フローラル・フローラブ「碧衣愁シナリオ」の感想・レビュー

オマケシナリオ枠。神に仕える敬虔なキリスト教徒のシスターを情欲に染めてしまうはなし。
シスターとの情交が司教に報告されて一度は関係を断つのですが、その後も内密に関係を持つんかい!?
いや『僕が天使になった理由』のように肉体関係や婚姻関係を超越した関係性を描くのだと思ってました。
まぁカトリック教会の腐敗は聖職売買や聖職者の妻帯などで世界史教科書でもお馴染みのものですが・・・
ルネサンス期で有名なボッカチオの『デカメロン』3日目第10話のキリスト教批判を彷彿とさせます。

雑感


  • 主人公精神崩壊から始まる神の愛
    • 夏乃√では「善意からの隠蔽」を解決することで主人公くんは過去から解放されることができました。しかし教会√では「主人公くんは自分が震災孤児であり母親が盗んできた子どもであったという事実」がワンクッションなく判明してしまったので主人公くんは受け入れることができませんでした。そのため主人公くんは自分の存在意義を見失ってしまうのです。ここで主人公くんは自分が保有する「異能」を拠り所にするかしないかで選択肢が分岐し、異能による自己肯定を選ぶと碧衣√に入ることができます。他者需要願望を満たすことに生き甲斐を見出した主人公くんは碧生さんに褒めてもらおうと異能を多用します。当初は与えられた任務をこなすだけでしたが、次第により多くの褒章を求めて主人公くんは暗躍しはじめてしまうのです。この背景には主人公くんの自分がどうなっても良いという刹那的で捨て鉢な態度があり、碧生さんはこれを危惧していたのです。主人公くんに甘えられるうちに情に絆されていった碧生さんはとうとうシスターであるにもかかわらず肉体関係を持ってしまうのでした。



  • 筋を通さず内密の関係を持ち続けるよエンド
    • シスターと信徒の情交はあっさり周囲にバレて問題となり、碧生さんは更迭されかけます。主人公くんは今までは碧生さんに甘えていただけであり、そこに愛はなかったと思っていました。しかしこの更迭問題を契機に、自分はどうなってもいいので碧生さんを救いたいという気持ちが発生し、主人公くんは自分の内部における愛に気付いたのでした。こうして主人公くんは司教に申し開きをし、碧生さんも悔い改めるので学校付きシスターにとどまりたいと願い出ます。ここでは「ゑロゲにおけるゑロの否定」パターンになるのかなーと思って読み進めてました(手を繋がずとも接吻をしなく肉体関係を持たなくとも傍にいて欲しいと願う『ぼくてん』幼馴染√や主人公くんと結ばれなかったイモウト像を描き切った『となコイFD』グランドエンドとか)。
    • しかしこの作品では筋を通さないまま内密の関係を持ち続けることになります。司教に対して関係を持たないと説明したのに、バレなければいいんですかと。ここらへんが微妙なところであり、碧生さんが学園付きシスターであることに拘る理由が碧生さん√では明確には描かれていない(※いちおう碧生さんの師匠から修道院を継承されたエピソードが挿入され何となく匂わせている描写はある)ので、単なるワガママというか不義のように感じられてしまうんですよね。神の愛を蹴って主人公くんの愛を選んでも良かったと思うし、神の愛のために肉体関係を持たないことを選んでも良かったと思うんですよ。しかしシスター辞める気ないし、学園からも動きたくないし、主人公くんとの肉体関係も持ち続けたいってどうなんでしょうね?他の√で碧生さんが学園や主人公くんに執着する理由がきちんと回収されるのかしらん?