雑録

しゅがてん!「聖代橋氷織シナリオ」の感想・レビュー

自罰少女救済シリーズ。その要因の題材としてフロイト防衛機制「退行」が用いられている。
自分を可愛がってくれていた親戚のオバチャンが妊娠すると胎児ばかりかまうようになった。
それゆえ幼少期の氷織は、胎児の排除を願ってしまったのが、偶然にも流産してしまう。
氷織は罪の意識に苛まされ自罰を求めるようになっていった。
そんな氷織がトラウマを克服するのが、オバチャンの二度目の妊娠→そして出産。
生命誕生の神秘も毎日赤子は生まれるのであり、奇跡はありふれているんだよエンドとなる。

聖代橋氷織のキャラクター表現とフラグ生成過程


  • 奇跡を否定することに安堵する少女
    • 聖代橋氷織はクール系ポンコツ。真面目で一生懸命努力しているのに、神経質で不器用なのでお菓子作りには貢献できないジレンマを抱えています。そして甘いものを食べると酔っぱらってしまうという悪癖がありました。さらに勝手に罪の意識を抱え自罰を求めているというトラウマまで持っています。そんな氷織を救済していくのが主人公くんの役目。まず初めに氷織の過去や人物像を知っていくことになります。氷織で一番重要なのは「奇跡を否定することに安堵する」ということです。物語の舞台となる街にはダイヤモンドダストの夜には妖精さんが奇跡を起こすという伝承がありました。しかしそのダイヤモンドダストは聖代橋家が水蒸気などを利用して人為的に起こしていたものだったのです。氷織はこの人為的な作業を行うことで「奇跡」なんてないことを確認し、精神の平穏を保っていました。しかしそれは何故なのでしょう。
    • 氷織は幼少期、親戚のオバチャンにべったりでした。親戚のオバチャンも氷織を可愛がってくれていました。しかし、オバチャンが妊娠すると、胎児の方に関心がいってしまいます。はいはい、フロイト防衛機制「退行」が入りますよっと。しかし物語にはもうひとひねりあり、素直でない不器用な氷織は自分の不満を表現できず、胎児の排除を願ってしまったのです。そして運の悪いことにオバチャンは流産をしてしまいます。氷織は罪の意識に苛まされることになります。もし奇跡や願い事が叶うというのなら、氷織が願ったから流産してしまったのだと。以上により、「奇跡」を人為的に行い、奇跡なんてないと確証することで、氷織は精神の安定を図れていたのです。そんな歪んだ氷織に対し、主人公くんは世界には明確な因果関係など存在せず、もっとあやふやなものなんだよと受け入れて解放してあげます。そして主人公くんのライバルも氷織に対し、自分が主人公くんにどうして欲しいかをきちんと言うことが大事だとアドバイスし、フラグが成立します。


  • 出産という生命誕生の神秘は毎日、日常的に起こっているんだ。
    • 氷織の親戚のオバチャンは一度目の流産の後、なかなか子供に恵まれせんでしたが、やっと再び懐妊します。成長していた氷織は、もう退行などすることなく、寧ろ生まれてくる子供のために出産育児系の雑誌を読み込み、楽しみに待っていました。この二度目の妊娠の危機を乗り越えることで、氷織がトラウマを払拭することになります。なんとオバチャンは逆子であり、しかも破水したのは吹雪の日であり、洋菓子店フォルクロールでの自宅出産を強いられることになるのです。妊娠・出産という題材では『CLANNAD』などが印象深い作品として挙げられますが、本作では主人公くんが帝王切開に挑むという結構細かい所まで表現されています(無論、医学の知識もない主人公くんが執刀に成功するというご都合主義展開なのですが)。苦難を経て、見事赤子を取り出し歓喜する氷織たち。まさに「奇跡」を体感するのです。そしてこの「奇跡」をどう解釈するかというお話へ。主人公くんのライバルである妖精さんグループは奇跡を「特別なもの」と見なしていますが、主人公くんは「どこにでもありうるもの」と述べます。このことの象徴となるのが、主人公くんたちが出産に安堵していると、その次の日もまた別の家族の妊婦が出産を迎えているということ。生命の誕生という神秘も世界にはありふれているんだ。主人公くんが氷織の前に現れたのも、特別なことなんじゃなく、そう願われたからあるんだエンドを迎えます。