2017年度採択高校教科書(地理歴史編) 採択数・占有率

参考文献『内外教育』(時事通信社、2017年01月20日)
http://www.jiji.com/service/senmon/educate/backnumber_doc/e170120.html

文部科学省は高校教科書の採択状況をまとめているが、2017年度のデータも発表された。世界史をはじめ、地理歴史の教科書はどのように変化したのか、2017年度ものを分析していく。

世界史と日本史の教科書採択の特徴は、山川出版が改訂版と現行版の二種類を出してきていることである(※2017年2月14日に小中学校で新学習指導要領案が出たが高校はまだ出ていない)。ちなみに『内外教育』(時事通信社)では、この改訂版の教科書は「4単位を前提に改訂」したものであると紹介している。山川のwebサイトの教科書紹介をざっと見た限りでは「4単位を前提」との記述は残念ながら見当たらなかった(注意を凝らして探せばあるのかもしれない)が、新学習指導要領では「内容」よりも「学び方」や授業を通して身に付ける「能力」を重視する方針なので、その対応なのかもしれない。

AB比率は、世界史A67.8%、日本史A44.8%、地理A59.4%と世界史と地理でA科目履修者が多いのも特徴である。この状況から見るに、ほぼ文系受験生は日本史を受験科目にするであろうことがうかがわれる。【世界史必修】+【日本史or地理の選択必修】なので、世界史Aで必修を満たし、文系は日本史B、国立理系は地理B、私立理系は地理Aという組み合わせが現実的なのだろう。世界史に関して言えば、高校生の3割程度しか世界史Bをやらないことが分かる。

世界史

世界史Aでは上位を非山川が独占。特に帝国書院の『明解 世界史A』が約4分の1を占めている。ただし、前述の通り山川が改訂版と現行版の2種類を出してきているので5種類発行となり、それを全て足すと24.7%で2位につけるが、それでも帝国書院に及ばない。『内外教育』の分析は、帝国の『明解 世界史A』が「…これからの社会を生きていく高校生に、「新しい社会を生み出す創造力」を身につけ、主体的に社会の形成に参画する人間になってほしいと考えて編集したとしている…」点を指摘している。また「おもしろい・わかりやすい・ためになる」教科書を目指したことにも注目している。

世界史Bではさすがに『詳説世界史』が強い。改訂版と現行版を合わせると52.3%を超える。社会経済史に力を入れる東京書籍が追う。グローバルヒストリーに力を入れ川北・桃木を擁する帝国書院の『新詳 世界史B』は山川の『高校世界史』よりも採択数が少ない。

日本史

日本史Aでは第一の『高等学校 改訂版 日本史A』27.6%、東書の『日本史A 現代からの歴史』23.3%とトップ2で半分以上を占めている。山川は改訂版・現行版のダブルで『日本史A』を出し計3種類あるためこれらを足せば28.7%となる。『内外教育』の分析では第一の『高等学校 改訂版 日本史A』の特徴として、構成が見開きであること・生徒に歴史が身近なものであると捉えさせること・歴史の当事者意識を持たせることを挙げている。

日本史Bは山川祭り。『詳説日本史』が改訂版49.4%、現行版が14.2%と合計63.6%。それに食い込むのが2位につける東京書籍の『新選日本史B』14.3%。『内外教育』の分析はやたらと『詳説日本史 改訂版』が「4単位での履修を前提」であることをプッシュしている。前述したが、新しい学習指導要領では内容よりも歴史的諸能力の獲得や学習活動が重視される方針が打ち出されているので、それに対応するためにも4単位で終わることをウリにしているのであろう。

地理

地理といえば帝国書院。「地理A」では『高等学校 新地理A』48.0%、『高校生の地理A』8.7%と56.7%を占める。『内外教育』では帝国の『高等学校 新地理A』として、「新しい社会を生み出す創造力」や課題解決能力、主体的態度、思考力・表現力・判断力の育成が編集方針とされていることを指摘している。また教科書の使い方、見開き構成、自学自習、自然災害と防災などに工夫が見られると述べている。

「地理B」は3社各1種類ずつの3種類。帝国72.2%で断トツである。『内外教育』では帝国の『新詳地理B』に対し、系統地理、地誌、地図と地理的技能、現代社会の諸課題に工夫が見られ、自学自習に適した教科書であると指摘している。さらに二宮の『新編 詳解地理B 改訂版』にも言及しており、見開き大判誌面であることや資料性の高い誌面構成であることを述べている。

採択数順 各教科書リンク


地図は帝国書院発行のものを全て合わせると82.0%。『内外教育』では帝国の『新詳高等地図』がISやウクライナ問題に対応していることを特徴として紹介し、中東ではシリア-イラク-メッカまで、ウクライナは東欧-カフカス地方までを一望できる拡大図を掲載したことを挙げている
。帝国だけでなく二宮の『基本地図帳 改訂版』にもコメントしており、A4の「大きな判型で大きく見せる」一般図であることを特徴として挙げている。