2014年度早大・慶大入試問題分析報告会 (河合塾 新宿校)まとめ

河合塾(新宿校)の早慶大入試問題分析報告会に行ってきましたので、まとめておきます。
 ※参考:2013年度早慶大入試問題分析報告会

  • 報告者:沼田英之

概要

  • 世界史の場合は早大・慶大の各学部ごとに報告者がコメントをいれていく形式。
  • 出題地域と出題時代の分布表を提示しながら、報告者が気になった問題を羅列的にコメントしていく。
  • 資料の末尾に載っている分析資料が詳しい。

報告者説明事項

  • 出題傾向とその対策(全般)
    • 正誤判定問題の厳しさ
      • 消去法が使えず、問題の内容の正確な歴史的理解を問う問題が多々ある。過去問研究と問題演習を重ねて、複雑な正誤判定の問題に慣れておく必要がある。
    • 文化史の年代判定を正確に
      • 17世紀〜18世紀の文化史の問題の年代整序を問う問題が見られる。この時代の文化史は年代が曖昧になりがちなので、制作された年代をきちんと把握しておく必要がある。作者と作品名と作品内容だけを覚えていても足りない。
    • 超現代史をどこまで教えるか → ポスト冷戦時代
      • 早慶は戦後史だけでなく、冷戦後の世界も出題される。そのポスト冷戦時代を沼田氏は超現代史と説明しているが、この時代の指導をどこまで教えるかが問題になって来るとのこと。
  • 学部別特記事項
    • 慶応商
      • 商学部で学ぶことを意識した社会経済史が4年連続で出題
    • 慶応経済
      • グローバリゼーションをテーマに全14問で構成
      • ナチ党が1930年代に急速に国民の支持を得ていった理由をヒトラーの経済政策から説明させる→慶応経済のこだわり
      • ニクソンショック → 過去問研究
    • 早稲田教育
      • 儒教の歴史と仏教の歴史 → 思想内容を攻めてくるヘヴィ → 倫理?
    • 早稲田国際教養
      • 英文資料問題穴埋め → 独立宣言
    • 早稲田政経
      • ついに政経にも論述問題120字×2が
      • 年代整序
    • 早稲田文
      • 図版資料問題対策

質疑応答から

  • 早稲田の教育について
    • 早稲田の教育では大問として儒教史と仏教史が出題された。儒教史の方はまだ受験生にとって意味のある問題。だが仏教史は思想の内容まで踏み込んで問うており他にも出題することはあるだろうとのこと。
    • 沼田氏が主張するには、仏教史よりも仏教伝来史やシルクロードの交易において「オアシス都市の漢字名」について出題されるのが良いとのこと。
  • 細かすぎる知識の指導は良くない
    • 早慶において細かすぎる知識にこだわりすぎると対処しきれなくなる。山川の『詳説世界史研究』を受験生が読み出したり、山川の用語集を全て覚えようとしたりする。だがそのような勉強は「受験」のためには戦略性が無く、受験勉強の時間の全てを世界史に費やしてしまうことになる。受験科目は世界史だけではないのだ。そのために重要になってくるのが過去問研究である。教科書を一通り終わらして通史の基礎を固める。その上で細かい知識をインプットしていくことになる。過去問研究をして、自分が知らない用語や歴史事象にであったら、自分で調べてノートまとめをしていく。
  • 世界史だけでは受からない
    • 世界史は何割とれれば良いか?との質問に対して沼田氏は7割以上と答える。世界史で9割とっても他の科目が低ければ落ちる。世界史だけ勉強するのではなく、バランスが重要とのこと。実際、今年度の生徒で世界史で9割とっても(自己採点だから本当かどうかは分からないが)慶応に落ちた者もいるという。世界史教員だと世界史のことしか目がいかなくなりがちだが、他の科目を勉強しているかどうかも配慮する必要がある。
  • 河合塾の模試について
    • 河合塾早慶模試は、「早慶が本気になって出題してきた場合」をコンセプトとして作成されている。模試が易しくて本番が厳しかったら太刀打ちできないからである。そのため某巨大掲示板などでは叩かれることもあるが、河合塾の講師たちは品格を信じて作成している。
    • 河合塾の模試は大学側に対する訴えかけることでもあるとのこと。河合塾の模試が良問を作ることで、大学側も難問・悪問ではなく、良問を作ってくれることを期待している。