雑録

枯野瑛『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』01〜05・EX(KADOKAWA 2014〜2017)の感想・レビュー

挫折系主人公くんモノ。終焉を迎えつつあるセカイで死霊兵器少女との交流に人生の意義を見出して死ぬはなし。
01〜03までは死霊兵器少女クトリちゃんが主人公くんに生き甲斐を見出し、充足した生活を送った後、メガンテする。
04〜05は中二系セカイ設定伏線回収編となり、主人公くんが世界のために自分を殺させるルルーシュエンドとなる。
個人的なクライマックスは03であり主人公くんの煩悶やクトリの散りっぷりがとても良かったと思います。
04、05はちょっと蛇足感。末尾で主人公くん復活してるしクトリ転生してんじゃん……とちょっとガッカリ。
完全に挫折系主人公くんの物語であり、クトリの物語ではないので注意が必要かもしれません。

01〜03のクトリ編

  • 少女救済による自己救済
    • 中二系異世界ファンタジーで味付けされてはいますが、本質的な構造としては「かつて俺TUEEEした挫折系主人公くんが少女たちの交流を通して再び自分の人生に意義を見出す」という展開です。近年の作品では『蒼の彼方のフォーリズム』が近いでしょうか?少女救済救済。すなわち少女を救済するという行為の中に自己救済を見出すというパターンのですね。その中で本作ならではの特色を挙げるとするならば、ヒロインの死を描くことによって頽廃的な作風の表現に成功していることです。これにより終焉を迎えつつあるファンタジー世界という設定も活きてきています。ちゃんとヒロインの人生の終わりを描いているところがグッときますね。
    • 本作のヒロインたちは死霊兵器であり、襲撃者との凄惨な戦いを義務付けられ、最後に力尽きればメガンテさせられるという消耗戦を強いられています。次の戦いでは帰ってこられないかもしれない、次の戦いでは自爆せよとの命令がでている・・・そんな死線を舞台にヒロインたちの複雑な心情を描き出していきます。醍醐味としてはただ諾々と死を受け入れていた少女たちが、主人公くんとの交流の中で自意識を芽生えさせ、人生に意義を見出してから死んでいくところでしょう。
    • 色々なヒロインが出てくる中で、特にこの役割の顕著な事例として設定されているのが、正妻ヒロインのクトリちゃんなわけです。3巻まではこのクトリちゃんをメインに物語が進んでいきます。特攻を命じられたクトリちゃんが死を受け入れるまでの諦観、主人公くんとの交流により諾々とした死を拒否し生存率を上げるための努力をする修行回、死線を掻い潜ったものの人格崩壊が始まり喪失されていく記憶に悩まされるONE系展開、そして最後に主人公くんと結ばれ愛されていることを確信し、幸せの中でメガンテする最期などが非常に良く描かれており見どころとなっています。3巻で終わった方がスッキリだったかもしれません。

04〜05の中二系セカイ設定伏線回収編

  • フジリュー封神演義的なノリ
    • 4巻、5巻は死霊兵器クトリちゃんの話からは離れて中二系異世界ファンタジーの設定を回収する展開となります。主には主人公くんの前世や、終焉を迎えるセカイの舞台設定のはなしです。
    • 時系列的に要約すると以下の通り。(1)宇宙人が漂流してきたが、地上には未開な原始的荒野しかなかった→(2)宇宙人たちは自分たちを未開動物と融合させ、知的生命体として文明を構築→(3)しかし時代を経て交配重ねる中で人類増えすぎて宇宙人の遺伝子が薄まる→(4)ヒト野獣回帰&ヒトとしての業を背負っていたため魔獣化→(5)始祖の生き残りを破砕して魔獣化を防ごうとする→(6)主人公くん(前世)が俺TUEEEしながら始祖討伐するも石化→(7)始祖の断片を利用できず人類滅亡→(8)残ったヒトたちは地上を離れ浮島へと疎開→(9)500年経過後、主人公くん地上からサルベージされる→(10)クトリ編、魔獣討伐の戦いと繋がります。
  • 主人公くんの娘について
    • たびたび作中では主人公くんがヒロインの恋情慕情よりも孤児院の娘;アルマリアを優先する描写が出てきます。前世編では年もそんなに離れていない少女アルマリアがなぜ主人公くんを「おとうさん」と慕うのかが回収されます。アルマリアが孤児院に預けられることになった際、環境の変化から発熱したおり、人寂しさから主人公くんを求めた結果、父性としての象徴となったというエピソードが紹介されます(そして主人公くんは孤児院を守るために強さを欲して準勇者となった)。そんな主人公くんの娘となったアルマリアでしたが、主人公くん石化後に魔獣化してしまうのです。魔獣化した主人公くんの娘は無意識的に主人公くんを求めて拡散していくのですが、500年後の浮島セカイでクトリたちが討伐に励むのが、このアルマリア魔獣化ver.だった〜というオチになります。
  • 主人公くんの前世でのモトカノ、宇宙人の始祖、死霊兵器
    • 人類の魔獣化を防ぐための解決策とされたのが、宇宙人の始祖の生き残りであるエルクを殺して切片として砕き、原初のように融合させることでした。この時自らの命と引き換えにエルクを殺害したのが主人公くんの前世での女リーリァ。しかしエルクの死骸は不十分にしか破砕できず、人類と融合させられなかったので魔獣化は止まらずセカイは滅亡し、生き残りは空へと逃れました。この時に残された始祖エルクの断片こそが、死霊兵器の原料だったのです。エルクの断片からクトリたち死霊兵器が生み出されていたがゆえに、クトリが能力の使用の度に人格が崩壊し前世の記憶に悩まされていたのは、このエルクへと回帰していっていたからなのでした。
  • ルルーシュエンド
    • 主人公くんは魔獣化したアルマリアを500年の時を経て殺してあげます。その際、主人公くんもまた魔獣化してしまいました。この時、主人公くんの師匠が現れて、殺された始祖;エルクが復活し、主人公くんも記憶リセットと引き換えに魔獣を封印してもらいます。主人公くんはエルクと共に穏やかな時間を過ごすのですが、ここで最終局面へ突入。主人公くんが娘:アルマリアを殺害したため魔獣の侵攻がストップすると、死霊兵器をお互いの争いに使用するようになっていきます。そして従来は死霊兵器少女に聖剣握らせて魔獣討伐をしていたので人格への一定の配慮がありましたが、死霊兵器少女を動力源とするロボットが開発されたため、死霊兵器少女たちはただ単に燃料として搾取されるだけの存在へと堕ちようとしていたのです。この時に自らの命を犠牲にしたのが我らが主人公くん。新兵器ロボットを蹂躙した魔獣化主人公くんを聖剣少女に討伐させることで、ロボットよりも少女形態の方が有用であることを示そうとしたのです。そんなわけで、聖剣少女たちに最後の稽古をつけてやりながら主人公くんは自らを殺させるのでした。
    • と、まぁ、ここで終わってればよかったんでしょうけどねー。末尾には主人公くんがちゃっかり復活して死霊兵器工場へ戻り、クトリの転生体と邂逅して、ただいまエンドとなります。