『詳説世界史』を中心に世界史Bの教科書の採択数・占有率を31年分、通時的に分析した。
『詳説世界史』の占有率は最大で55.7%(2006年度)である。
教科書会社と教科書の種類が淘汰され、世界史Bの教科書全体合計数はピークの1996年に比べて半減している。
その中で生き残った結果、『詳説世界史』が高いシェア率を誇るようになったことが分かる。
A・B分化以前(〜1993年)の『詳説世界史』の占有率が3割しかないというのも驚きである。
- 『詳説世界史』の占有率は最大で55.7%(2006年度)
- 山川出版社の『詳説世界史』の占有率は、最大でも2006年度の55.7%だということが判明した。(※ただし学習指導要領の移行期や現行版と改訂版で二種類ある時の分析に注意を要する)。興味深いのは、出版社数や教科書の種類が淘汰されてきていることだ。A科目とB科目に分れた1994年度の世界史Bは7社9種類、1998年には8社20種類を数えたが、2018年度には4社7種類となっている。今の所、各社で差異化(安定詳述の『詳説世界史』、社会経済史の東京書籍、グロヒス阪大史学の帝国書院)できているが、出版業界の不況及び少子化の中で、果たしてどこまで生き残れるだろうか。世界史Bの全体合計冊数及び『詳説世界史』の冊数の最大はともに1996年であるが、2018年度現在全体合計冊数はピーク時の約半分、『詳説世界史』はピーク時と比べ約6割となっている。教科書の電子書籍への移行なども含めて、これから着目されるところであろう。
- またA、B科目に分れる以前の『詳説世界史』の占有率が約3割以下というのも注目すべきポイントであろう。多様性溢れる時代だったのである。世界史Bの教科書冊数の減少は、1994年度の高1から世界史が必修になったのはいいが、履修を満たすためだけに世界史Aに走る高校が増えたことが背景にある。
- 2022年に向けて 教科書に求められるもの
- 2022年4月から実施される歴史総合や世界史探究(→平成30年版の『学習指導要領解説 地理歴史編』はコチラ(pdf))の教科書にも注目が集まる。コンピテンシーベース、アクティブラーニング、カリキュラムマネジメントの3本立てが提示されたなかで、どのような教科書が作られるのだろうか。出版社の営業が見本を持ってくるのが楽しみである。
- 特に、探究科目は(世界史探究・日本史探究)は、3単位科目となったにもかかわらず学習指導要領では分量が減らず、古代から現代までの通史を扱いつつさらに主題学習も行うので、どのような教科書になるかで日本の教育が変わるといっても過言ではない。これで、もし従来通りの教科書ならば、教員が新たな授業に対応するために教材研究で死ぬことになる。(もしくはお題目を唱えるだけで授業は何一つ変わらないこととなる)。学習指導要領・教科書検定・出版社・叙述を担当する大学教授・大学受験の試験問題・授業実践をする教諭・参加型の授業で教師と共に授業を構成する生徒の育成、などなど様々な課題が教科書には待ち受けている。
2009(平成21)年版学習指導要領対応教科書→2013(平成25)年度高1〜2022(平成34年)年度高2まで
- 2017年度使用『世界史B』採択数・占有率 (『内外教育』2017年1月20日)