面影レイルバック「共通√」の感想・レビュー

大手ゼネコンによる限界集落の開発問題をめぐるはなし。『泥亀の月』プレイ前提。
かつて金採掘を強引に進めたため地元住民との闘争が起こった土地の再開発に挑む。
今回は土壌成分に目をつけ村独自に伝わる薬草の研究・量産・販売を行い、ただの土を錬金する。
ゼネコン内部の敵対勢力が妨害してくるが、その都度、主人公くんが解決に取り組んでいく。
主人公くんはただの契約ではなくface to faceの地域密着型として住民の信頼を勝ち取るのである。
共通√のクライマックスは土壌強奪事件。ゼネコン内部が起こした横取りを住民と共に阻止する。

権力闘争渦巻く大手ゼネコンにおいて主人公くん一派が限界集落の再開発で実績を示そうとする。


  • 開発に失敗した土地で再チャレンジ
    • 冒頭で大手ゼネコン吉岡建設の権力闘争が紹介され、主人公くんが限界集落の再開発を目指して櫓名の地に降り立つところから物語はスタートします。櫓名の開発は2回目であり、前回の失敗で地域住民と相当険悪になったらしく、吉岡建設は全く歓迎されていません。しかし集落の長である少女が主人公くんに一目惚れしてしまったため、主人公くんを婿として取り込み、吉岡建設には出て行ってもらおうという方針を決める所までが体験版までの内容となっています。
    • 一体どうやって主人公くんたちは限界集落を再開発するのだろうと、結構楽しみに製品版共通√を開始。かつて過去に開発した際には金の採掘を無理やりに進めた結果、農作業に必要な水源付近に手を出すことになり、村の代表的な農産物である大根栽培に打撃を与えることが危惧されたため、激しい住民運動が展開されたのだとか。それを踏まえた上で主人公くんたちは説明会を開き住民との相互理解に努めます。勿論、1回で納得してくれるわけもなく、主人公くんは粘り強く住民との対話に取り組んでいくのです。
    • 櫓名と吉岡の歩み寄りの契機となるのがルイディアーナさん事件。精神崩壊してしまったルイディアーナさんを癒すことができるのは主人公くんだけであり、足繁く通う主人公くんを見て男を囲っていると風評被害がでてしまったため、主人公くんはルイディアーナさんといろはを守るためにも、吉岡家の養子に入りました。ある時ルイディアーナさんが発狂しているところを村民に見られてしまったため、主人公くんの事情を村長ヒロインに語ったところ、櫓名なら主人公くんを守ることができると息巻くことになり、土地開発に乗り気になっていきます。
    • 主人公くんたちが考える産業開発は土壌で錬金すること。櫓名には古来より伝わる薬草があり、それは村の土壌から発生する固有のもの。故に櫓名の土壌成分を分析・研究し、薬草の量産を目指します。薬草栽培が軌道に乗れば、櫓名の土壌は「ただの土くれ」ではなく付加価値が生じ、重要な特産物となるというのです。勿論、作中では「じゃあ櫓名が薬草を特産品にすればいいのでは?」とセルフツッコミが入るのですが、地元住民では量産することは難しく主力商品とするのは無理であるとの反駁がなされています。



  • ゼネコン内部の妨害を契機とする主人公くん一派と村人たちとの結合
    • 主人公くんをめぐる吉岡建設VS限界集落櫓名を通して物語は進んでいきます。日常描写を挟みつつ精神崩壊してしまったルイディアーナさんやかつての主人公くんの子分が参入してくるので、『泥亀の月』をやっていると感慨深いものがありますね。ちなみにルイディアーナさんは『泥亀の月』の後、樹理のイモウト:なのはを出産し途上国の医療に従事することになるのですが、そこで風土病に感染し、失語症と記憶喪失になってしまったのだとか。そして主人公くんをその父;泥マサと誤認し、泥マサを治療する時だけ正常に戻るという背景が明らかにされます。前半部分では主人公くんはほぼ空気状態でして、父親泥マサの強烈な個性に比べるとインパクトに欠けています。そんな主人公くんの活躍が始まるのが、ゼネコン内部が妨害工作を仕掛けてくるところから。
    • 主な妨害工作は2度行われます。1度目は土壌汚染問題。これは軽度なものであり、この事件をきっかけに、主人公くんがゼネコンと村人の橋渡しをして地域密着を促す契機となります。村人のモノローグで主人公くんが農作業や村内行事に参加してきたことがサラッと流されるのですが、こここそ描写して欲しかったなぁと思うこと限りなし。村長ヒロインのいろはは、吉岡建設の樹理に心を尽くし、櫓名を出ていかざるを得なくなってしまった人たちを呼び戻したいので知恵を貸してほしいとの依頼をします。
    • 2度目の妨害工作は大掛かりなもので、夏祭りに乗じて行われます。なんと内部勢力が内密に土壌を大量に運び出してしまおうとしていたのです。大量の雇われ下請け作業員たちを止められない上に、背信行為だと怒り狂う村人たち。一触即発の危機。そこへ主人公くんが駆け付け村人を説得し、協力関係を構築します。こうして主人公くん一派と村人たちは共同で手を組み、ゼネコン妨害派と戦い陰謀を阻止することに成功したのでした。ルイディアーナさんも危機に際して覚醒し医療に従事したりと大活躍。こうして妨害工作を打ち払った後に個別√に分岐することになります。