雑録

よめがみ My Sweet Goddess!「3周目アイリス√」の感想・レビュー

兄の魂を孕んで息子として転生させた後にインセストタブーして冥界堕ちセカイ系エンド。
孕んだ息子に愛情を寄せる姿は『朝霧の巫女』。愛する男の影を受け入れる姿は『ドラクリウス』。
主体的にセカイ系を選び取り友と別れて階段を上るビターエンドは『さくらむすび』を想起させる。
個人的にグッときた描写は裁縫道具の指ぬき婚約指輪。こういった素朴な感じがとてもステキ。
逃避行的なセカイ系ではなく主体的意志尊重方面のセカイ系だったので結構好きなビターエンド。

アイリス√概要


  • 孕んだ息子に愛情を寄せる歪んだ母性愛について
    • 昔『朝霧の巫女』という漫画があったのですが、その裏ヒロインである猫又のこまさんは、愛する男を死姦しその子どもを身ごもりました。そしてその息子に執着し最後は縊り殺すになり、今度は孫にまで絡みついていくのです。私は多感な時期にこのような作品を読んで衝撃を受けたものですが、そういえば中学の図書室で読んだ『火の鳥望郷編』でもコールドスリープしながら自分の息子や孫とまぐわって子孫を残していった展開でしたな。このように属性記号「炉利BBA」が自分の直系子孫たちとインセストタブーをするという構造は割と名作が多いのです。本作でもアイリスの歪んだ愛情が良く表現されており、女神闇堕ち魔神化という設定を良く活かせていると思います。息子と交わりたいと思う母親ヒロインの理性と本能の葛藤が、アイリスの魂を二分化させてしまうのですが、主人公くんが両者の本質は一緒であり、両方愛してやるぜと気概を見せるところが見せ場となっています。



  • 愛した女は自分の個性ではなく血族の幻影としての代替物としてみなしているのかもしれない
    • 「炉利BBA」モノでの醍醐味。かつて『ドラクリウス』という作品があって、そのメイドであるベルチェは主人公くんの父親に惚れていたものの捨てられ、主人公くんに母として姉として妹として恋人として仕えることになります。ここで扱われるテーマのひとつに父親の代替物としての自分という展開があるのです。この代替物問題をどう処理するのかが「炉利BBA」モノの見せ場となっているのです。では『よめがみ』のアイリスはどのような筋書となるのでしょうか?主人公くんは自分の転生以前の存在に対して葛藤するのですが、最終的にすべてを受け入れることを選択します。転生以前の自分、転生以前の自分が好きだった女神アイリス、自分を転生体として育ててくれた堕天アイリス、愛情に狂った闇堕ちアイリス、そして転生体として生きている自分。その全てを受け入れる覚悟を示すのです。この愛する女が愛している男まで背負って受け入れる姿はメゾンなんとかを思い浮かべてしまうのは私だけではないはず。



  • 主体的セカイ系エンド
    • この文脈では「セカイ系」という言葉を「愛するキミとボクがいるのなら世界がどうなっても構わない」という閉鎖的な二人の関係のみを重視した世界観として使用しています。多くの創作物で逃避行モノがあるように、セカイ系展開もまた紙芝居業界ではたくさんあります。最近ではセカイ系は社会と文化の否定であるため二人きりの関係性を世間に承認させようとする逆・セカイ系なるものまで存在しますし。ご都合主義的に禁忌が世間に受け入れられてしまうのよりも、内縁関係として積極的に共同体から出ていくビターエンドの方が、個人的にはグッときます。『さくらむすび』ではトゥルーエンドが逆・セカイ系であり、バッドエンドがセカイ系エンドなのですが、バッドの方が味があるのです。『よめがみ』のアイリス√も『さくらむすび』バッドエンドに似ており、主体的な意志で冥界行きを選び取ります。主人公くんを庇って一人だけで冥界堕ちしようとするアイリスに対し、二人で冥界堕ちするぜ☆と主人公くんが立ち上がる姿をお楽しみください。この冥界へ行くための階段を上るシーンが印象的であり、『さくらむすび』の川を渡る描写とダブって見えたのでした。ED後には冥界を平定した主人公くんとアイリスがネオ冥界を創出している姿が見られます。