恋×シンアイ彼女「姫野星奏ビターエンド」の感想・レビュー

同じ少女に二度振られた自意識の強い少年がその想いを小説を書くエネルギーに昇華させるはなし。
少年は二度同じ少女とフラグを構築し、二度フラグを崩壊させられる。
一度目は振られたことにより精神崩壊するが、二度目はその反動を力に変える。
日常パートは結構ぬるいキャラゲーでグダグダなのだが星奏との過去話は結構面白い。
しかし過去編は体験版でほとんど読めてしまうので体験版攻略済みプレイヤーは結構残念な気分。
星奏がなぜラブレターの返事を書かずスルーしたのが物語の原動力。
なんと星奏はシンガーソングライターでありバンドの一員だった。それがバレると去っていってビターエンド。
主人公くんは別離を契機に小説を書きエンドロールを迎えるがエピローグでも関係修復されず幕を閉じる。

ツマラナイ日常パート×体験版で殆ど読める過去回想×だけど最後はビターエンドで結構好き。


  • フラグ構築→フラグ崩壊→フラグ再構築
    • 主人公くんは幼少期より文才に優れた子どもであり、自意識の強い内面的な性格だった。当時、転校してきた少女であり、周囲に流されずマイペースに作曲をする少女姫野星奏と仲良くなる。二人は情交を結び良い感じな仲になっていく。星奏が転校する際、主人公くんはその想いをラブレターに込めて渡すのだが星奏にはスルーされてしまう。主人公くんはその時両思いだと信じこんでいたため、何も反応されずにスルーされたことは精神崩壊を起こさせるのに充分だったのである。高すぎる自意識と内向性によりショックが倍増した主人公くんはそれ以来小説をまとめ上げることができなくなった。その結果、中学時代をやや退廃的に過ごし(そのおかげでヒロインBと仲良くなるが)、高校生になっていた。
    • 高二に進学した際、再び姫野星奏と遭遇したことにより主人公くんの時間が動き始める。もとよりフラグ構築が済んでいた二人は「やけぼったいにひがつく」状態となり好感度蓄積もうなぎのぼり。しかしここでもう一度試練が訪れる。姫野星奏はまたしてもイキナリ転校することになったのだ。ここで主人公くんが精神的成長を見せる。かつての幼少期主人公くんはラブレターを書いたものの「自意識という恐怖をこえてまで伝えるべきものがなかった」と描写されている。つまり主人公くんが星奏に当てて書いた想いは自己満足。すなわちオナニーに過ぎなかったのだ。この場面で「主人公くんへのラブレターをスルーされたヒロインB」が「ラブレターの返事をスルーされたら自分で取りに行かないとね」と示唆するシーンはとても印象的な構図であった。そんなわけで主人公くんは立ち上がり、去りゆくバスに向かって星奏が好きだぁぁあぁぁぁぁと叫んでフラグ再構築完了。



  • 秘密を抱えたままでもフラグ構築できると信じていた時期が私にもありました。
    • 日常パートもう少し何とかならなかったんですかね?過去と現在の描写を交互に交えてプレイヤーに見せていく紙芝居の表現技法を使っているが故に、過去話が既に体験版で提示されており現在の日常パートがグダグダだと正直いって如何ともしがたい。物語を進行させる原動力を「なにゆえ星奏はラブレターをスルーせしか」ということと「星奏がもういちど聴こうとしてい星の音」に依存してしまっている。この答えを主人公くんは「ぼんやりと受け入れる」ことが大事と言っておりそれが結構ナイスなテキストとなっており引用を思わず書き出したくらいなのだが、あっさりと手の平を返され急展開に陥る悲しさよ。なんと星奏はアイドルバンドの一員だったのだ。星奏は既にシンガーソングライターとしてデビューしており、幼少期の転校やラブレタースルーはこれが原因だったのだ。星奏は主人公くんと付き合うことで、星ノ音を再び聴けるようになったのである。主人公くんたちにバンドのことがバレると星奏はさっさと去っていく。
    • 主人公くんよ!さっきスルーされたら自分から拾いに行くことが大事っていってたやん行けよと思いつつも、主人公くんがとった手段は小説を書くこと。再構築されたフラグが再び崩壊された主人公くんは、その失恋を小説を書くエネルギーへと昇華させ、過去作品の続編を書き上げ出版にまでこぎ着ける。流れるエンドロール。多くのプレイヤーは「どーせこのあとエピローグで主人公くんの小説を読んだ星奏と復縁するんやろー(ホジホジ)」と思っていたことでしょう!!なんと復縁されない!!!主人公くんの小説を読んだ星奏はサインを貰いに来て三度出会うことになるのだが、何も言わずに去っていく。ビターエンド。良い意味で最後を裏切られた感覚。主人公くんは女に振られて小説を書けなくなったが、女に振られることでまた小説を書くことができるようになったというオチが面白いね。もうビターエンドが正史でいいよ。