月がきれい 第6話「走れメロス」の感想・レビュー

それぞれ結果を残せなかった少年少女が傷を舐め合い明日への活力とするはなし。
分野は違えどもお互いが高め合う感が良かったが、ヒロインだけ上手くいったらすぐ崩壊しそう。
そのせいかエンディングで流れてるLINEのやり取りが全編通して彼氏側のヘタレっぷりがすごい。
女性側は彼氏を上手いように転がしてるけどカネとか時間とか吸い取った挙句、別のヒトと結婚しそう。
あと地域伝統芸能のお囃子が全然ストーリーに絡んでこず、なんか無理やり挿入してる感がある。
主人公くんにとって小説創作がメインでお囃子が二の次。もっとお囃子をメインにして欲しかったのう。

主人公くんとヒロインの挫折経験とお互いの高め合い


  • 主人公くんサイド
    • 純文学とラノベの問題というよりも「人材の使い潰し」という側面の方が強い。
      • 純文学では飯は食えないといいますが、そもそも純文学って飯を食うためにやるものなのでしょうか?というおはなしかと最初は思っていました。主人公くんは純文分野で作品応募を行い、出版社との面談にまでこぎつけますが、蓋を開けたら純文の才能を否定されラノベをやるように促されるのです。純文は食えない、時間を浪費するな云々言われ、純文を否定された主人公くんはショック!!・・・という流れななのですが、しかしここで表現されるのはラノベと文学の優劣の問題ではなく、人材の使い潰しという問題ではないでしょうか。『俺たちに翼はない』の玉泉日和子√(※参考http://d.hatena.ne.jp/mmm000mmm/20090209/p1)でもテーマになってましたね。若い人材を大量に乱獲して数うちゃあたる方式で作品を作らせる同工異曲の粗製乱造商法。その対象となりかけてしまう主人公くん。
    • ママン問題
      • 世間体とか気にして勝ち組的なレールを走れない息子を頭ごなしに否定する典型的な母親像。これまた『true tears』を彷彿とせずにはいられません。良い成績とって良い学校入って良い就職先見つけて良い出世して良い結婚して良い子孫繁栄することを要求されているのだ!勉強しろ!と言っても子供は勉強するわけがありません。息子の成績が悪いのを気にするんだったら、「模試の答案を持ってきなさい、ちょっと見てやろう」くらいやってやらないとです。


  • ヒロインサイド
    • 陸上部の友達に、「自分の彼氏を好きになった」とラインされてしまい動揺するの巻き。大会前に三角関係で悩むことになり記録を残せず予選で敗退してしまいます。で、上記のように主人公くんも成果を残せなかったので傷心な心をお互いに慰め合います。ここでスポーツ少女らしい片鱗が残るのは、もっと真摯に前向きな努力をしようと決意すること。主人公くんもこれにインスパイアされて自己研鑽を重ねていきます。お互いを高め合う的な感じがしてとてもイイですね。しかしこれ、ヒロインにとっては目標に向かって一緒に頑張るフレンズが欲しいだけという危うさを孕んでいる気がします。ヒロインにはいつでもプラスになれるのですよ。主人公くんだけ成功しても私も頑張ろうですし、お互いに成功すればやったねだし、お互いに失敗しても慰め合えます。しかしヒロインだけ成功すると主人公くんにとって苦痛でしかなく、それがきっとエンディングにおけるラインのやり取りとなっているのでしょう。彼女だけ先に行ってしまい苦しむ男をヒロインが(無自覚的に?)掌の上で転がしてる感がすごい。男の方が捨てられてしまいそう。
    • 三角関係についてはライバルが完全に当て馬。ドロドロとした関係にはならず、そもそも当て馬ヒロインがヒトのものを羨んで欲しがる傾向なだけであり、ヒロインが付き合ってる主人公くんをつまみ食いしたかっただけな雰囲気があり、そんなに深刻にはならなそう。