はじめに
二.労働法と自己決定
- 西谷敏『規制が支える自己決定』(2004年);労働者の「弱い個人」が自らの熟慮と決断で行動する「強い個人」への期待
- 労働者を生存権実現の為の保護的措置の単なる客体ととらえることへの疑念
- 現実の企業社会において労働者の自己決定を語ることへ重要性
- 労働者の生活形態の個人化とそれに対応する要求の多様化
- 労働者の自己決定意識についての現実認識(自己決定の欠如)
- 「規制システム」における国家的法的規制の理念的基礎付け
- このような国家的規制は、使用者のみならず労働者の意志をも排除→どのように正当化するのか?
- 1)生存権理念は「具体的にいかなる意味において労働者の自己決定の制約を正当化しうるのか」
- 労働者にとって「真の自己決定」がなしがたい構造的な労使の力の非対等性に求められる=「労働者の自己決定の限界によって正当化される」
- 2)労働者保護法は労働者の「真の自己決定」をも否定するのではないか、その正当化はどうするのか?
- a)労働者が常に熟慮に基づいて自己決定するとは限らず、その決定が自己加害行為の性格を持つことがある
- b)労働者全体の人間らしい生活に不可欠のものである(適正な競争秩序)
- 1)生存権理念は「具体的にいかなる意味において労働者の自己決定の制約を正当化しうるのか」
三.社会保障と自己決定
- 菊池馨実;社会保障の目的を「個人が人格的に自律した存在として主体的に自らの生き方を追及していくことを可能にするための条件整備」と捉える
- 条件整備において尊重されること
四.自己決定と生存保障
1.社会法における自己決定論の意義
2.憲法二十七条一項と生存保障
- 憲法二十七条:勤労の義務=国は労働意欲を持たない者のために生存を確保するための施策を講ずる必要がない→社会保障に「貢献」原則
- 明らかに働けないことを立証できないものの、実際に働くことの出来ない人を困窮したまま放置する
- 「働くことができるとしたら働き提供する」ことを「倫理的義務として個人に課す」試み
- 問題設定「はたして、公的扶助システムを規定する法は、相互的な手続きのもとで、人々がみな受容し尊重するとしたら、そのもとで相互性が実現するようなルールであると言えるのであろうか」
- 「(1)働いて提供できるならそうしなさい(2)困窮しているなら受給しなさい」という条件ならイエス
- a:目的と実現可能性の対応関係:一人の個人の中で顕れる必要がない
- b:権利と倫理的義務との対応関係:義務は権利の剥奪という罰則を付帯されることがない
- 問題設定「はたして、公的扶助システムを規定する法は、相互的な手続きのもとで、人々がみな受容し尊重するとしたら、そのもとで相互性が実現するようなルールであると言えるのであろうか」