南十字星恋歌 各個別√の感想・レビュー

グランドエンドが香乃梨√なのだが、そこに辿り着くための他ヒロインのシナリオが微妙すぎる。
各個別√がフラグ管理パーツにしかすぎなくなっているので、もう少しシナリオを頑張って欲しかった。
魅月先輩と都、主人公くんたちそれぞれの家族問題は、もう少し描きようがあったかと思います。
あと各個別で咲弥えもん万能すぎ。困った時は何でもかんでもITで攻略でござるの巻き。

パソオタ後輩(咲弥)ルート

学園の地下の謎を解き明かすはなし。シナリオすっかすか。主人公くんの妹のりなとれなが公国に雇われた事情(学園の地下のパスコードを解き明かすため)や担任の教員がスパイであることが明らかになる。中身はほとんどなく詳細は別のヒロインのルートでみてね!!という感じ。ヒロインのルートが全体のシナリオにおける伏線回収的な感じなってしまっています。故に咲弥ルートはほぼキャラゲーです。咲弥ルートの大まかな流れは【共通√における学園の地下探索の続き】→【地下の秘密を探るスパイと遭遇】→【スパイとの戦い】→【地下に秘められしスパコンで咲弥が大活躍】→【危機をしのいだ】という感じ。結局、主人公くんと咲弥はスパコンの謎を解き明かせずに終わり、色々なもめ事もいつの間にか片付いていましたという置いてけぼり感をくらう。咲弥はそのPCスキルを買われて各所からスカウトをされたという文が入るも、結局断り日常に回帰することに。なんだか消化不良的なシナリオだったことよ。まぁ子犬系後輩と存分に戯れることは出来る。

ビッチ先輩(魅月)ルート

シナリオぶん投げたー!!ヒロインが抱えている内面的な問題を何も解決させないし、将来に対する夢を語らせる一方でそれも書かないし、しかも主人公くんが勝手に暴走して自滅するだけというなんじゃそりゃ!?しかも都と香乃梨が完全にネタ要員と化し、最終的にはバトルプログラマー咲弥えもん無双が展開され学校長を倒してエンド。一応シナリオの流れを解説しておきます。魅月先輩はルーズでビッチな天才系キャラです。飛び級で課程は全て終了しているものの、研究生扱いで学園に残っています。魅月先輩は周囲からのプレッシャーをかけられていたのですが、主人公くんから「がんばらなくてもいいじゃないか、ニンゲンだもの」と認めてもらえたことでフラグが成立。そんな魅月先輩シナリオの主要な問題は、「母親とのわだかまり」と「学校長との対決」です。母親は一般人であり、天才肌であった娘に対して持て余し気味でした。ある時行った知能検査で高い数字が叩き出されると一転して魅月を可愛がり始めます。高い学費もなんのその、魅月を連れて日本から公国の学校までやってきます。魅月は初めて母親に褒められたので嬉しくなり、褒められつつづけるために勉強し続けました。しかし、魅月が飛び級まで果たし研究機関からも注目されはじめると、母は娘のことを怪物としか認識できなくなり、疎遠となってしまったのです。その後、母親は魅月を見捨てて日本へ帰り、連絡は一切途絶えてしまったのでした。そんなわけで魅月先輩は、母親に対して大きなトラウマを持っていたのでした。このトラウマをどのように解決するのかな?とぽちぽちを進めていくと、なんと解決されません・・・。しかも魅月先輩が将来はロケットをつくって宇宙航空産業に進みたいと思いを打ち明けるので、同日に発売された『はらわた(らりる)』と同じ展開かと思いきや、ロケットものにもならず収束していきます・・・。で、母親問題は、学校長との対決イベントで利用されることになります。魅月先輩を排斥するために学校長は母親からの承諾を受け、放校扱いにしてしまったのです。実家に戻されたら座敷牢で幽閉される可能性があるとのこと。主人公くんはこの危機に対して、勝手に暴走して自滅します。読者のみなさんはポカーン状態となったのではないでしょうか?まったく活躍しないどころが短絡的で粗野な思考しかできない主人公くん・・・。最終的にはIT戦士咲弥えもんが学校長の秘密を暴露して問題解決。なんかこう強引すぎるというかITって便利だねぇとかそんな感じ。

炉利騎士(エリーゼ)ルート

エリーゼシナリオは「騎士としてのプライドは己の承認欲求を満たすためだけの手段だったのさ」ということを悟るおはなし。エリーゼは貴族階級出身の真面目な炉利騎士さま。時代の流れとともに害悪となりつつある特権身分としての自分に苦悩しています。そんなエリーゼとの情交はおなぬー目撃から始まります(ありがち)。ある日、主人公くんから性的娯楽jpg漫画を没収したエリーゼでしたが、興味津々なお年頃であるエリーゼは自らの秘所に手を這わせます。そこへ謝罪しに来た主人公くんに垣間見られ昂揚したまま濡れ場に突入という展開です。無事に結ばれた二人でしたが、エリーゼは家庭と自己の存在理由の間で思い悩むことになります。貴族と平民(しかも黄色人種のジャップ)の間の関係など認められない・・・と思っていたら、あら簡単。エリーゼのお家は寛容でありエリーゼ自身のために生きるように理解を示してくれます。これに対し、エリーゼは自分が家から放任され期待されていないのではないか?と疑心暗鬼することになってしまうのですね。自己肯定感を持てず劣等意識に苛まされるエリーゼ。しかし、周囲からみればエリーゼは勝手に自滅しているだけであり、親兄弟はエリーゼのことを可愛がっているので、尊重してくれていることは明らかなのです。ウジウジするエリーゼに対し、現実が突きつけられます。家のために何かしたいとか言ってるけどそれって他者需要願望を満たすためだけのエゴじゃね?→ショック!!そしてエリーゼは気づきます。自分が己の承認欲求を満たすために騎士としてのプライドに拘っているのだと。悟ったエリーゼは肩書きが重要なのではなく仲間のための盾となることが騎士なのだと結論を出します。国家のために国民がいるんじゃない。人々が社会を構築して国家が作られたんだと社会契約説に目覚めるエリーゼ公爵家との戦いに立ち上がります。公爵家は学園の地下に存在している公爵家の始祖を担ぎ上げることによって、王家へのクーデタを起こそうとしていたのでした。主人公くんの妹たちを守るために、公爵に反旗を翻したエリーゼの活躍によってクーデタは阻止されることになりました。なんかすげーあっさり感。都が「身分制社会の弊害」とか「先進国の新興国における資本撤退」とか「客分意識」について蘊蓄を語る場面があるだけに、それらをもっと生かせれば良かったよなぁと思いました。以下牧原憲夫引用。

大多数の民衆にとって、「政治」は依然として他人事でしかなかった…だれが天下をとってもいいからともかく安心して飯が食えるようにしてくれ、という庶民の思いは、たんなる政治的無関心ではなく、現在の無党派層の政治感覚に通じるものがある…こうした民衆の政治意識をはやくから憂慮していたのが福沢諭吉だった…少数の「主人」だけが支配する身分制国家では、その他の者は「何も知らない客分」にすぎない。客分は国家の運命を心配する必要がない。国内だけならこれでもいいが、外国と戦争になれば…「我々は客分のことなるゆえ、一命を棄つるは過分なりとて逃げ去る者」が多いだろう…実際、戊辰戦争では藩や藩主の運命に冷ややかな領民たちの姿が各地に見られた…身分制国家では、被治者が国家に対する帰属意識、ナショナル・アイデンティティ(「わが国」意識)を持つのはむずかしい。これでは欧米列強と対抗して国家の独立を確保することはできない…福沢が「平等」を力説し「学問」を奨めたのは、民衆の「客分」意識を払拭し、「国民」としての自覚、国家のために命を棄てる覚悟を持たせるためだったのである。(牧原憲夫『民権と憲法岩波新書 2006)

ツンドラ従妹(都)ルート


  • フラグ成立編
    • 神経質で自分を追い込みやすいツンドラ従妹を愛でるキャラゲー。シナリオの中身はあまりありません。都は主人公くんの従妹で幼少期に棄てられ、同じ境遇の主人公くんと里山の祖父のもとで育ちました。のちに都は父親が引き取りに現れ、巨大企業の令嬢として育つことになりました。都はツンドラであるものの兄の幸せを一番に願い、兄が安寧に暮らせるように裏で画策していくことになります。兄が幸せになれるのだったらどんな女性でも良いと思っていた都でしたが、メインヒロインの腹黒腐女子皇女だけは許すことができません。なぜなら皇女と結ばれるなんて兄が苦労するのは目に見えているから。ゆえに都は香乃梨を妨害するのですが、その過程で兄に恋心を抱いていることを香乃梨に察せられてしまいます。都は自分が大企業の令嬢であることから、主人公くんと結ばれることに対して躊躇していましたが、香乃梨のアシストもあり自分の想いを暴露してフラグが成立します。
  • お家事情編
    • 都シナリオでは砥部家と波佐見家のお家事情がメインとなるのですが、残念ながら両者とも描ききることは出来ず、どうにもはなしが尻切れトンボ。まず砥部家問題では、主人公くんと異母妹ツインズの母親を名乗る女性が現れ、カネを揺すります。ここから主人公くんたちの出生の秘密が明かされていくのです。主人公くんたちの父親は野菜の品種改良の研究をする優秀な科学者だったらしいのですが、受精卵を代理母出産させ主人公くんを生ませたとのこと。しかしながら主人公くんは失敗作だったので、代理母が今度はカネを積まれて直接子どもをつくったのだとか。その子どもたちが主人公くんの異母妹ツインズ。さて母親問題はどのように展開するのかとポチポチ奨めていたのですが、また主人公くんは蚊帳の外で何もせず・・・。いつの間にか周囲が上手く立ち回り、母親が親権発動しようとしたのはカネのためであることが暴かれみんなの前で暴かれ、異母妹たちも母親よりも主人公くんのことを選んだのでした。主人公くんはホントウになにもしないな!これにて砥部家編はフェードアウトし、問題解決編は描かれません。手切れ金として都から札束を投げつけられた母親が、ばらまかれた札束をかき集めるシーンはなぜか印象に残っています。
    • 続いて波佐見家の問題。都が自分ひとりでウジウジと悩むシーンが描かれていきます。都は自分を引き取ってくれた家族のことを大切にしていました。ですが、それ故に自分が父親の出世の足枷になると思い込んでいたのです。都は父親が本社から新興国に飛ばされたのは、都を認知したがゆえに、浮気をして種を仕込んだことが問題になったためだろうと勝手に思い込んで罪悪感を感じています。そのため都は自分が主人公くんと付き合えば代理母出産や遺伝子組み換えが問題になり世間体が悪いだろうと考え、波佐見家から戸籍を抜こうと考えるのです。そこへ共通√で和解した都の義兄で生徒会長が家族愛を展開します。結局、都は一人で勝手に突っ走っていただけで、波佐見家は特に問題ともせず、主人公くんとの仲を受け入れたのでした。なんか、なんだかなぁって感じがします。