2017年度採択高校教科書(公民編) 採択数・占有率

参考文献『内外教育』(時事通信社、2017年01月27日)
http://www.jiji.com/service/senmon/educate/backnumber_doc/e170127.html

  • 「公民」の選択で「現代社会」が多い理由とは?
    • 『内外教育』では2017年度の「公民」の特徴として「現代社会」の採択数の比率が増加したことを指摘している。「公民」は選択必修であり、「現代社会」2単位もしくは「倫理」と「政経」(各2単位計4単位)のどちらかとなっている。「現代社会」は2単位で済むが、「倫理」と「政経」は4単位履修しなければならないので負担が重く、これまでも「現代社会」を取るケースが多かった。しかし、『内外教育』は「現代社会」の比率は2011年から前年度比減となり、それ以後も減少傾向が続いていたことを紹介している。そして2015年度から増加に転じ、16年度は横ばいであったが、17年度は前年度比よりも0.8ポイント増えて、59.1%となったことを指摘し、ここから「現代社会」のみの必履修が増えたのではないかと分析している。2011年から「現代社会」が減少傾向にあったのは、センター試験で倫理政経なるものが出現したからだと思うのだが、なぜ2015年度から現代社会が増え始めたのかは分からない。新学習指導要領の「公共」を意識したのであろうか?『内外教育』でもスルーされている。

現代社

出版社別では、2種類発行の第一学習者、同じく2種類発行の実教出版、そして1種類発行の東京書籍が上位を占めており、3つの出版社だけで78%となっている。その中でも1種類発行の東京書籍による『現代社会』だけで4分の1を超えている。『内外教育』はこの東京書籍の『現代社会』について「確かな学力」育成重視の構成、知識の習得・活用・探究、言語活動といった特徴を挙げている。また『内外教育』は採択数2位の実教出版の『最新現代社会 新訂版』をスルーし、採択数3位の第一学習社の『高等学校 改訂版 新現代社会』に注目している。この教科書の特徴としては、現代社会の諸問題を考察する基盤として「幸福・正義・公正」を置くこと、時事的な題材、自発的な問題意識、法教育・金融教育・主権者教育・領土問題などについて工夫がみられることを指摘している。

倫理

公民科の中で一番教科書採択数が少ないのが倫理であり、公民科全教科書数1863799冊のうち「倫理」はそのうちの280519冊であり、約15%にとどまる。「倫理」の教科書は占有率20%前後に東書・実教・第一・清水がひしめいている。『内外教育』がこの中で着目しているのは採択数2位の実教出版『高校倫理』であり、良識ある公民、自己形成、人間としての在り方生き方を重視している点を指摘し、絵画や写真などの視覚に訴える教材が配置されていることを特徴として挙げている。

政経

「政治・経済」では東京書籍の『政治・経済』が26.7%で4分の1を占める。東京書籍は「現代社会」、「倫理」、「政治・経済」の公民科3科目で全てトップを独占していることになる。『内外教育』もこの教科書を取り上げ、各章冒頭における学習課題と各節末尾のまとめの設置、「判例」の提示、経済概念の特設コーナーでの説明、巻末における憲法などの参考資料の掲載などを特徴として挙げている。また『内外教育』は採択数で9冊中8位の第一出版社の『高等学校 新政治・経済』に注目し、内容精選、時事問題の教材化、広い視野と公正かつ客観的な見方や考え方の育成に関する工夫を紹介している。