迷える2人とセカイのすべて 各個別√の感想・レビュー

個別√は第2部の途中で確定し、それぞれヒロインの特性を活かしてダークエルフを撃破します。
そして「セカイの終わり」を救うために異界に渡ってエルフ少女と世界樹の問題を解決するという構図。
ヒロインごとに内容のイベントは異なるものの、全体の構造は一緒で基本的に一本道。
それなりに面白くはあるものの、同じパターンのシナリオが長い・・・。誤字もわりとある。
各個別をクリアするとエルフ少女フィアのグランドルートが開放されます。

支倉乙羽ルート


  • 他者との比較による劣等意識
    • 支倉乙羽は主人公くんの幼馴染み。幼少期に転校してきた際、なかなか友達が出来ず両親も共働きであったため寂しさを感じていました。その時救ってくれたのが我らが主人公くん。乙羽の日常は光輝くものになりました。そして主人公くんが神隠しにあった遠因を作ったのは乙羽で、おままごとに乗り気でない主人公くんを困らせてやろうとわざと迷子になったことがきっかけでした。故に主人公くんに対して負い目を感じており、以来主人公くんのことを陰に日向に支えていく正妻ポジションとなっております。そんな乙羽が授かった異能がタロットカードによる主人公くんの剣の具現化。これまた正妻的な役割。乙羽イベントの中でオススメのシーンは、エルフ少女の偏食を直すため主人公くんと二人で料理に挑戦する場面。主人公くんがヨメの指導を受けながら娘のために包丁を握るのはいいものだ。また、なかなか食べようとしないエルフ少女に対して、乙羽が自分で食べてみせておいしーい全部食べちゃうぞー!とやる場面はグッときました。第3部の異界編では死の刻印にさらされ、タロットで活躍できなります。このことに劣等意識を感じることもしばしばで、別のヒロインとくっついた方がいいんだとか言っちゃいます。幼馴染みの普通系メインヒロインが他の個性あるヒロインと自分を比較して劣等意識を抱くという表現技法が発動!!しかしながら、主人公くんがエルフ少女と別れることとなって落ち込むと、今度は支える側に廻ります。寂しさも不満も葛藤も全て受け入れてあげるのです。こうしてエルフ少女の即位式を無事成し遂げることができ、現実世界へと帰還するのでした。

結城鈴蘭ルート


  • 家族の事故死とマスゴミ
    • 結城鈴蘭はネット記者死亡の女の子。コミュ力が高くて誰とでも気軽に話し、明るく元気。鈴蘭のそのような人格は家族の事故死により形成されました。結城一家は高速道路でトラックの積載物にぶつかり死亡します。鈴蘭は偶然部活があったため同乗しておらず無事でした。ひとり生き残った鈴蘭は、マスゴミの心ない誹謗中傷にさらされます。日本のマスコミはジャーナリズムじゃなくてエンターテイメントなんだよ!!そんなわけで鈴蘭は個人での情報発信というあらたな情報発信を指向するようになり、家族の分まで明るく過ごすのだと決めました。鈴蘭は第2部のダークエルフ戦の前に戦列から外れます。仲間達から裏切り者の誹りを受けますが、それは敵の内部から弱点を探るというありがちなスパイ活動をおこなうためでした。皆のピンチに颯爽と現れ、おいしい場面をかっさらっていく鈴蘭なのでした。第3部は鈴蘭が特殊能力を活かして世界樹を育てることになります。また鈴蘭のジャーナリズムスキルを活かして、5代前のエルフの王を成仏させていきます。第3部はイベントの内容は異なるものの、「異界において主人公くんとヒロインが力を合わせて「世界樹の実」をゲットして現世に帰還。エルフ少女は異界に留まる」という構造は一緒なので消化試合感が否めません。乙羽ルートでの結末ではエルフ少女が世界樹のために眠りについたのに対し、鈴蘭ルートでは再び現世と交流するため世界樹を育てるエンドになります。

冴木桃華ルート


  • クール系少女の感情開放
    • 冴木桃華は感情の起伏に乏しい無表情系キャラ。桃華は幼少期に人身御供の因習が残る地域で奉納される娘として育てられました。その時、人権保護財団によって救出されます。助け出されたものの生け贄として生きてきた桃華にとっては生きる理由がなくなってしまったのです。こうして桃華は財団が生きる全てとなり、エージェントとして特訓を受け、戦闘機械として成長したのでした。桃華は財団からエルフ少女の回収を命じられて主人公くんに接近してきます。当初はエルフ少女をめぐって戦闘にもなるのですが、保護を目的とする桃華にとってエルフ少女の結界を解除する学園七不思議編で共闘していくことになります。共闘する中で主人公くん一派との交流も進み、徐々に感情を獲得していくのです。物語が進んで財団がエルフ少女を人体実験および殺害しようとしていることが判明すると、完全に仲間になり財団と対立。ダークエルフ戦では加速装置で戦うのですが、戦闘後、時の流れを解除できなくなってしまいます。桃華を救うため、また世界の終わりを救うため、異界に渡っていきます。桃華シナリオでの異界イベントは世界樹に巣くう魔獣との戦いがメイン。根を齧り、木を腐らせる魔獣を倒す際、炎属性のブレス攻撃によって世界樹も焼き払われてしまいます。ですが、ここは新芽が芽吹いていた〜というありがちなご都合主義によってカバーされます。こうしてエルフ少女は世界樹にエネルギーを与えるため眠りにつき、主人公くんたちは現世に帰って世界を修復したのでしたとさ。

水乃宮奈々ルート


  • 自己の存在証明
    • 水乃宮奈々は劣等感に苛まされる努力家ツンデレですわ少女。人権保護財団に救出されて以来エージェントとして働いてきましたが、友人だと思いたい冴木桃華と並び立つことができなくて、劣等感に悩まされていきます。そのため、禁忌に手を染め人工魔術回路を埋め込み、財団の使命を果たそうと主人公くんたちを襲ってきます。魔術がないと動くことの出来ない呪われた鎌シャルウルに、魔術はあっても魔法を使えない奈々が慰みを見出す場面はシナリオの中でも何度も強調されていますね。そんな奈々に対して対等でなくとも良いんだと受け入れてあげればフラグは成立。しかしながら第3部の異界編でも劣等感が炸裂します。主人公くんたちの「世界の終わり」を修復する世界樹の実を触ることができなかったのです。周囲と比較して自分を貶め、苦悩する奈々嬢をとくとご覧ください。悩みを抱える奈々でしたが、この時主人公くんに異常が発生。エルフ少女即位イベントの際、呪われてしまい、欲望に囚われてしまうようになったのです。残りの理性をかき集め、自ら牢獄入りした主人公くんでしたが、愛する人たちを殺しながら犯したいとばかり考えるようになってしまうのです。そんな主人公くんを奈々の愛情が包み込みます。欲望と理性で煩悶する主人公くんに奈々は自らの身体を差し出し、犯されるのです。こうして奈々の愛情パワーで主人公くんは救済され、この際奈々は魔術回路と引き換えに世界樹の実を触れるようになったのでした。なぜ触れるようになったかは説明されないがな!!そんなわけで現世へ舞い戻って、世界を修復しハッピーエンドを迎えます。

広原那由他ルート


  • 中二病の少女は自分を認めることができた
    • 中二病でも恋がしたい』が流行ったので量産された中2病徒ヒロインのうちの一種。学園の理事長である祖父がエルフの研究に没頭したためキチガイ扱いされ、そのような環境の中で自己を保つために中二病に罹患しました。そして祖父や自分をイロモノのまなざしで眺める一族に復讐するため,エルフ少女の謎を解き明かしていくことになります。那由他がエルフ少女フィアから与えられた異能は「魔術書の読解」。ダークエルフ戦では人工魔術回路を駆使して戦います。ですが詳しい描写もなしに、人工魔術回路を使うと寿命が縮まる設定が登場し、第3部の異界編に突入します。異界編のシナリオ量は他のヒロインと比べて極端に短い気がします。主人公くんと那由他が時空転移をしたときに5年間のズレが生じており、主人公くんが転移した時には那由他が女王として君臨していました。那由他が転移した時にはエルフの国は崩壊寸前で世界樹が枯れていたとのこと。そのため那由他は自らの命を削って、世界樹を修復していたのでした。主人公くんたちが那由他と再会するとあっさりとエルフ少女;フィアに禅譲。フィアが世界樹と同化することで世界樹の実も難なくゲットします。他のシナリオでの苦労はなんだったんだ!?と思わなくもありません。そして個別では唯一、現世に戻らないエンドとなります。その理由は世界樹の修築に命を削ったので寿命が尽きかけているとのこと。主人公くんを現世に戻した後、那由他は残された命を国の復興に使うのでした。