2013/2014 大学入試センター試験対策指導研究会地理分科会(於駿台予備校)

センター試験も廃止されるという流れですが、センター試験対策指導研究会のリポートです。
講師は土壌関係を専門とするという井上宏昭氏。

  • 研究会の流れ
    • 今年実施されたセンター試験の問題を「正答率が低かった問題」、「差がついた問題」、「新傾向の問題」に分類し、実際に解説しながら出題傾向や所感などを述べていくという展開。
  • 出題の特徴やパターンなどに対する具体的な学習方法などはレジュメに記載されているが、井上氏が割愛したところも少なくなかった。ここでは、井上氏の言動とレジュメの抜粋を記しておく。

井上氏の分析

  • 地学基礎と関係するもの
    • プレートテクトニクス」と「火山」についての問題→理科の「地学基礎」に関する知識を押さえることが前提の問題が作られている。
  • 新学習指導要領の傾向
    • 地図の活用 (論述・自分の意見) 理由付け
    • 世界地誌の分野の増加
    • 地理情報と地図
  • 教科書の資料について
    • 今年の第3問・問3の丘状集落、第3問問4のメキシコシティなどの資料は図版資料の確認をきちんとすることが肝要。
  • なぜそうなるのかの理由付け
    • 近年の受験生は理由付けを求める。「こうなるんだ覚えろ」ではなく、理屈を教えることが重要。
    • 第1問・問2の土壌の問題は、井上氏の専門らしく、土壌の成因についてかなり詳しく解説がなされた。
      • 参考文献の紹介→久馬一剛『土の科学』
  • 新たなデータを使って揺さぶりをかける問題
    • 第5問・問2の糖尿病のデータ
    • 第2問・問2の第3次産業の業種別構成比
    • 第2問・問4のフィンランドノキアと韓国のサムスンのイメージ
    • 第4問・問2の地中海沿岸の雨温図読解
      • 受験生の視野の狭隘さが分かる → 新聞やニュースで興味を色々なものに持つことが肝要
  • 位置と比較の学問と全体からの地域システム
    • 地理は位置と比較の学問である
    • 全ての事象は繋がっており、全体として位置づけが重要 → 地域システム

研究会のレジュメ抜粋

今年度の出題の特徴
  • センター地理の出題分野
    • 系統地理3題;自然地理1題、人文地理2題(産業1題、都市村落生活文化1題)
    • 地誌2題;世界地誌1題、日本の地域調査1題
    • 現代世界の諸課題1題
  • 資料数の削減
    • 前年度と図・表の数はほぼ同じだが、資料数が減少していることから、受験生に解答のヒントとなる出典を抑えた問題構成であったと言える
  • 難易度について
    • 「地誌」と「地域調査」、「日本」に関する大問、国・地域の特徴(経済・文化、都市人口)や統計地図の判読に関する小問が難易度を左右する
  • 2014年度への対策
    • 図や統計資料などの読解力を重視する傾向は続く。教科書や資料集の図表を読み込む必要
    • 地形図読解の演習をこなす
    • 統計表やグラフ…数値の変化や差異が見られる点に着目、その背景を考える習慣をつけておく。仮説を立て、既修の知識を駆使して検証するプロセスが重要
センター試験対策
  • 「基本知識」の把握
    • 教科書の理解。教員独自のプリントや問題演習中心の授業展開はダメ
  • 「論理的思考力」
    • 地理的事象の相互関連性や法則性を見出させる。地理的事象の妥当性を理解させ、未習事項を推論させる
    • 「AはA’であるためB」と論理にワンクッションをいれさせる
  • 「資料解析」
    • 指標の意味や年次に着目させ、判定できる項目を読み取らせる
    • 指標を操作して新たな指標を作り、それをヒントに考察させる
  • 「資料読み取り」
    • 地形図などでは、読み取るポイントを指摘するとともに、反復練習を心がけながら正答を探し出す
出題観点
  • (1)出題タイプ…知識・論理的思考・資料解析
  • (2)基礎的知識…地理的基本知識、一般常識力を問う問題 →教科書
  • (3)論理的思考力
    • 地理的事象のメカニズム理解や原因分析が必要 →身近な事例を用いて、発問形式の授業を展開する
  • (4)資料解析力…与えられた資料から正答を導き出す問題は、指標・図の特徴や登場する国・データから類推
    • 資料をヒントにして答えを導き出せる
    • 読図問題は正答を探し出す問題
    • 統計問題は指標の関連性に着目させ、指標を操作して別の指標を作り出す
    • 地形図や地図の読み取り練習
    • 統計の特徴を考察するとともに、関連性のある統計を見つける
  • (5)理系受験生を考慮した問題…知識要求問題は到達度確認テストの様相が強く、論理的思考力や資料解析力を確認する問題が多い
    • 決定論的授業展開には注意が必要
    • 地理的事象の法則性に着目し、地理的事象の詰め込みを避ける
    • 導き出した解答の理由付け
センター対策の学習ポイント
  • (1)基礎的知識…教科書の熟読、自習用問題集(サブノート的なものか?)
  • (2)地理的思考力の育成
    • 論理的思考力・応用力の育成
      • 該当する過去問を事例にして、解答・解説を行う。解答を導き出すフローチャートを確認しながら、学問的解説を行う
    • 資料解析力の確認
      • 要点整理の右ページに資料・統計データを示しておく
    • 理系受験生を考慮した問題
      • 新聞、ニュースなどから今日的な時事的問題を紹介し、地理的解説を行う→地理的事象は生活と密接に関係していることを実感させる
  • (3)直前期のセンター対策
    • 表現方法に着目…センター試験特有の表現方法に着目させ、正答となる文章表現を確認する。
    • 出題意図の推測…設問の流れや出題する意図を考えさせ、正答を推測させる。

個人的まとめ

  1. 教科書・資料集を熟読させろ!!図表写真資料統計などをきちんとチェック。
  2. 地理的事象のメカニズムを理解させるためには、身近な例を用いて発問形式の授業をしろ!
  3. 論理的思考力は過去問を用いる。思考力のプロセスを踏み、そして学問的解説をしろ。
  4. 資料・統計データの提示!!
  5. 新聞ニュースなどを読ませろ!!