トリノライン「七波シロネ」シナリオの感想・レビュー

ウジウジ系主人公くんが自らをアンドロイド化するか否かで煩悶するはなし。
前作同様ブツ切りしたシナリオをツギハギした感まんさいでトートツに脈絡のない展開となる。
アンドロイドと結ばれるために自らをアンドロイド化しようとしたら副作用でホスピス化してしまう。
ホスピスとなった主人公くんはアンドロイド化するよりも死を選び、アンドロイドヒロインも死ぬ。
アンドロイドヒロインが見つけた幸福とは「主人公くんと寄り添うこと」だったので未練はなく逝けたとさ。
同じ問いに対しグルグルと回り続けているような感じで、最後まで読むのが結構大変だった。

概要


  • ウジウジ系主人公くんの煩悶がツライ
    • アンドロイドヒロインと結ばれるために主人公くんは自らをアンドロイド化しようとするのだけど途中でビビッてしまいウダウダしているうちに副作用で余命いくばくもない状態にイキナリなってしまい今度こそアンドロイド化しようともするのだけど、結局アンドロイド化せずに死を選ぶという内容。
    • 本シナリオのウリは主人公くんが非常にグジグジ・ウダウダとすることです。プレイヤーは彼に付き合う精神力の強さを求められます。本作は人間の面倒くささや煩悶を前面に押し出してきているので、その醍醐味といえるでしょう。プレイヤーがストレスを感じるのは以下の場面かと思われます。
      • 主人公くんがアンドロイドヒロインと結ばれたいので自分をアンドロイド化してくれとワガママ言い出したのに、ビビッてアンドロイド化することに躊躇しはじめる場面。
      • アンドロイド化問題に主体的な意志決定をしてくれればいいのだが「急展開」によってイキナリ余命いくばくもないホスピスとなる展開(=ホスピスになったからこそ<追い詰められたからこそ>答えを出さねばならなくなったということ)。
      • 自己をアンドロイド化してもアンドロイドヒロインにとっては別個体であるから結局アンドロイド化することをやめること。
      • アンドロイドヒロインが自らの幸福についての問いを死んだ主人公くんに課せられるのだが、結論として主人公くんと寄り添うことに幸せを見出したので、未練もなしに自殺を選んだこと。


  • ブツ切りシナリオの継ぎ合わせ
    • 前作の『罪ノ光ランデヴー』でも感じられたのですが、ブツ切りされたシナリオを無理やり繋ぎ合わせたような違和感がすごいです。特に顕著なのが、体験版共通√において主人公くんの母親が自分のムスメのコピー体であるアンドロイドに嫌悪感を剥き出しにして追放したのに、製品版シロネ√で碌な描写もなく和解させた場面。一応母親にシロネを認めた理由を説明するセリフを吐かせるのだが、イキナリ母親が出現して和解にもっていくトートツさが否めません。あれだけシロネを嫌ってた母親像は何だったの?そしてこの取ってつけたかのような和解の後、母親の存在は空気となりほぼ出てきません。
    • そしておそらく多くのプレイヤーは主人公くんのホスピス化にポカーンとなったのではないでしょうか。何の脈絡もない「急展開」だなオイと。一応作中では、アンドロイド化したいとワガママいった主人公くんのために脳のスキャンを頻繁に繰り返した結果、負担がかかりすぎて異常が発生し、もうすぐ死ぬこととなったとの設定が紹介されます。ウジウジ系主人公くんの煩悶に付き合わされた結果、彼が答えを見出すことができればまだプレイヤーは納得するでしょうが、何も答えを見つけられないままで違うステージに移行しちゃうのはどうなんでしょうね。健常者とホスピスではそれこそアンドロイド化に対する考え方が違うのでしょうし。
    • おそらくメーカーの意図としては、夕梨√とシロネ√を対比的にしたかったのかなと推察されます。すなわち夕梨√はヒロインがホスピスであり主人公くんと寄り添うためにアンドロイド化することを選ぶ一方で、シロネ√でホスピスなのは主人公くんでありその主人公くんと寄り添うためにアンドロイドは死を選ぶという結果になります。「主人公くんと寄り添う」ことに幸福を見出すという構造は一緒だけれども、その在り方が違うというのを表現したかったのではないでしょうか。まぁテキトーですが。