11-1 ビッグバンと投資家・消費者保護
11-1-1 イギリスの「金融サービス法」と投資家保護
- 金融ビックバンを構成する二つの柱(図表66)
- ?各種の金融規制緩和・自由化
- ?投資家保護に関連した規制強化・法整備
- もし「?各種の金融規制緩和・自由化」だけが実施されると
- 激烈な競争戦が展開され、弱肉強食の過酷な経済社会が出現
- 地域社会に根ざした中小・零細企業や金融機関、個人、大衆投資家の破産、市場からの退場が進み、少数の巨大企業や金融機関の独占的な支配が強化される結果をもたらす
- 市場原理主義、大競争、収益市場主義を優先し、経済社会や地域社会からゆとりや暮らしの豊かさを奪い、国民生活の疲弊や社会不安を増幅する
⇒安定した経済社会を維持するには、資本力に任せた激烈な競争戦の論理とは一線を画する、別の次元と論理の政策展開が不可欠になる
- 「金融サービス法」(Financial Services Act 1986)
11-1-2 日本・揺れる金融トラブル対策
- 日本は規制緩和・自由化・競争の徹底のみを突き進め、個人投資家や消費者保護を置き去りにしてきた
- 1999年11月 財務省と金融審議会(財務大臣の諮問機関)は日本版「金融サービス市場法」の制定を検討していると公表
- 金融オンブズマン制度とは?
- 財務省と金融審議会で検討されたこと:金融商品の販売・勧誘に関連した法の整備
- 問題点:「販売・勧誘ルールは、本来、ルールが守られない場合の紛争手続き、補償体制と一体であるべきものだ」が、「金融審第1部会では、勧誘の段階で法令に違反した場合、直ちに監督当局が制裁措置をとることには慎重な意見が多かった」ために、罰則規定が欠けたままである(『日本経済新聞』1999年12月8日)
- 強引商法に対してペナルティがない法律では、せっかくの消費者保護法も、その実効性を欠くものとなる
- 問題点:「販売・勧誘ルールは、本来、ルールが守られない場合の紛争手続き、補償体制と一体であるべきものだ」が、「金融審第1部会では、勧誘の段階で法令に違反した場合、直ちに監督当局が制裁措置をとることには慎重な意見が多かった」ために、罰則規定が欠けたままである(『日本経済新聞』1999年12月8日)
⇒内容は、金融業界に寛容で消費者の利益は軽視され、その範囲も、わずかに「金融商品の販売・勧誘」問題に限定されていた
11-2 消費者信用と「カード社会」
11-2-1 経済発展と消費者信用の拡大
11-2-2 「カード社会」の利便性と危険性
- 「カード地獄」や「サラ金地獄」
- クレジットカードの利便性⇒自己破産の増大・多重債務⇒離職・離婚・家族崩壊などの深刻な社会問題
- カードによって買い物が出来ても、消費者金融から借金をしても、その最終的な支払いは、すべてなんらかの勤労所得に依存する(図表69)
- カードはマネーでなく、マネーを利用するためのスマートで手軽な道具に過ぎない
- カード利用を先行させ、将来の所得を先取りする過剰消費の社会は、厖大な債務の累積の上に築かれ、いつ破産するとも限らないリスクに満ちた不安定な社会となる
- 現代人には、クレジットカードの利便性と危険性についての的確な知識が必要とされ、バランスのとれたカード利用が求められている