まいてつ「日々姫√」の感想・レビューの感想・レビュー

市長選選挙で工場誘致派の金融資本家と政治闘争するはなし。
被選挙権の年齢とかは誰も気にしない。そして熊本県で工場汚水って水俣病ネタで結構ナイーブ。
金融資本家サイドの弱点は、民草を基盤としない画一的な上からの開発にすぎないこと。
(しかし主人公くんサイドもおもちゃの模型のレイアウトで大衆的無党派層の支持を取り付けることは可能なのかしらん?)
追い詰められた際の切り返しで工場誘致に成功したケースを例示し、景観がそっくりになってしまう弊害を指摘したところは結構ステキ。
あと最近の作品はバッドエンドなくなってしまったけど市長選敗北エンドとか見てみたいよなぁと。

市長選挙


  • 金融資本家サイドの動きについて
    • ライバルヒロインサイドにおいて気になる点は、金融資本家側が「独りよがりの様々な地域開発」を行ってきたことです。様々な観光プラン、田舎を生かした体験事業、駅弁やゆるキャラなどに挑戦してきたのですが、それらはジモティーたちを無視した善意の押しつけに過ぎなかったのです。これを「民衆を巻き込むことができなかったリーダーの限界」と捉えるか「わざと失敗し既存の地域開発ではうまくいかないことを実証した」と捉えるかで金融資本家サイドへの評価も変わってきそう。本編では後者であるようにとらえさせるような展開になっています。すると、かなり前の段階から水質汚染の可能性のある工場誘致を行おうとする準備がなされていたことにつながります。しかしそう考えると、なぜそんなに工場誘致に拘るのかが描かれなかればならぬと思うわけです。とても気になります(ライバルヒロイン√で語られるのかな?→※稀咲ルートで工場誘致に強いコダワリがあるわけではないことが暴露されます)。また、金融資本家サイドが選挙で負けた点も民衆を見ようとないトップダウン方式であったためなのですが、これももう少し内面描写が欲しかった。良くある話ですが民衆を信じられなくなった絶望感満載のエピソードなんかがあると深まったかと(ナロードニキ運動とか)。それと金融資本家サイドがマスメディアを操って世論誘導するところは面白かったかな。日本のマスコミはジャーナリズムじゃなくてエンターテイメントなんだぜ!?なパターン。



  • 民草からの動きではないと本当の改革には繋がらないのです
    • 社会体制の変革というものは一部の知識人が変えようとしても変えられないのです。生活が追い詰められた大衆たちがジリ貧になってようやく立ち上がった時にうまくそのエネルギーを利用できると社会は変わります。例えばなしをしましょう。すでに沈むと分かっている船においても人々は眠ったまま。ここで聡い人々がわめいて何人かを目覚めさせることに成功したとしても船は沈んで死にます。ならば目覚めさせることは本当にその人にとって幸せなのだろうか?というおはなし。ここにおいて科学技術の力で船そのものをサルベージしてあげようというのが金融資本家サイドであり、全員で船を沈めないようにあがこうとするのが主人公くんサイド。大衆エネルギーをガン無視する金融資本家に対して、口を開けてただ待っているだけの人々に餌を与えるのが政治家ではないとイモートが演説するところはみどころ。そしてイモートが苦心してドブ板選挙したジオラマ(Nゲージのレイアウト)を嘲笑されたときの切り替えしはグッとくる展開です。工場誘致に成功したことを謳う地域の景観を比較させ、その画一性を指摘するのです。工場誘致は確実に地方の独自性を破壊して全てを塗りつぶしていますよと。私たちジモティーの伝統産業を活かした都市計画は画一的な整然さはないけれどモザイクのように美しいのです。こうして市長選に勝利しハッピーエンドを迎えます。バッエンドで工場誘致後の地方崩壊エンドもみたかった。