妹のセイイキの感想・レビュー

なかひろ先生による聖域シリーズ第2弾。家族ゲー。
妹における両親とのわだかまり問題を解決に導くはなし。
「幼少期の孤独」と「事故による両親との疎遠」を乗り越えさせろ!
兄だからこそ好きになり、妹だからこそ好きになったという兄妹恋愛関係がウリ。
今回も主人公くんとヒロインの関係性変化にサブキャラ達が大活躍。
第3弾「ロシアのセイイキ」と第4弾「コンビニのセイイキ」はでるんでしょうね?

名瀬ゆかなのキャラクター表現とフラグ生成過程

名瀬家の家族問題編

  • 如何にしてイモウトの好感度はマックスとなりしか?
    • 名瀬ゆかなは妹ツンデレの中学三年生。兄に対しては最初から好感度マックスだぜ。ではどうしてイモウトは兄に対して好感度マックスなのでしょうか?その謎はシナリオが進むごとに明らかになっていきます。イモウトは幼少の頃、家族にあまり構ってもらえず寂しい気持ちを抱いていました。そんな折、イモウトはバレンタインを利用して両親に甘え家族の絆を再生しようと試みます。滅多にしたことのないおねだりをして両親とイモウトの三人でお出かけをするのですが、そこで大惨事。なんと交通事故に巻き込まれ川に車が転落してしまったのです。両親たちは自力で川岸に辿り着いたのですが、イモウトは溺死寸前の所でレスキュー隊に助けられたのでした。この事故を契機に両親は「娘を助けず自分たちだけ助かった」と負い目を抱くようになり、距離を取るようになってしまうのです。イモウトはイモウトで両親に見捨てられたという思いと自分のワガママが事故に繋がったという思いで塞ぎ込んでしまうのでした。
    • この事故により、主人公くんもまた兄としての自覚を促されることになります。これまで主人公くんはイモウトにあまり構ってやらず外で遊ぶのが大好きな少年だったのです。しかしイモウトが孤独を感じていたことが事故の遠因であったことに気づくと、自分の罪を知り、これからはイモウトのために生きようとするのです。イモウト救済。しかし心を閉ざしたイモウトをオープンハートするのは並大抵のことではありません。幼少期の主人公くんにはイモウトを喜ばすという命題が与えられたのです。幼少期の主人公くんは無い知恵を絞り、ぬいぐるみ作戦を展開します。イモウトの好きなぬいぐるみを使ってコントを行ったり、ゲーセンでぬいぐるみをとってはプレゼントしたりしたのでした。主人公くんが幼少期にゲーセン通いをすることになったのはイモウト喜ばすために人形をゲットするためだったことが明らかになります。
イモウト関係性変化を支援するサブキャラたち


  • 店員ちゃん
    • 主人公くんの近所のコンビニの店員。バイト初心者の頃レジ打ちに手間取り周囲の客が舌打ちをするなか、主人公くんが寛容な精神を示してくれたことに救われてオープンハートします(『彼女のセイイキ』でのエピソード)。それ以来、店員ちゃんは主人公くんと世間話をするようになり、相談事にも乗るようになっていったのです。既に答えは出ているものの躊躇して踏み出せない主人公くんの背中を押すのはいつだって店員ちゃん。主人公くんがイモウトとの関係を受け入れることに躊躇している姿を見て、「好きって気持ちは、ほかのどんな気持ちよりも勝ると思うんです」とアドバイス。主人公くんへの想いを募らせながらも今日も店員ちゃんはレジを打つのでした。今回店員ちゃんとのエピソードとしては、「常連客の趣向を覚えておく」話が挿入されます。レジ打ちのバイトでは往々にして清算処理マシーンロボットとなること請け合いであり、単なるバイトである以上それでも別に問題ないのですが、それでも客の趣向を把握しておくことで労働疎外から脱却しようとする店員ちゃんの姿勢にしびれる憧れる様子が楽しめます。



  • ロシア
    • 素直クール炉利枠の同人腐女子。兄妹愛と恋愛について悩む主人公くんに対し、「妹モノは日本の誇るべき文化」と応援してくれるのがロシア少女マイカです。兄妹モノは歴史が古く、古代エジプトオシリスとイシスや日本におけるイザナギイザナミなど、創生神話からしても妹モノなのです。また日本史の教員の皆さんは「倭の五王」が出てきたら、允恭天皇のエピソードとして木梨軽皇子の逸話を必ず紹介しますよね!!話題がずれましたが、日本文化を愛するマイカもまた二次元におけるキャラクター表現を語ることで主人公くんの背中を押してくれるのです。以下引用。

二次元と三次元はたしかに区別するものではあるけれど、差別するものではないと私は考える。二次元のキャラクターが現実の人間より低次元の存在だからといって、三次元に劣っているとは限らない。むしろ、次元がひとつ減って、よけいな情報を削ぎ落としていることで、より洗練されているともいえる。つまるところ、高次元の存在が、すべからく低次元の存在よりも偉いわけではないということ。たとえば私たち三次元の存在が四次元の存在に全て劣っているとしたら、私たち人間の存在意義は失われてしまう。なぜなら私たちが生きるこの宇宙は三次元よりもはるかに高い、十次元で成り立っている。そうなると三次元というのは、全体で見れば低次元の方に近い存在。だけど私たち人間は、三次元の存在として生きるしかない。だったら私は、その次元の命にも意味を見出したい。同じように二次元だからこそ、三次元に勝る部分はあると思う。

      • また今回はマイカ√の伏線もちりばめられています。ロシアのお嬢様であることが指摘され、新学期になると学園をいきなり退学してしまうという展開です。遅刻しそうなマイカとお手々繋ぎ登校などの描写もあり、次回作への期待が高まります。
イモウト的アウフヘーベン


  • お兄ちゃんがあたしのお兄ちゃんだったから、お兄ちゃんのことが好きになったんだもん
    • 『妹のセイイキ』の根幹的なテーマとなっているのが「“兄妹”であり“恋人”である」という関係です。最後の選択肢にもそれが象徴されています。主人公くんは家族問題をイモウトと一緒に解決していくなかで、イモウトからの愛を一種の「依存」であると思い悩むようになります。両親とのわだかまりが解消した後、その苦悩は一段と増し、最終的に選択しに委ねられるのです。兄妹との関係に戻るか、恋人の関係になるか、両者とは異なる関係を模索するかの三択です。兄妹との関係に戻ると『彼女のセイイキ』の冒頭部分へと繋がります。また恋人の関係を選ぶと、兄妹の関係が否定されてしまいイモウト=アイデンティティが崩壊してしまうことになります。イモウトが求めていたものは「お兄ちゃんがあたしのお兄ちゃんだったから、お兄ちゃんのことを好きになったんだもん」というセリフから読み取ることができます。これはヘーゲル弁証法で考えると分かりやすいかもしれません。「兄妹」と「恋人」という矛盾・対立を「イモウトコイビト」という関係にアウフヘーベンするわけですね。