古矢旬「アメリカニズム ―「理念国家」の形成と変容―」『アメリカニズム』東京大学出版会 2002年 1-52頁

一 はじめに ― 問題の所在

  • 本章の課題
    • 新たな世紀をむかえた現在から、第二次世界大戦期、1920年代、そして一つ前の世紀転換期、さらにはアメリカ史の黎明期へと、合衆国史をさかのぼることによって浮上してくる「アメリカニズム」の重層的な構造を、合衆国の内側における歴史的過程をとおしてとらえなおすことにある
    • 問題設定
      • 合衆国の内側において「アメリカニズム」とは何を意味したのか
      • その意味は合衆国史を通してどのように変化したのか
      • いかにして合衆国の歴史的風土からみずからをときはなち、国際社会への普遍的通用力を獲得し、世界史に「アメリカの世紀」とよびうる時代を刻印しえたか

二 十九世紀アメリカニズムの歴史像

1 アメリカニズムの起源(1) ―「辺境」としてのアメリ
  • アメリカニズムとは何か
    • 起源=1781年、ジョン・ウィザースプーン:「英語」の一方言を指すための造語(アメリカ大陸における特有な語句や言い回し)
    • 18世紀末〜19世紀初頭:「合衆国に対する愛着や習慣」
    • ヨーロッパ中心主義からの派生
  • ヨーロッパという世界の中心からみた「辺境」
    • ヨーロッパ文明の普遍性・優越性を「未開の世界」に顕示しつつ、旧いヨーロッパからは自由であるという、二重の意味で「進歩」の橋頭堡
    • ヨーロッパ移民たちは、辺境にこそヨーロッパ文明の文明たるゆえんがもっとも鮮明に現れ、人類社会の進歩の先端に立つという自負心を抱く
    • アメリカニズムには、ヨーロッパ的な普遍性とアメリカの風土に起因する地方性が渾然一体→普遍主義自体が、地方的な基盤に立脚→アメリカは「例外」論
2 アメリカニズムの起源(2) ―「聖地」としてのアメリ
  • アメリカ人の自己イメージ
    • アメリカ神話の描いた世界は、人類にとって第一の機会がたそがれの旧世界のなかで悲惨な心配に終わったのち、第二の機会が神からあたえられて、新しい主導権のもとに再出発した」というもの
    • アメリカの意味は神によって選ばれた「聖地」(旧文明の「腐敗」と対置)←ニューイングランドのピューリタニズム
    • ピューリタン信仰のアイデンティティ独立戦争を経て19世紀までにはアメリカ文化に共有
  • ヨーロッパに対する警戒
    • アメリカ=「進歩」・「聖地」⇔ヨーロッパ=「腐敗」 、ヨーロッパを警戒するようになる
    • 19世紀以降のアメリカニズムが、ヨーロッパ的なものに対する排外主義→19世紀アメリカ外交に特有な「孤立主義」の背景に
3 アメリカニズムの起源(3) ―「理念国家」としてのアメリ
  • 「辺境」と「聖地」のメタファーの弱点
    • 「辺境」:「辺境」=浮動的存在→「文明」が「自然」を駆逐する速度が増す→国民社会を「辺境」によって規定することは困難に。
    • 「聖地」:ニューイングランドピューリタン世界を、現世的利益を動機とし力で拡大する「大陸国家」と重ねられない。
    • アメリカ革命の政治理念・新しい政治体制・革命と建国をへて昂揚したナショナルな意識が「聖地」と「辺境」に新しい意味を付与→19世紀アメリカニズムに実態的な基盤を与える
  • アメリカ化」された政治理念と「辺境」・「聖地」
    • ピューリタンの「聖地」であったアメリカは、独立革命によって旧世界からの離脱を終え、それとともにいまや共和主義と自由の実現という世俗的な目標をめざすべき「天命」を負う→そのとき「辺境」は西漸運動がアメリカに下された天命の着実な実現を意味するようになる
      • アメリカという国民国家のユニークさは、その長い歴史において・・・・・・それがつねに国家を創造したそもそもの理念に忠実でありつづけ、個人主義的な世俗的ナショナリズムの諸原則をほぼ実現してきた点にある。それはいまもなお、国家形成当初の約束であったデモクラシーのモデルでありつづけているのである。そして、そのことは、この国家が内部に矛盾を抱えながらも、復元力と発展可能性を有していたことの証なのである」 Liah Greenfeld,Nationalism:Five Roads to Modernity(Cambridge,Mass.:Harvard University Press,1980),32
4 排除の構造(1) ―人種主義(racism)
  • 理念国家と排除の構造
    • アメリカ合衆国、「民族国家の色あいをまったくもたぬ、理念国家」として出発→しかし歴史や伝統に縛られたほかの「民族国家」と同様、血や土や信仰に基づく排除
    • 先住アメリカ人や黒人奴隷→「平等に生まれ」、共和主義的理念を国是として掲げたはずの合衆国が、その「南部」において奴隷制という「特異な制度」を存続させ、その「辺境」において先住民ジェノサイドというべき蛮行を展開
      • 先住民排除の目的=土地の獲得:新世界の土地は神意によって耕作されるべく定められている「聖地」・「インディアンは土地を持たぬ狩猟民」→土地収奪正当化
      • 奴隷制導入の目的=安価な労働力の確保:黒人の生物的劣等性を証明する疑似科学的な進化論的人種形成論→経済構造を維持し正当化
5 排除の構造(2) ―排外主義(nativism)
  • 国家創生神話にもとづく国民創出過程における排除の構造
    • 理念に立脚した無垢の国民精神を守り、人類の救済という天命の担い手としての国民的士気の維持する方法→ヨーロッパからの孤立
    • 矛盾点:西部開拓を実際に担っていく労働力の決定的不足という問題
      • ヨーロッパとの文明史的競争に勝利するために、ヨーロッパからの移民に依拠せざるを得ないという事態→アメリカの「例外意識」の危機→「反ヨーロッパ的」排外主義
  • 排外主義の3つの現出:反カトリシズム、反ラディカリズム、アングロ・サクソン中心主義
    • 反カトリシズム
      • 1820年代大量のアイルランド系移民→カトリシズムの持ち込む「外来性」「ヨーロッパ性」のうちに19世紀アメリカニズムの危機=共和主義的原則にもとづく、政治過程、教育システム、文化的諸規範、つまりはアメリカの理念と制度の総体が、「旧世界」の中心たるローマに忠誠を誓う移民の流入による危機
    • 反ラディカリズム
      • 旧い大陸における革命的動乱を契機とする政治的急進主義者の移住・亡命→階級性の否定という共通の目的を見出さず、アメリカにはない階級性に由来する歪んだ社会意識とみなす
    • 排除構造→合衆国という国民国家に一定の骨格、しかし確固たる有機的一体性を与えたわけではない→1850年代まで、不完全な国民性しかみられない
  • アメリカ国家の脆弱性の原因
    • ヨーロッパの排除を呼号しながらも、真に独自な守るべき文化的核心を欠いたアメリカニズム→(「聖地」にしろ「辺境」にしろ)「アメリカ的」なるものの模索、新規にそれを編み出す過程、「アメリカ化」という動的な過程としてしか現れない
    • アメリカ化の課程=確固たる歴史的現実や具体的共同体の裏づけを欠いた、いまだ完全には実現されていない共和主義や自由といった「理念」によってのみ導かれる→「理念」が未成である限り、アメリカニズムも未成であり、「アメリカ化」という運動には終わりがない→「辺境」の存在により、永久革命的性格を保障→「辺境」が消滅したとき、19世紀アメリカニズムの真の危機

三 二〇世紀アメリカニズムの形成

1 十九世紀アメリカニズムの危機
  • 19世紀アメリカニズムの危機
    • 植民地時代以来のきわめて特異な諸条件を前提とする例外的な諸要素から構成→19世紀末、国際的・国内的激変により消滅や変容の危機
    • 1)アメリカ独自の大陸発展を可能とした対外的孤立主義からの転換
    • 2)「聖地」としての「辺境」の終焉
    • 3)アメリカのヨーロッパ化の危機
  • 孤立主義
    • 19世紀アメリカニズムの構造を全体として支えていたのが孤立主義
    • 膨張と孤立主義
      • 合衆国内の膨張はジェファソンの「自由の帝国」という観念により正当化→ヨーロッパ政治思想の伝統的な「帝国」観(膨張主義的で巨大な版図を持つ帝国は専制と抑圧を常態とするがゆえに必然的に自由の敵であるとする見方)がアメリカ独自の文脈で読みかえられる→「孤立」の意義は空間的・歴史的な断絶
      • それまで旧世界の歴史の牢獄に封じ込まれてきた人類の希望、自由と平等と繁栄とそして安全は、歴史の断絶を空間の断絶によって可視のものとしえた「アメリカ」において、はじめて全面的開花が可能となる
  • 「辺境の消滅」
    • 19世紀アメリカニズムの例外性→自由土地の存在に支えられている
      • 「土地が消滅するとともに、合衆国においては、それまで一時的に停止されていた経済法則があらためて開始され、避けることのできないおしあいへしあいがはじまるだろう。地代は高騰し、賃金は抑圧され、都市は混雑し、社会階級は相互の戦いに明けくれることになるだろう」→「アメリカのヨーロッパ化」
    • 1)農本主義から産業主義への転換:1880年代以降の農民連盟運動、90年代の人民党などの政治運動 ←産業社会の到来に対する西部および南部の農民たちの抵抗と適応
    • 2)巨大企業の登場と労働組合の成長:個人の時代から組織の時代へ
    • 3)旧世界周辺からの大量の移民労働者の流入:移民集団ごとに半孤立的な集住地域を形成、都市社会に二次的な分断線
    • 4)都市化(全国的な都市の数の増加と巨大都市の登場)現象の進展→貧困問題や社会問題が噴出
    • 5)国民社会における多面的・相互的な排除や対立:ex.ストライキの頻発、ヒステリックな反ラディカリズム、反カトリシズムの再発、反ユダヤ主義、反移民暴動
    • 6)政治的対立:南北戦争の記憶にもとづく旧来のセクション間の対立。都市対農村、大企業対中小企業、企業家対労働者、ボス・マシーン対改革主義者、移民対アメリカ生まれの中間層の政治的分断層の発生。新たな職能団体や圧力団体の登場。→国家の変容:19世紀型国家(基本的な社会経済的な価値配分以外には、自由放任的、消極的)から 産業社会の統制と調整を行なう行政国家へ
    • 7)自由競争による淘汰や適者生存を称揚する社会ダーウィン主義個人主義と機能別集団による組織化の対抗潮流→帰属意識の二重化(個別の移民集団、職能集団、圧力団体、地域集団への忠誠心⇔ナショナルな帰属感)
2 二〇世紀アメリカニズムの誕生―国際主義とナショナリズム
  • 20世紀アメリカニズムの起源
    • 1)(「孤立」の終焉にともなう)世界におけるアメリカの位置・役割の再定義
    • 2)(「聖地」としての「辺境」の消滅、「大社会」の勃興にともなう)アメリカが国内においてめざすべき基本的価値観の再構成
    • 3)(「ヨーロッパ化」の危機に対応した)意識的な「アメリカ化」の推進
  • 「孤立」の放棄
    • 合衆国において20世紀は「孤立」の放棄とともに始まる →博覧会の頻発
      • cf.19世紀末からWWⅠまでの時期は、技術文明の進歩と人類世界の一体性を確認すべく、世界の諸都市で博覧会が開催
    • アメリカ博覧会のねらい
      • 米西戦争の結果を受け、新しい世紀にむけて南北アメリカの一体性、すなわちパン・アメリカニズムを吹聴する
      • 西半球の一体性を越えて、世界や人類の運命の一体性、アメリカの世界的役割を強調
      • キューバ、フィリピンへの勢力拡張、門戸開放宣言の正当化を図る
  • 合衆国における国民的な集合意識の変容
    • アメリカこそが、「人類社会の進歩」の先頭を切りつつあるという強烈な自負心 →ex.1901年のウィルソンの公演「アメリカの理想」
      • 1)海外の進出こそが、新しいアメリカの「使命」であると主張
      • 2)「自由と自治」と「よき統治」の結合による周辺への内政干渉の正当化
      • 3)アメリカ政治の自己批判→公的生活の腐敗に対する公民としての義務の強調
  • 20世紀アメリカニズムの定式化
    • 新たな世界史的地位と役割を見出すとともに、国内的レベルにおける新たな目標
    • 世界にむかってその「理想」を時ながら、みずからの国内的危機をナショナルな観点に立ち、新しい「理想」にしたがって克服する必要性に直面
3 「アメリカ」化の時代
  • アメリカ化」
    • アメリカニズムはある一定の「理念」や「理想状態」によって規定される。それらが未達成であるかぎり不断の運動として「アメリカ化」の過程として現れざるを得ない
    • アメリカ化」とは、出自、民族、言語、宗教を異にする、多様な移民から、アメリカ市民がつくりだされる過程をさす
    • 社会の側における移民の吸収・同化作用を指す一方で、移民自身のアメリカへの適応→植民地以来、無限に繰り返されてきている
    • 20世紀アメリカニズムにおいて「アメリカ化」は、はるかに目的意識に追求されるべき課題
  • アメリカ人」への変容過程
    • 移民が出身国の価値意識やアイデンティティを喪失し、アメリカの価値意識やアイデンティティを獲得する過程
      • 移民の絆(歴史・伝統・言語・宗教・生活習慣への愛着)を保ち続ける故国の記憶が、アメリカ社会と明確に区分された生活空間を維持させる→戦争・不況・移民排斥による故国の絆の断絶→移民集団の組織的求心力が弱まり、移民集団とアメリカ社会の障壁が低く薄くなる→個々の移民たちが「英語」とアメリカ人としての「基本的な市民道徳」の価値観を受け入れる→アメリカ人意識高まる
    • 「非米的」なるものを排除する「移民排斥」と「アメリカ的」な価値意識の注入を主目的とする「アメリカ化」は、手段を異にしながらも、相互補完的にアメリカン・アイデンティティの形成をうながす
  • アメリカ化」運動
    • 19世紀末「新移民」→アメリカ社会一般に強度の緊張と危機意識→排斥運動の激化・「アメリカ化」するための社会運動の昂揚→ともに分断的な移民社会の壁をうちやぶり、単一の国民的アイデンティティにもとづく統合された国民社会の形成をめざす
      • 移民排斥運動→排除による国民統合の強化:移民排斥運動が安価な労働力の供給をそのものを断とうする点で、産業社会の根本的要請と矛盾
      • アメリカ化」→教化を手段:「新移民」の流入それ自体を所与としたうえで、彼らの教育をとおして、きたるべき産業社会の合理性に適応させようとする近代的側面
  • 産業社会におけるアメリカ運動
    • 企業家:大量移民が安価な労働力の供給源として歓迎すべき現象
      • 課題1)移民のもちこむアナキズム社会主義といったヨーロッパ的ラディカリズムの防止
      • 課題2)前近代的な農業社会からやってきた大量の新移民たちを、新たな産業社会諸基準に合致した効率的、画一的労働者へと改造すること
    • 労働組合
      • アメリカ的性格を強調することで正当化する必要性に迫られる
      • 大量移民に随伴する賃金引下げ→反移民的、排外主義的傾向を強める
      • 一方で、新来の移民のコントロールとその「アメリカ化」のための橋渡しを主張
    • 大都市の社会的セツルメント運動
      • アメリカニズムの強制的要素を可能な限りは抑制しつつ、移民たちを新しい都市的環境へと軟着させる努力を惜しまず
      • 学校教育は、移民の子どもたちに「英語」と「近代的な生活様式」「中産階級的基準」を注入、一種のコミュニティ・センターとして移民社会全体の「アメリカ化」を推進するための役割を果たす
  • アメリカ化」運動の問題
    • 民集団のくびきや移民ゲットーの生活様式からときはなたれた新しい「アメリカ市民」をいったいどこへつなぎ止め、なにによってまとめてゆくか
    • アメリカ的なるもの」を定義できず→「アメリカ化の鼓吹者たちは、ことばの選択にかんしてあいまいになりがちであった。彼らによって、『よき愛国的アメリカ人』『アメリカニズム』『公共的忠誠心』『伝来のアメリカ的理想』『愛国心』等などのことばが、きわめて自由勝手にもちいられたが、それらが明確に定義されることはほとんどなかった」
    • アメリカ化の課題=根本的な社会編成過程と関わる:アメリカ社会全体が「島嶼的社会」から産業主義に立脚する「大社会」へと移行する流動的な過程→移民だけでなく、アメリカ生まれの農民・職工・中産階級・地方都市住民も島嶼的孤立状態からの脱却を迫られる
    • 流動化しつつあった人口が同化にむかうさいに目標とすべきアメリカのイメージが一定化せず→「アメリカ」化運動はそれのみで20世紀アメリカニズムに明確な輪郭を与えるにはいたらず
4 アメリカニズムとしてのフォーディズム
  • 20世紀アメリカニズムの特徴
    • アメリカの先駆性」
      • 市民生活の「大量化」現象→社会的物資の生産・人間の(生物的および社会的)再生産が、大量生産・大量輸送・大衆教育・大衆文化などの諸条件の下で行なわれるようになる
      • 「大量化」現象は、「効率性」「規格の統一性」「合理性」「科学性」といった近代的諸価値の社会への浸透と並行
  • フォード自動車学校の「人間改造」計画
    • フォードにおける「アメリカ化」運動は、「大社会」の中軸をなす企業組織による「近代化」計画の色あいが濃い
      • 高度に精密な機械力の導入、作業工程の細分化と専門化による単純化、画一的部品製造による交換可能性原則の維持、テイラーイズムの創造的利用などといった生産現場の「合理化」を目的とする運動→労働者それ自体を、その日常生活の根本からつくりかえ、「合理化」しようとする→労働者を前期代的な伝統のくびきからときはなつ必要
      • フォードは、ときはなたれた労働者の自我をつなぎとめるべき産業社会における典型的人間像を用意=中産階級的な理性とセルフコントロールとを持し、機械化に適応可能な合理性を有し、産業社会全体への貢献を自己の占める持ち場において着実にはたしうる労働者という、抽象的で新しい人間のイメージ
      • 近代的産業社会における機械と人という二つの基本的要素を同時に合理化することを追求した点にフォーディズムの特色→この点に、20世紀アメリカニズムとしてのフォーディズムの普遍妥当性
    • 産業社会におけるヘゲモニーの確立をめざす世界中の企業家階級にたいし、汎用性のある資本主義的な成長の為のフォーミュラ・普遍的なイデオロギー計画を提供→その結果、一会社の労働者管理プロジェクトをとして開始されたフォーディズムは、国民経済の成長を基礎づける普遍的な方式として、世界の産業界を席捲する
5 特殊主義の周辺化
  • 1920年代における20世紀アメリカニズムにむかう不可逆的な変化
    • 1)政治とイデオロギー:国家が機能的な利益集団間の利害調整や規制の主体、産業的秩序の管理者に。経営的自由主義→革新的自由主義福祉国家の形成
    • 2)大衆消費社会への移行:生産規模の拡大と消費規模の拡大
    • 3)支配的社会原理変貌:道徳律から都市的な行動規範へと推移。映画やラジオ、モータリゼーション→倫理規定の自由化へ
    • 4)「郊外化」現象:オフィス街→工場街→長距離交通手段を持たぬ貧困労働者住宅→裕福な中産階級の住む郊外
  • 20世紀アメリカニズムの中心的特徴
    • 社会意識:サブ・ナショナルな地域や集団へのアイデンティティの弱体化→抽象的ではあるが包括的なナショナルなアイデンティティが強化
    • 特殊主義的な集団:二大政党の傘下、利益集団への変容→全国政治のメカニズムのうちに組み込まれる
    • 国家:利益集団間の調整を行いつつ、経済成長を管理するという積極的な役割を担う。
    • 経済的、軍事的に国際的ヘゲモニーを確立したアメリカが、みずからの成長政策と統治方式とを、範型として他国と移出する努力を惜しまず→20世紀は「アメリカの世紀」へ

四 おわりに―二つのアメリカニズム

  • 20世紀アメリカニズムは本当にコスモポリタンか?
    • 非個性的画一主義、個々人が互換可能であるということを疑わない普遍性、それらを前提とした上での無限の個人主義的自由=WWⅡ後の世界にたいしてアメリカが掲示してきた生活様式に内在する根本的価値観=合衆国の援助による復興にはこれらの価値がつきまとう
    • これらの価値が国際的にも通じるか否かを疑うアメリカ人はほとんど存在せず→合衆国による厖大な対外援助と並行して、国際社会に文化的、経済的、政治的な多様な理由にもとづく「反米主義」が蔓延→「アメリカの世紀」は「反米の世紀」に