よめがみ My Sweet Goddess!「4周目 秤真理√」の感想・レビュー

汚職容疑で父が自殺したため母が新興宗教に走ったが故に自らは正しくあらんとする願い少女の話。
新興宗教は『Moon.』や『素晴らしき日々』が有名ですが、『よめがみ』はさほど深刻ではない。
前半は目的と手段が挿げ替えられ正しくあること事体が目的と化したアルミホイル系女子の救済。
後半は新興宗教団体にカチコミを仕掛けて汚職議員を捕まえて真相をあばくことに主眼が置かれる。
新興宗教よりも「アルミホイル系女子救済」の方がシナリオのウリだと思われる。

アルミホイル系女子とは何か?

  • 先行研究:アルミホイル系女子に該当すると思われるキャラクター類型
    • 『よめがみ』の秤真理に類似したヒロインとして『大図書館の羊飼い』という作品における黒髪委員長系女子が挙げられます。彼女もまた目的と手段をはきちがえてしまい「規則正しく模範的となること」事体が目的と化してしまっているのです。そのため大図書館黒髪委員長系女子は、「身を粉にして働きヘトヘトになることで頑張っている自分を確認する」という歪んだ行為でしか安住が得られないのです。その背景には両親の過度な期待がありました。地方社会で有能とチヤホヤされていましたが中央に出てきたら自分程度の能力の人間はゴロゴロいるという現実。どんなに頑張っても従来ほどの成績を得ることができるわけでもなく、それでも両親の期待が伸し掛かり、がんじがらめになってしまっているのです。
  • 秤真理というキャラクター表現とシナリオの内容
    • 一方で秤真理はどのようなキャラクター表現なのでしょうか。「規則正しく模範的である」ことが目的化してしまっているという構造は大図書館と同様です。真理の場合は、父親が汚職容疑で逮捕された後に自殺し、母親が新興宗教に走るという現実があったのです。人間というものは自分よりも立場が低いものを創出し、その者を見下すことで優越感に浸るという側面を誰しも持っています。それゆえ、真理は犯罪者の娘としてレッテルを張られ侮蔑の言葉を吐かれていたのです。これに対して真理は彼女らとの融和を目指すのではなく、高潔な存在として正しくあらんとしたため、永遠のすれ違いが生じてしまったのです。このようなクラスにおける秤真理の微妙な扱いを何とかするのが主人公くんの活躍であり、自らが罪をかぶる形で真理を救済します。この後は結構ご都合主義的に真理の立場が改善されます。罪をかぶった主人公くんがどうこうされるわけでもありません。ただ真理が主人公くんのおかげで勇気を得て、陰湿な噂話をするグループに文句があるならかかってこいと正面切って対峙できるようになった描写は結構良かったです。
  • アルミホイル系女子とは何か?に対する答え
    • 上記の大図書館やよめがみのキャラクター表現の事例から帰納すると、「アルミホイル系女子」とは「目的と手段をはきちがえてしまい、手段が自己目的化してしまったがゆえに、から回っているこじらせ系女子」を指す、と推測できるのではないでしょうか?あくまでも作品をやっての雑感です。サンプルが足りなすぎていかんともしがたいですが。