世界と世界の真ん中で「月館美紀」シナリオの感想・レビュー

月館美紀シナリオは、二重人格の統合治療のおはなし。
月館美紀の現世での未練とは、自分の別の人格を消去してしまった後悔。
主人公くんの導きで、自分の別人格と対話を交わし、決着をつける。
過去を乗り越えた美紀は新しい人格として生きていくよとハッピーエンド。

月館美紀のキャラクター表現とフラグ生成過程


  • ペルソナチェンジ
    • 人は多かれ少なかれ他人と接触をする際に、全てが同じように振る舞うという分けにはいきません。仕事をしている時の自分、上司や部下に接する自分、家族に会うときの自分、友人と接するときの自分。それぞれの場合で自分の振る舞いは変わるでしょう。月館美紀さんはそのペルソナチェンジが激しい少女でした。学校の教室に入るときに暗示をかけて超優等生として生きていきました。私生活の場では明るくサバサバとした性格です。美紀はこの性格変化を“そうしなければいけない”と無意識に強制されているようです。ではなぜ美紀はこうしたペルソナチェンジをするのでしょうか。それは、美紀が前世において、二重人格であったからです。そのため天球儀世界では意図的に二つの性格を使い分けていたのでした。では美紀が天球儀世界に至った未練とは何なのでしょうか。


  • 二重人格と統合治療
    • 美紀は統合治療によって、片方の人格を消してしまいました。それが未練となっていたのです。前世においては人格変化の際、記憶の継承は行われませんでした。そのため記憶共有ノートを使って巧みに記憶を維持しながら、一つの人格であるように生活していたのでした。ところがそこに美紀を狙うレズ女が現れます。このレズ女のストーキング術によって美紀が二重人格であることがばれてしまうのです。美紀(優等生ver)は自分以外にも他人格に気づいてもらえたので喜びを感じます。レズ女の毒牙にかかっていく美紀(優等生ver)をサバサバした美紀は危機に感じます。こうしてお互いを大事にしていた美紀の人格がすれ違うようになっていき、とうとう統合治療をして性格を消すことになってしまうのです。サバサバした美紀は自分が消えると思っていたにもかかわらず、消えてしまったのは美紀(優等生ver)だったのです。主従関係でいえば自分が従だと思っていた美紀(サバサバver)は、美紀(優等生ver)の願いや想いを理解しようとしなかったことを後悔することになったのです・・・


  • 天球儀世界で人格どうしの対話!
    • 人格を消滅させてしまったことを悔いた美紀。主人公くんは美紀のトラウマを解放しようと天球儀に触れ、消滅してしまった美紀の人格を召還します。こうしてはじめてみのりが自分の人格と正面切って話し合えるようになったのです。お互いがお互いを思い合っていたからこそ生じてしまったすれ違い。この悲しみを人格同士の対話をすることで癒していきます。「多重人格ヒロインの人格が消滅していく」というモチーフは同日発売の『12の月のイヴ』でもネタが被っていましたね。また2000年代初頭に『まほらば』という作品があって、それは多重人格のヒロインを統合させることがテーマとなっていましたね。ちなみに主人公くんサイドで多重人格の統合を扱った作品には大作『俺たちに翼はない』があります。まぁ、そんなお約束な人格統合ネタで、美紀は自分の消滅してしまった人格と今の人格で折り合いをつけることが出来ました。美紀√でも天球儀世界を後世世界として確定させ、ペルソナチェンジをするのではなく、ありのままの自分をさらけ出すという強さを手に入れたのでした。めでたし、めでたし。