝鮮と日本がちがうのはここ 中国朝鮮では科挙があり郷紳がいる 中央の宮廷の高官に昇り詰めていく 地方から中央への窓口が存在してた
    • 日本はまったくそれがなかったのです! 現代は誰でも国家公務員なれるんだけど 前近代までは中央の貴族が官職を独占する 
    • 明治維新で摂政関白廃止したのは画期的だったんですよ
  • 地方有力者 その2
    • 地方の有力者をどういう風に編成? 公地公民失敗→大名田堵→武士団の編成→地方有力者抬頭→中央勢力と対立→幕府作る→幕府を構成した侍たちが構成員となってまたもや中央権力をつくる
    • 豊臣秀吉は例外中の例外
      • 上記のループを断ち切ったのが豊臣秀吉 太閤検地が画期的 地方に大きな力を持った有力者がでないようにする仕組み
      • 一地一作人の原則(小農自立)

時代区分のはなし

  • 前近代と近現代の区分は何で区切るか
    • グローバルスタンダートを受容したかしなかったか
  • 【前近代】
    • 先史  
    • 古代(飛鳥・奈良・平安) 奴隷制 
    • 中世(鎌倉・室町・安土桃山) 封建制
    • 近世(江戸) 早期近代
  • 【近現代】 
    • 近代 
    • 現代
  • 前近代の時代区分は政権所在地 
    • 日本国の政権の中心がいたところ
  • 中国の時代区分
    • 「封建時代」と「近現代」
    • 辛亥革命より前後 皇帝がいたかいないか
  • グローバルスタンダード 
    • →具体例 前近代(江戸時代)は大老(政府高官)がちょんまげ+和服 近代になると断髪令 
  • ふんどし
    • 陸軍 軍隊は近代の象徴なのに 下着はふんどしだった。 
    • 教授の祖父は陸軍大佐だったが死ぬまでふんどしだった。前近代をひきずったまま。

社会構造の転換からみた近世

内藤湖南
  • 応仁の乱区分説
    • → 今日の日本を知るためには「応仁の乱」以後 応仁の乱以前は異文化だ! →古代の日本文化とは違う 応仁の乱まえは竪穴時期住居 
    • 和風文化の成立が応仁の乱前後!!
    • これたいへん重要なんですね アイヌ文化が成立したのは応仁の乱の時代位 それまでは土器を使っていた。
安良城盛昭先生の説。
  • 太閤検地 日本史を分ける一番大きい区分なんだ!! 
    • 安良城盛昭という研究者 1970〜80年代にかけて精力的に論文を書いてきたわけですね
    • 封建制度鎌倉時代に成立したんじゃなくて 太閤検地で成立したんだ! 地域構造からみた場合は鎌倉時代には封建制度なかったんだ
  • 唯物史観の考え方
    • 原始→奴隷→封建→資本 
  • 豊臣秀吉太閤検地以前は奴隷制度 だから鎌倉時代封建制じゃない。
    • 奴隷制度 → 地方の有力者に隷属する 人身売買が一般的だよ 日本社会で人身売買が無くなったのは太閤検地から!
    • 地方の有力者は本家が分家を従えて農業をする 分家の人々は本家の当主の持ち物だ なぜならば本家の土地を耕して暮らしているからだ
    • だから分家の人々は本家の人々により売買できる 太閤検地はこれをやめさせた
  • 太閤検地は 一地一作人 小農自立 兵農分離(武士の城下集住) 年貢は一人の武士に払う これにより隷属関係を無くす
    • 単耕小家族が年貢を払う主体となった→自立した代わりに年貢を払う。地方の有力者の所有物ではない。
    • 人身売買はなくなり「年季奉公」の形をとる
    • 人身売買の怖い所は、子孫が全員、隷属する
  • 豊臣政権としては、太閤検地戦国大名の芽をつむことができる 
    • 税金も一元化して管理できる 全国一律で何万石という計算ができる
    • そのシステムを江戸幕府が引き継いで近世が始まる
その他の時代区分
  • 柳田國男
    • 木綿で時代区分
  • 高埜利彦
    • 元禄享保で時代区分。犬を食べるかどうかで時代区分。元禄時代では犬食ってたのに、享保期になって犬食え言ったら炎上して打ちこわし発生。
    • 認識の差。元禄時代文治政治→生類憐みの令が日本中を覆う→犬を食わなくなる→17世紀までは日本列島でも犬食ってた→けど江戸時代のある時代で犬食わないようになる→文化が変質する

江戸時代の画期性

  • 江戸時代は最後の前近代だったという事です
    • 吉田信之の例 前近代の結晶点 それが近世!!
    • 断絶面と連続面が分かるのが近世 
  • 次回は身分制の断絶面と連続面のおはなし。