雑録

なついろレシピ「八重原柚シナリオ」の感想・レビュー

身寄りを亡くし天涯孤独となった少女への憐憫を「夏」「田舎」「食」で彩ったおはなし。
結構面白く感じ、個人的には良ゲー。イヤ、ホントに。おすすめ。
一緒にいるために兄妹であろうとし、さらに深い仲になりたいが故に兄妹であることを否定する。
田舎を賛美するだけでなくその封建的な閉鎖性もテーマの一つとなっている。
「食」を通じて血縁の伝統と継承を語るところがステキ。

八重原柚のキャラクター表現とフラグ生成過程


  • 天涯孤独×面倒くさい可愛い×不器用だけど成長中
    • 八重原柚は親戚連中をたらい回しにされやっと落ち着いた先で祖母を亡くし天涯孤独となった黒髪ロングの女の子。そんな柚から主人公くんの元へ救済を求めるお手紙が届きます。主人公くんの父親は槍鎮であり各地で子種をばらまいていたため、主人公くんはいつも後処理に追われていました。主人公くんは柚が異母兄妹ではないことを早期に知るのですが、身寄りのない少女に憐憫を感じ「兄」として支援をしていくことになります。主人公くんは寡黙ながらも実直な感じで好感も持てますね。柚は面倒くさい自分をきちんと相手にしてくれて、困難の時にも頼れる兄さんに好感度は鰻登り。祖母が残した食堂を再建し、お盆に祖先の霊を鎮魂する頃には心を許せる関係になっていました。そんな折、お盆が過ぎて遺品の整理をしていると、衝撃の事実が発覚します。なんと柚は自分の父が主人公くんの父と全く違う人物であると知ってしまったのです。つまり2人は異母兄妹でも何でもなかったのですね。ここから疑似異母兄妹生活が始まり、柚も主人公くんも一緒に居るために血縁関係でないことを隠すことになったのです。



  • いきなり1年後(フラグ成立編)
    • お盆における疑似異母兄妹からいきなり1年後にスキップ。1年を通して主人公くんと深い絆を育んだ柚はついに関係を進めることを決意します。お盆の灯籠流しにおいて、柚は父親の分も灯籠を作成して鎮魂したのでした。つまりこのことは、「主人公くんの父≠柚の父」であることを意味するものであり、異母兄妹でないことを告げるものでした。柚はこのことにより主人公くんに兄としてではなく、異性を感じていることを示したかったのですが、堅物な主人公くんはあくまでも兄であろうとします。柚が不安がっているのは、異母兄妹でなくなると孤独になってしまうからだ・・・と主人公くんは思っていました。そのため異母兄妹でなくとも自分は兄として柚のそばにずっといると宣言してしまいます。兄であろうとする主人公くんと異性を求める柚のすれ違い劇場が始まります。柚は料理においても足手まといであり、主人公くんが何でも1人でやってしまうことにも不満をもっていました。ここで2人が和解するためのモチーフとなるのが自家製ピザ作りで、柚が自作できる料理をピザに取り入れながら協力作業をすることでフラグが成立していきます。ここで主人公くんが柚との関係を認めるために、村を一望できる景色をみて決意を新たにするシーンは個人的名シーンとなっています。



  • 田舎の閉鎖性編(ちょっとご都合展開ですが)
    • フラグが成立した2人でしたが、乗り越えるべき壁が田舎の閉鎖性でした。主人公くんと柚は異母兄妹であることを田舎に受け容れてもらうのにも莫大な苦労を必要としました。せっかく2人が兄妹として受容されつつあるというところに、今度は実は兄妹ではありませんでしたーと言わなくてはなりません。下手にばれてしまえば村人にとって「信頼の裏切り」、「手の平を返された」と感じることなってしまいます。ゆえに主人公くんと柚はその関係をどのように理解してもらうかを考えねばなりませんでした。悩んだ主人公くんは地域協同体のリーダー的存在である婦人に相談します。するとどうでしょう。過疎化が進む田舎にとって人口問題は死活問題であり若い二人が子作りに励んでくれることは村の発展に繋がると喜んでくれたのです。主人公くんと柚は、いつも周囲の人々から温かい目線で見守られてきていたのだという事実を再確認することになりました。こうして村の女性陣の根回しが始まり、二人の関係を認めないであろう因業ジジイたちへの説得工作が進んでいくのです。また柚は荒唐無稽にチャレンジをするのではなく、「自分が出来ることに加えてほんのちょっぴり背伸びをする」ことを覚えて、フレンチトースト作りに成功します。成長した柚は村の会合において郷土料理のお茶請けを出すことで周囲に認められ、村人受容問題は解決するのでした。



  • 遺骨と墓について編
    • 村人たちに受容された主人公くんと柚は、生涯村人として過ごすため、お互いの母親の遺骨を墓に納骨することになりました。主人公くんの母親の遺骨はすんなりいったのですが、親戚連中をたらい回しにされていた柚は母親の遺骨を探すのも容易ではなく、連絡を取ると冷たい言葉を浴びせられます。何とかして母親の遺骨を探し出し、かつて住んでいた街に引き取りにいくことになります。柚は主人公くんに街を案内するのですが、住んでいた家はもう既に無く、切なさを刺激させます。しかしそこで柚は、母親が作ってくれたラーメンを思い出すのです。主人公くんはそんな柚のために母親ラーメンを再現してあげたいと挑戦していきます。これまでのように主人公くん一人で何でもやってしまうのではなく柚と一緒に再現していくところに関係性の深化が垣間見られて良い感じです。柚の協力から「麦茶のポットに煮干しダシを作っておく」ことに考えが至った主人公くんはついにラーメンを完成させます。天涯孤独となっていた柚でしたが、祖母の店で母の味を再現することで、血縁の伝統が続いているのだなぁとしみじみと感じ、主人公くんと血筋を継承させていくことを改めて誓ってハッピーエンドを迎えます。