雑録

オトメ*ドメイン「大垣ひなた」シナリオの感想・レビュー

自己同一性をめぐる中二病のはなし。粗製乱造された記号消費がまた一つ増えたのであった。
中二病の感染源である地元類友と久しぶりに会ったら一般人になっていて涙目!」となる展開は熱い!
ただこのシーンは描写されず、後から事実だけ聞かされるので、是非精神的フルボッコされる姿が見たかった。
ロールプレイできると楽しみにしてたら現実に打ちのめされ絶望感に浸る心情変化を表現できれば一線を画せたのになぁ。
中二病を否定し自己同一性の確立に悩むヒロインに対してTPOに応じて使い分けをするのが大人なんだと諭す所はステキ。
しかし中二病ヒロインもわんさか出てくるものよ。

大垣ひなたのキャラクター表現とフラグ生成過程


  • 如何にしてひなたは中二病となりしか
    • 中二病」という設定はキャラクター表現においてかなり便利であり、キャラ描写では「ギャップモノ」を、シナリオでは「精神的トラウマ」を描き出すことができるのです。本作の場合は、お嬢様という設定をいかされ自己同一性が崩壊する様子を楽しむことができます。大垣ひなた嬢は財閥の娘であり、両親から蝶よ花よと育てられ、操り人形と化していました。両親が望む可愛がられる娘を演じるために、「人当たりが良く清楚で従順・才色兼備で純情可憐な令嬢」であることを強いられていたのです。そんなひなたは中学時代に邪気眼中二病徒たちと遭遇します。今まで傀儡であったひなたに自我が芽生えた瞬間でした。こうしてひなたは初めて人生に生き甲斐というものを見出していきます。しかしこれは危機も内包しており、中二病ひなた・清楚系ひなた・素のひなたの三人格を生んでしまうことに繋がるのです。主人公くんは不良に絡まれたひなたを救ったことから妙に懐かれマリみてよろしくスールの契りを交わし「お姉さま」と慕われることになります→フラグ成立。中二病のひなたが時折見せる素のひなたとのギャップをお楽しみください。



  • はいはい自己同一性崩壊のお時間ですよ
    • ひなたとフラグ構築した主人公くんですが、ひなたがクラスに馴染めていないことを憂慮します。自分がひなたの中二病の人格を認めてしまったがために、クラスでの孤立を深めてしまっているのではないかと。そんな中、ひなたの第一形態である清楚系ひなたを目の当たりにした主人公くんはクラスに馴染むためにTPOに応じた使い分けを提唱するのですが、ひなたはなかなか納得しようとはしません。そんな折、主人公くんはひなたが中二病に感染した契機を知ることになります。そしてひなたは自分を中二病に感染させた中学時代の類友に久しぶりに会うことになります。そのひなたの前に現れたのは高校デヴューして一般人と化したJKだったのです。この描写は描かれず結果だけひなたの口から聞かされるのみなのですが、中二病を辞めるように本気で諭されたのだとか。こうしてひなたは自我を形成してきた根本要因を破壊され自己同一性崩壊に陥るのです。ひなたはどのように振る舞えばよいか分からなくなり、清楚系ひなたに逆戻り。お人形で傀儡化したお嬢様として生活するようになり、打算と買収で歓心を得て人間関係を構築するようになってしまいます。
    • 中二病ひなたと素のひなたとのギャップに惹かれていた主人公くんは清楚系ひなたと接することに戸惑いを覚えてしまいます。また中二病ひなたに対し一定の理解を示していたクラスメイトAからはロボットのようで気持ち悪いと断罪されるのでした。主人公くんがひなたを救うために行ったことは中二病ひなたの肯定。主人公くんは邪気眼ごっこ遊びを発動し、ひなたとノリノリで魔王軍ごっこをします。そしてアイデンティティクライシスに苦しむひなたに対し、自己同一性を確立することは絶対的な単一の自分として振る舞うことなどではなく、人は多かれ少なかれペルソナチェンジしてTPOに合わせて自分を使い分けるのだと諭すのです。こうしてひなたは中二病ひなたも清楚系ひなたも素のひなたも肯定されることになりました。他者からの承認は自己肯定感を生み、ひなたはアイデンティティの確立に成功しハッピーエンドとなります。