ぼくの一人戦争 第二体験版の感想・レビュー

第二体験版は主人公の蓮司が弟の永治を見切る所から戦争に巻き込まれる所までプレイできる。
永治のこれからの扱いが気になるところ。まだ序盤であり、物語の目的はまだよく分からない。
家庭環境が最悪な貧困下位層が閉鎖的な田舎で繰り広げる猟奇的戦争ごっこものな雰囲気?
第二体験版で語られるのは主に以下の二つ。
・孤独を抱えていた蓮司が同じくぼっちであった犬塚るみと情交を深めてきたこと。
・蓮司は異空間的・並行世界的な場所で戦争を行いつつ、現実と行き来するようになること。

第二体験版概要


  • 弟との戦い
    • 第一体験版では『車輪』や『魔王』でも使用された視点変更トリックで読者にミスリードを誘いつつ、弟の永治が兄蓮司の婚約者である犬塚るみを強姦しようとした所までが語られました。第二体験版では強姦を防いだ蓮司が永治と戦うところから始まります。戦闘のなかで犬塚るみ強姦未遂だけでなく、蓮司の友達である医者の息子から財布とケータイを巻き上げていたことや、怪我を負わせていたことなども判明します。義足である蓮司は苦戦を強いられますが、ボクシング経験者ということもあり、獣のような攻撃しかしてこない永治を凌ぎきり倒します。その後は永治を父が残した作業場の山小屋に軟禁しつつ、東京の不良少年更生NPO団体に弟を送り返すことになったのでした。読者的には永治が逃げ出すなどの一波乱があるのではないか?と予想していましたが、そんなことはなく、あっさりと送還されます。蓮司が保護師的なオヤビンから「自分から弟の面倒を見ると言いだしたくせに手に負えなくなるとあっさり見切る」と揶揄されたり「いきなり温かい食事と気の良い友人を与えるのではなく、ほっといて自分から穴蔵から出てくるのを待つものだ」と諭されたりするテキストはナカナカ深いものだと思いました。そんなわけで己の愚かさを悟った蓮司は今は無理だがまた会おうと別れるのでした。あっさり。永治の巻き返しはあるのかな?


  • 犬塚るみのキャラクター表現とフラグ生成過程
    • 弟の永治がもたらしたのは破壊と混乱でしたが、逆に蓮司とるみの関係を深める契機ともなりました。孤独であった蓮司にとって弟を送還しなければならなくなったことはツライ現実でした。そんな折り女を求めてしまうのはまた当然でもありますが、ここでは何故るみが蓮司と一緒にいるのかが述べられていきます。るみもまたぼっちであり、家にも学校にも居場所がなかったのです。るみの家は狭い平屋建ての貧乏暮らし。寝たきり老人の祖母と酒を呑んで暴れてはパチンコ通いをする兄、パッパラパーどうしようもない姉が特に描写を割かれて紹介されています。るみは家族の誰とも良好な関係を結べないまま一人寂しさ抱えてさすらう毎日。それでも孤高に佇むかんばせは蓮司の心を強く打ったのです。こうして蓮司から告白して結ばれたのですが、片足を潰された蓮司をるみは甲斐甲斐しく世話してくれます。しかしながらここに蓮司の邪推が生まれたのです。どうしてるみはこんなにも自分に尽くしてくれるのかと。るみの内面や負の感情がない様子に逆に蓮司の疑念が募るのです。そんな時、蓮司に過去の女;錦戸が言い寄ってきます。するとどうでしょう。るみは普段見せないような嫉妬心からか、どうしようもない感情をさらけ出してくれたのでした。そして蓮司の過去の女錦戸との対面にるみも同席することに・・・。そしてここで錦戸の真実を知り、るみは一転して仲良くなります。その真実とは、(a)錦戸が蓮司に言い寄ったのは「グループ」内部でイジメを受けており無理矢理やらされたのだということ、(b)「グループ」がるみに嫌がらせをするため、るみに弁当を作らせそのまま棄てた時には錦戸だけは棄てることなく家で食べたこと、(c)錦戸は今は「グループ」から追い出されぼっちであること、などなどです。るみは弁当事件にショックを受けていたたのですが、あとでスタッフがおいしく頂いたことを知り、ぼっちであることからもその女に好意を示すようになったのでした。


  • 戦争にまきこまれた
    • さぁタイトルにもあるように「戦争」とは一体何なのか?という疑問がプレイヤーは尽きません。第二体験版ではほんの少しだけゆっくりと「戦争」に近づいていくことになります。それは現実とは異なる並行世界的な雰囲気がするところに召還されるという展開。そして「王」と認定された人物は周囲の人物を「兵」として扱い、架空の敵と戦うのです。主人公くんはかつて「兵」として戦ったことがあるかのような描写が成されています。そしてその「並行世界的な何か」の場所での記憶は容易に現実を塗り替えていくとのこと。序盤で紹介されるかつて「王」だったことがある人物は、(a)元・島のアイドルだった芸能人と(b)蓮司の母親。前者(a)については飲酒運転と暴走運転で蓮司の足を潰した本当の人物でした(※なぜか蓮司はラスボス?の長門大地だと思い込んでいますが・・・)。また、(b)の蓮司の母親も「王」として戦争を行っていた人物であろうことが、過去の手紙により判明します。主人公くんは製造業の職人であった父親を尊敬する一方で、頼りない母親に疎外感を持っていました。母親に褒められたくて勉強を頑張っていたこと、弟をしつけるためにボクシングをやっていたことなどのモノローグが入り、母親に自分の本音を語らなかったことを後悔するのでした。蓮司の母が残した最後の手紙には自分の行動が蓮司に寂しい思いをさせたという謝罪の言葉と蓮司が欲しくても欲しいと言えなかった鮮やかな手工のお守りが入っていたのです。感傷にかられる蓮司でしたが、平和な時間も長くは続きません。なんと今度は並行世界に飛ばされ「王」となったのは蓮司自身だったのです。眼前には完全に性格が好戦的になったるみが刀を携えて侍っていました。この好戦的なるみは一体!?この並行世界的な場所での戦争とは何なのか!?という所で体験版はお開きです。